G7サミット:人道的な移民政策と国際保健の重点課題に取り組みを
PR TIMES / 2017年5月26日 19時43分
MSF、各国首脳へ訴え
イタリアで開かれている先進7ヵ国首脳会議(G7サミット)に先立ち、国境なき医師団(MSF)は、日本を含むG7首脳に対し書簡を送り、人道的な移民政策実現のため、大胆な方針を打ち出すよう要請した。また、国際保健分野における課題として、高すぎる薬価や、薬剤耐性感染症への対策など患者のニーズに即した研究開発が不足している問題について、G7が取り組むよう呼びかけている。
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人道的な移民政策実現を
世界の難民や避難民の数が、第2次世界大戦以降最多となる中で、多くの政府が人びとを抑圧、勾留、押し戻すという、近視眼的な措置をとっている。こうした政策により人びとは苦しめられ、暴力にさらされ、必要な法的庇護や国際的な保護を受けられないでいる。
MSFインターナショナル会長のジョアンヌ・リューは、「シリアの紛争地やリビアの収容所から逃れてきた人、極度の暴力にさらされる中米の難民など、MSFはさまざまな活動現場で、非人道的な移民政策によって苦しむ人びとを直接目にしてきました」と述べ、「地中海での死者の増加や、国境に作られた壁、過酷な環境の難民受付・収容センター、そうした場所に拘束された挙げ句の強制送還。G7は目の前で起きているこういったことすべてに人道的対応の失敗を認識すべきです」と訴える。
移民・難民を対象とする人道的な政策実施に向けた具体的措置として挙げられるのは、合法的な移動経路の確保、安全で人間的な受付センターの設置、危機下にある人の早期発見システムの確立、欧州への到着を妨げる目的ではない救命専用の地中海海難救助体制の確立などだ。
またMSFは、移民管理を第3国などに委託する取り決めが増加していることについても懸念している。難民と保護の概念そのものが危険にさらされるためだ。例えば、EU・トルコの難民送還合意や、リビア沿岸警備隊による海上での移民拿捕(だほ)を支援するという内容のイタリア・リビア間の合意が挙げられる。後者の場合、難民・移民は保護を受けることなく、リビアに押し戻される。そこにあるのは暴力、拷問、非人間的な対応が待ち受ける悪名高き収容所であるにもかかわらずだ。
5月23日、地中海上で複数のNGOが移民の救助活動を行っていた最中、リビア沿岸警備隊が、空に向けて発砲。人びとの生命を危険にさらす形で、救助を求めたボートの乗客を威嚇した。MSFイタリア会長ロリ・ド・フィリピは、「この件ひとつとってもリビアの沿岸警備隊が解決策にはなり得ないという事がわかります。移民の入国地点の管理をリビアに担わせようという欧州の戦略は、人びとにとって拷問、人権侵害、死の宣告に等しいものです」と指摘する。
医薬品アクセスと抗菌薬耐性(AMR)
高い薬価が世界の国々に影響を及ぼしている。例えば現在、G7各国共通の課題として、C型肝炎新薬の費用の負担問題がある。そして、現在の医療研究開発体制は重要な公衆衛生ニーズに対応できていない。具体的には、薬剤耐性感染症向けの新薬と診断器具開発などであり、これらは手に届く価格でなくてはならない。薬剤耐性感染症はますます深刻化する健康問題であり、薬剤耐性結核(DR-TB)は2015年に世界で薬剤耐性感染症に起因した全死者数の3分の1を占めている。
G7は医療研究開発に新たなアプローチをとる必要がある。そして、最終製品に高価格を転嫁せざるを得ない研究には終止符を打ち、投資の成果を公衆衛生に還元し、製品を購入しやすくし、研究で得たデータと知見を共有し、人びとの健康ニーズを最優先にすることに努めなければならない。G7は早急に措置を講じ、世界中にまん延する医薬品の高価格化をくい止めなければならない。
MSFの必須医薬品キャンペーンのエグゼクティブ・ディレクター、エルス・トヒル医師は、「MSFの医師はDR-TBなどの病気を治すために有効な、治療薬がない事態に日々直面しています」と話し、「医療イノベーションは急務ですが、製品は購入しやすく、使いやすいものであることが求められています。現行の製薬研究は特許による独占と高価格を土台にしており、薬剤耐性感染症、C型肝炎など世界規模で起こる病気の流行やエボラのような流行性疾患発生のほか、非感染性疾患への対応に効果を挙げられず、役に立っていないのです」と述べている。
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