風雅と無常―修羅能の世界を堪能する全6回【横浜能楽堂】
PR TIMES / 2018年9月18日 12時1分
能には、「修羅能(二番目物)」と呼ばれる曲が数多くあります。「修羅能」は、源平の武将たちを主人公として合戦の有様を描きながら、無常観など仏教思想を背景に人間の苦しみや悲しみを描き出していますが、一方で武将や公達の風雅な一面を感じさせる曲も多く、その対比によって作品のもつ悲劇性が一段と際立ちます。
今回の公演では、武将たちの風雅な一面が感じられる「修羅能」の名曲を9月22日から全6回のシリーズで開催。合戦の場面を描いた修羅能の「風雅」な側面に焦点を当てて、各回それぞれの能の演目にまつわる雅楽器の演奏や、和歌の披講、観音懺法の法要などを上演。能と併せて、当時の武将たちのもつ風雅さと、闘いの果ての無常さを味わっていただける内容となっています。出演者は、人間国宝の梅若実・野村万作、観世銕之丞家当主・観世銕之丞ら現代を代表する顔ぶれ。
また、公演に併せて特別講座「修羅能の世界を語り合う」を開催するほか、「修羅」をテーマに、今最も注目される画家・山口晃のインスタレーションによる特別展を開催します。
横浜能楽堂企画公演「風雅と無常―修羅能の世界」
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<第1回> 「青葉の笛」
神楽 神楽笛「庭火」安齋 省吾
管絃 盤渉調「青海波」笙:豊 英秋ほか
能「敦盛 二段之舞 脇之語」(観世流)観世 喜正
平敦盛は、『平家物語』の中で笛の名手であり美少年として語られる人物です。敦盛は霊の姿で現れ、平家一門の栄枯盛衰を語り、平家最後の宴を懐かしむ舞を舞います。合戦の有様が表現されますが、修羅の苦しみの中にも風雅で可憐な趣が感じられる曲となっています。雅楽の神楽笛の独奏なども行われます。
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<第2回>「修羅能と狂言」
語「那須」(大蔵流)山本 則俊
狂言「薩摩守」(大蔵流)茂山七五三
狂言「通円」(和泉流)野村 万作
修羅能の主人公である武将たちは、狂言にも登場します。屋島の合戦で那須与一が扇の的を射落としたことを仕方話(身振りを交えた語り方)で語る語「那須」、「ただ乗り」と「薩摩守忠度」をかけた秀句(だじゃれ)が面白い狂言「薩摩守」、能「頼政」の宇治橋合戦の詞章を模してつくられた狂言「通円」。狂言においても武将たちは様々な描かれ方をされています。
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<第3回>「名器・青山」
琵琶 秘曲「啄木」豊 靖秋
管絃 双調「陵王」笙 :豊 英秋ほか
能「経正 古式」(金剛流)金剛 龍謹
平経正は、平家一門を統べた平清盛の甥にあたる人物。才気豊かな貴公子で、琵琶の名手として名を馳せました。今回の公演では、本物の琵琶が登場する「古式」で演じられます。平安時代の貴族社会で深く浸透していた楽琵琶の秘曲などの演奏も併せて行われます。
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<第4回>「生田の梅」
トーク「自作を語る」山口 晃 聞き手:竹平 晃子
能「箙」(観世流)梅若 紀彰
「勝修羅三番」の一つ。梶原源太景季は、源頼朝に重用された梶原平三景時の嫡男で、若武者ながら多くの武功を上げました。一の谷の合戦で、色の異なる花をつけた梅の枝を箙に挿したという挿話が物語のもとになっていて、日本人ならではの花に寄せる想いを主題としています。通常の演出では登場しない梅の作り物(大道具)を、画家の山口晃が特別に制作します。
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<第5回>「無常」
能「朝長」(観世流)梅若 実 /相国寺観音懺法会入り
「三修羅」の一つ。朝長に縁のある旅僧が、朝長の弔いのために美濃の青墓を訪れ、敗戦の果てに自害した朝長への追慕哀傷を語ります。僧が観音懺法の法要を勤めると、朝長の霊が現れ自害の有様、修羅道の苦しみ、弔いへの感謝を物語ります。仏教的無常観が濃厚な「朝長」を、今回初めての試みとして、相国寺の僧侶たちによる観音懺法会の法要を特別に取り入れて上演します。
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<第6回>「和歌の徳」
披講:堤 公長(宮中披講会会長)ほか
能「忠度」(観世流)観世銕之丞
平忠度は、武勇の誉れ高い武将でありながら優れた歌人としても知られる人物。能「忠度」は、忠度の歌道への執心を、『源氏物語』でも有名な名所須磨の桜を印象的に取り込んで表現した、美しくも儚い修羅能です。旧華族で組織され、宮中の歌会始にも奉仕する宮中披講会が、修羅能に縁の公達が詠んだ和歌を詠み上げます。
<特別講座>「修羅能の世界を語り合う」
講演「修羅能と歌」 馬場あき子(歌人)
鼎談「公達の精神文化」 山折 哲雄(宗教学者)、寺内 直子(雅楽研究)、仲 隆裕(庭園研究)
聞き手:葛西 聖司
歌人・馬場あき子による修羅能における和歌をテーマにした講演に続いて、修羅能の主人公である公達や武将の精神文化の形成に大きく関わる、宗教・雅楽・日本庭園を取り上げ、各専門家による多角的な視点で鼎談を行い、当時の日本人の思想や文化、生活様式等を紐解き、修羅能の世界を掘り下げていきます。
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