リビアにおける難民・移民の理不尽な勾留の廃止を要求
PR TIMES / 2017年9月6日 14時20分
国境なき医師団(MSF)は、リビア国内で難民、移民、庇護希望者が理不尽に勾留されている現状に懸念を表明、こうした勾留が続くことがないよう求めている。MSFが1年余り前から被収容者に医療を提供してきたトリポリ市内の収容センターの環境は劣悪で、人びとは非人道的な扱いを受けている。
[画像: https://prtimes.jp/i/4782/376/resize/d4782-376-756031-0.jpg ]
<法的な根拠も無く理不尽に拘留される人びと>
MSFは複数の医療チームで月に1000人余りの被収容者を治療。気道の感染症や急性水様性下痢、疥癬(かいせん)とシラミ、尿路感染症などの症例を診てきた。これらの病気の発生や悪化が収容センターの劣悪な環境が原因であることは明らかだ。センターの多くは危険なほど過密で、被収容者は手足を伸ばして横になれないほど狭い。自然光も換気もほとんど望めない。食糧も足らず、成人でも急性栄養失調に陥り、中には緊急入院の必要な患者もいる。
リビアには法の支配というものがなく、勾留の仕組みが危害と搾取の温床となっている。監視体制や規制の不備は甚だしく、拷問と不当な待遇を抑止するために設けられた最低限の安全策も守られていない。被収容者の正式な登録や収容記録もなされないため、収容センターに入れられてしまった人の消息を追う方法はない。1日ごとに異なるセンターや非公開の場所へ移される人もいれば、跡形なく姿を消す患者もいる。こうした条件により、患者の綿密な経過観察は困難であり、MSFが提供できる医療援助も極端に制限されている。
また、トリポリ市内で重武装した民兵同士が衝突すると、医療チームは収容センターにさえ近づけなくなってしまう。さらに、センターの運営が一晩のうちに変更され、収容中の患者と接触するために改めて交渉が必要になることもある。継続的な暴力と混乱でMSFが立ち入れないセンターも残っている。
<センターの環境改善にとどまらない根本的解決が急務>
MSFの医療顧問ジビレ・ザング医師は「被収容者は人としての尊厳をはく奪され、不当に扱われ、医療も受けられていません」と話し、「このような環境で拘束され、多くの苦痛に耐えている人びとを目のあたりにしながら、MSFができることは多くはありません」と嘆く。
事態の解決には援助資金の拡大だけでは不十分だ。問題の本質は収容センターの環境改善ではない。リビアの複雑な現状に目を向け、人びとを理不尽に勾留し危害と搾取を繰り返す仕組みの正当化と拡大を阻止しなくてはならない。
フォトレポート『Human Suffering: Inside Libya’s migrant detention centres』(英語)も併せてご覧ください。
https://msf.exposure.co/human-suffering
<リビアにおけるMSFの活動>
この1年、MSFはトリポリで勾留中の難民、移民、庇護希望者に救命医療と基礎医療を提供してきた。安全状況が整い、活動も安全と見なせることを条件に、医療チームが内務省管轄という名目の収容センター7ヵ所を週1回のペースで訪問している。2016年6月の活動開始以来、合計16ヵ所に赴いたが、継続的な暴力と混乱に阻まれ、いまだ立ち入れないセンターもある。
ミスラタ市では、4ヵ所のセンターで勾留中の難民・移民に医療を提供。医療チームが毎月、約100件の診療を行い、引き続き医学的支援の必要な被収容者10人余りを二次・三次医療施設に紹介している。先ごろ市内から南方の地域を対象に立ち上げた移動診療では、公式の収容センターに入れられていない移民・難民への医療・人道援助を目指す。
MSFは、内戦の再燃とそれに伴う経済的低迷のあおりを受けた保健医療システムを支援するため、2011年にリビアで活動に着手。薬と人員の不足にあえぐ公立保健施設を、寄付その他の手段で支援している。紛争に見舞われた人びとのニーズに応じて、ベンガジ市では小児科・産婦人科・精神保健分野のケアも行っている。
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