結核治療として大塚製薬「デラマニド」など新薬の利用拡大を要請
PR TIMES / 2017年10月13日 9時17分
2種の新しい抗結核薬「ベダキリン」(ヤンセンファーマ)と「デラマニド」(大塚製薬)が発売されてから4年以上が経過し、結核の治癒率は向上したにも関わらず、現在も多くの多剤耐性結核(MDR-TB)患者に届いていない――。国境なき医師団(MSF)は、メキシコ・グアダラハラで開催中の「第48回世界肺の健康会議」で、世界の結核関係者に対して懸念を表明した。
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必要な人のわずか5%にしか届いていない
ベダキリンとデラマニドは、約半世紀ぶりに開発された抗結核薬で、それぞれ2012年と2014年に販売承認を受けた。最も強い薬剤耐性菌に冒され、治癒率が極度に低い結核患者にとっては命綱と言えるが、MSFは2016年にこの薬の恩恵を受けられたはずの人のうち、実際に利用できた人はわずか5%に留まったと推定、新薬の普及が極度に悪いことを懸念している。2017年上半期、医療現場で2つの新薬による治療を受けられたのはわずか3943人で、前年同期比ではわずか1000人しか増えていない。
「デラマニドは私に生きるためのチャンスをくれました。あの錠剤が薬剤耐性結核(DR-TB)と闘っている多くの人に行き渡るよう願っています。こうしている今も、標準治療薬の副作用で多くの人が、吐いたり、聴覚を失ったり、学校や仕事をやめたりしているからです」。超多剤耐性結核(XDR-TB)感染後、南アフリカ・カエリチャにあるMSFのプロジェクトで、デラマニドによる治療を受けたシンセンバ・キュースさんは話す。
推定(※)によると、全世界合計でMDR-TB患者の30%はこの新薬の恩恵を受けられたはずだったとしている。だが、2017年7月時点でベダキリンを利用できたDR-TB患者は世界でわずか1万164人、デラマニドを利用できた患者は688人にとどまっている。
新薬を使わないのは、治療を待つ人びとへの裏切り
「5年前までは私たちにDR-TB治療の選択肢はなく、治る可能性が低いとわかっている治療薬を採用せざるを得ませんでした。しかし今、これら新薬を使わない理由が理解できません」。MSFの必須医薬品キャンペーンでHIVと結核医療アドバイザーを務めるアイザック・チクワナ医師は話す。「新薬によって生存率をはるかに高められるとわかっているのにそれを使わず、昔と同じ治療をつづけるという事は、受け入れ難いことです」
結核は世界で最も致命的な感染症として毎年180万人の命を奪っている。現在のDR-TBの標準治療は、2年間で1万5000錠近い薬の服用が必要で、その副作用は体に激しい負担がある。それにもかかわらず治癒率は2人に1人だ。2つの有望な新薬は、新しく大幅に改善されたDR-TB治療にとっての主軸となるだろうという期待感を伴って発売された。
チクワナ医師は、「新薬がこれほどわずかしか使われないというのは、有効な治療を受けるチャンスを目の前にした人びとに対する裏切りです。DR-TB患者の命を救うため、世界の結核関係者、政府、資金拠出機関は一丸となって、早急にこれら2つの有望な新薬の普及策をとるべきです」と訴える。
MSFは30年以上の結核治療の歴史をもつ。2016年、MSFは2万人以上の患者を治療、うち2700人はMDR-TB患者だった。2017年6月現在、MSFは各国保健省とパートナーシップを組んで、14ヵ国で1500人以上の患者を対象にベダキリンとデラマニドの両方かそのいずれかを含むDR-TB治療を開始させた。
※ この推定には世界保健機関(WHO)による、以下の基準を満たす人びとが含まれている。超多剤耐性結核(XDR-TB)患者と、他の治療薬による治療に耐えられないMDR-TB患者。Scale Up Treatment Action Team (STAT:結核治療拡大行動の意)が発表した、DR-TBに関する控えめな推定によると、これら2つの新薬を利用できたとみられるMDR-TB患者は全体の30%を占めている。MSFが活動地で得た経験では、第2選択薬を服用するXDR-TB患者の比率が高い場所では、この数字は70%に跳ね上がる。
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