ポーランド:国境地帯での移民・難民援助を当局が妨害――MSFは撤退余儀なく
PR TIMES / 2022年1月7日 17時45分
国境なき医師団(MSF)は、ベラルーシからポーランドに入国する移民・難民を援助する緊急対応チームをこのたび撤退させた。現地は森林に覆われた国境地帯で、氷点下で生き延びている人びとが医療・人道援助を切実に必要としている。同チームは3カ月前に援助活動を始めたが、制限地帯への立ち入りをポーランド当局が繰り返し妨害したため、活動は困難を極めていた。MSFは、援助団体の立ち入り制限を課す現行の政策によって、さらに多くの移民・難民が命を落とす事態を懸念。これらの政策は、国境で保護を求める人びとを意図的に危険な状況に追い込むものだと非難する。
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極寒の森に潜む人びと
MSFの緊急対応コーディネーターを務めるフラウケ・オシグは、「10月以降、MSFはポーランドの制限地帯と国境警備隊駐屯地への立ち入りを何度も要請してきましたが、聞き入れられませんでした。生き抜くために国境を越え、森に隠れて助けを必要としている人たちが今もいることは分かっています。そうした人びとに援助を届けたいのですが、ポーランドでは接触すらできませんでした」と落胆する。
2021年6月以降、何千人もの人びとがベラルーシからポーランド、リトアニア、ラトビアを通って欧州連合(EU)加盟国に渡ろうとしてきた。これに対し、ポーランドは国境に沿ってフェンスを建設し、軍を投入するとともに、国境地帯に非常事態を宣言。この地域は、援助団体やボランティアグループ、メディアを含めて立ち入りが制限され、厳重な管理体制が敷かれた。
この半年間、ポーランドの国境警備隊が、国際的な保護を要請する移民・難民の意向を無視し、その権利を侵害して、ベラルーシに強制送還する事例が多数発生している。人びとはこのような強制送還や警備隊員による暴力を恐れ、見つからないようにこの地域を通り抜けようと、食料、水、テント、防寒着もないまま極寒の森に身を潜めている。2021年には、少なくとも21人がこうしてポーランド入国を試みている間に命を落とした。
続く国境地帯での暴力行為
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ここ数カ月、EUへの越境を試みる人の数は減少したものの、移民や難民の集団は依然として存在している。12月18日、MSFはポーランドの市民社会団体「サラーム・ラボ」と共同で、制限地帯をなんとか抜けた5人のシリア人と1人のパレスチナ人の援助に当たった。本人たちは、何度もベラルーシに強制送還され、国境警備隊に暴力を振るわれたと話した。
国境沿いのあらゆる場所で、脅迫、暴行、所持品の盗難や破壊が起きているという。MSFは暴力を受けた人の話を多数耳にし、証言と一致するけがも目撃した。国家当局は国境警備隊によって襲撃や暴力を受けた人びとの存在を知りながら、複数の国境間で人びとを押し戻す行為を容認している。
締め出された援助団体と地域住民の負担
この危機に対し、MSFはベラルーシ、リトアニア、ポーランドで活動してきた。しかし、それぞれの当局に再三要請したにもかかわらず、3カ国の国境地帯に入る許可は得られなかった。
ポーランドでは、すべての援助団体、NGO、ボランティアグループが国境地帯への立ち入りを禁じられたため、移民や難民への援助は制限地帯の住民に委ねられている。しかしオシグによると、住民ボランティアの中には当局から中傷や脅迫を受けたり、家財を壊されたりした人もいるという。援助活動をやめさせるためだ。
制限地帯をなんとか越えることができた移民・難民は、地元のNGOや団体、個人からの人道援助を受ける。MSFは、こうした団体を援助するとともに、制限地帯を越えた人びとに直接、医療や心のケアなどの人道援助を提供している。
オシグは「現在の状況は容認できるものではなく、非人道的です。人びとには安全と保護を求める権利があり、不法にベラルーシに押し戻されるべきではありません。この措置は命を危険にさらしています」と訴える。寒さが厳しさを増すなか、公平な立場で活動する人道援助団体がこれらの人びとに接触して水、食料、暖かい衣類、医療を届けられない限り、死者数は増加するとみられる。
[表: https://prtimes.jp/data/corp/4782/table/556_1_cdb1fa35225586820bbf99c862348feb.jpg ]
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