美しさに対する多様な価値観を測る心理指標を開発 美容価値観から明らかになった日本特有の調和志向
PR TIMES / 2024年11月20日 12時45分
株式会社コーセー(本社:東京都中央区、代表取締役:小林 一俊)は、コペンハーゲン商科大学 経営・社会・コミュニケーション学部の加納史子准教授との共同研究により、美容価値観(美しさに対する価値観)を5つの要素で測定できる世界共通の心理指標を開発しました。本指標を用いることで、一人ひとりが持つ美しさの価値観を17タイプに分類することができ、よりお客さまの心に寄り添った商品やサービスの開発や提供が可能となります。また、この指標を用いて分析することで、日本が世界でも社会調和性が相対的に優位な美容価値観をもつことが明らかになりました。本研究成果の一部は、第29回 日本顔学会大会(2024年11月2~3日・岩手県)にて発表しました。
[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/41232/649/41232-649-dd9da97bdae254082ff2056490773a0b-1598x972.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図1 各国の美容価値観の違い
研究の背景
社会の急速なグローバル化やソーシャルメディアの普及により、多くの人が地域や言語の境界を超え、お互いの文化や考えにアクセスできるようになりました。その結果、様々な刺激に影響を受け、従来の年齢・性別・地域制だけでは区切ることができない価値観の多様化が進んでいます。価値観は様々な意思決定の基準となりうる要素であり、最終的な消費行動にも繋がることから、一人ひとりの価値観を理解することはお客さまの真のニーズに近づくことを意味します。しかし、その多様化した個人の価値観を測る指標は乏しく、特に美しさに対する手法は確立されていませんでした。そこで、当社では美しさの価値観を測る指標を開発し、グローバルのお客さまを価値観の側面から理解することを試みました。
グローバルな美容価値観を測定する心理指標の開発
美容価値観を測る心理指標を開発するため、デンマークに住む欧州9ヵ国多国籍の男女13名を対象に、美しさに対するインタビューを行い、美しさを求める価値観の構成要素を洗い出しました。次に、それらを美容価値観として測定するための設問の作成を行いました。イギリスにおいて調査を繰り返すことで、設問と指標の妥当性を検証し、その後、イギリス・アメリカ・デンマーク・日本においても妥当な設問と指標になっていることを確認しました。最終的に14の設問から構成される美容価値観調査票を開発し、同時に、美しさの動機は、社会調和性・他者優越性・自己研鑽性・内面性・個性尊重性の5つの要素からなる円環モデルで表せることを提案しました(※1)(図2)。
(※1) Kano Glückstad, F., Kobayashi, H., Seddig, D., Davidov, E., & Nakamura, R. (2024). Personal Beauty Values: Development and Validation of a Multidimensional Measurement Scale. Journal of Consumer Behaviour. https://doi.org/10.1002/cb.2421
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/41232/649/41232-649-3cb88ad109448e11fd22d369771f2d5e-1430x475.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図2 美容価値観の5要素の円環モデル
世界8ヶ国の美容価値観を可視化
開発した美容価値観調査票を用いて世界8ヶ国(日本・アメリカ・イギリス・デンマーク・フランス・ドイツ・中国・台湾)の15~84歳男女計12,712人を対象にwebアンケートによる調査を行いました。
[画像3: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/41232/649/41232-649-c5b7122150c1078ba28709bac152a41c-1914x708.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図3 5つの美容価値観の重要度の国別比較
各国ともに内面性が高く重視される一方、その他の構成要素の重要度に違いが見られました。アメリカ・フランスは個性尊重性と自己研鑽性を、中国・台湾は全ての構成要素を強く重視することを確認しました。ドイツは本調査では若年男性層の回答が多かったものの、中国・台湾と同様の傾向を示しました。また、イギリス・デンマークでは個性尊重性を重要視し、一方日本では、すべての重要度が低く、他国と比較して相対的に社会調和性が優位であることが示唆されました(図3)。
さらに、5つの美容価値観の違いから、個人ごとに価値観のパターンを分類することで、17の美容価値観タイプに分けることができました(図4)。これらの個人のパターンを国ごとにタグ付けしてマッピングすることで、国ごとの美容価値観タイプの分布傾向を可視化し、各国の美容価値観の違いを把握することができました(図1)。なお、マッピングのゾーンにより5つの美容価値観のどこが強いかも同時に把握することができます。ここでも、日本は他国と異なる価値観を持っていることや、同じ欧州であってもフランスやドイツのように文化背景により異なる美容価値観の傾向を示すことを確認しました。
[画像4: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/41232/649/41232-649-7ee574837ad3dcdd52f94cce39c8b131-1716x895.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図4 世界8ヶ国における17の美容価値観タイプ
今後の展望
今回、当社独自の美容価値観の指標を整備することにより、お客さまをこれまでの年齢・性別・地域といった表面的な属性ではなく、心にある価値観をもって分類・理解することが可能となりました。この成果は今後、世界のお客さま一人ひとりの価値観に寄り添った商品開発やサービス展開へと応用していきます。今後も、今回の8ヶ国から地域を拡げての検証や、実際の美容行動との繋がりの研究など、世界の一人ひとりが望む「きれい」の実現に向けて研究活動に邁進していきます。
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