「トカゲのように走り続けて…」 芥川賞・今村夏子さんへ高樹のぶ子さんが贈呈式でエール! 今村さんは受賞後の“秘話”も明かす
PR TIMES / 2019年8月24日 10時40分
第161回芥川賞直木賞贈呈式が開催
第161回芥川賞直木賞の贈呈式が23日、都内で開かれ、芥川賞が「むらさきのスカートの女」(小説トリッパー春号)の今村夏子さん、直木賞は『渦 妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん) 魂(たま)結び』(文藝春秋)の大島真寿美さんに贈られました。芥川賞の祝辞を述べた選考委員の高樹のぶ子さんは、走り続けるトカゲの姿になぞらえて若い才能にエールを送り、今村さんからは受賞決定後の“秘話”も明かされました。
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視線を上げるたび、会場に響くシャッター音。
「やっぱり芥川賞ってすごいなと思いました」
金屏風を背にした今村さんが受賞スピーチで語ります。受賞作とともに書店に並んだ自分の顔写真入りのPOPを見て、音信不通だった友人から携帯電話にメッセージが届き、「好きなことが見つかって良かったね。うれしいよ」という言葉をもらったことも明かしました。
「たったこれだけのやりとりですが、何かとても大きなプレゼントをもらったような気持ちになりました。『好きなことが見つかってよかったね』という言葉は、初めて言われました。ずっと大切にしたいと思います」
「むらさきのスカートの女」は、近所でも風変わりで有名な「むらさきのスカートの女」が気になって仕方ない「わたし」が彼女と「ともだち」になるべく、あの手この手で同じ職場に誘い込んでいく物語です。選考委員の高樹さんは、「さまざまな読み方があった」と祝辞で評し、「追いかける女と追いかけられている女の関係性を想像し、同一人物、あるいは別の女なのか、その謎がいまだに解かれていない。(今村さんは)中途半端にばらさず、あの世まで持っていくのではないかと思います」と述べました。
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独りでいることが好きで、人付き合いは苦手と以前のインタビューでも話していた今村さん。緊張した面持ちが笑顔になったのは、今村さんの「妄想力」の強さに言及した高樹さんが、創作活動を“トカゲ”に例えて、こうアドバイスした時です。
「同じところに立っていると、自分の知らないうちにその場に身体が沈み込んでいきます。バシリスクというトカゲは、水の上を後ろ脚だけで走ります。右足が沈む前に左足を出す……ということを一生懸命やるうちに、知らないうちに結構遠くまでいける。今、芥川賞をもらわれて、立っているところから、走りだしてもらいたい。これから先はバシリスク夏子と、バシリスクのぶ子が、よーいドンで走りだします」
18年間務めた芥川賞の選考委員を今回で退くという高樹さんのエールに、今村さんは何度もうなずきました。寡作で知られ、会場で配られた「受賞のことば」にも、まだ新しい小説を書きだすことができず「日々恐怖を感じている」と吐露しつつ、こんな言葉を寄せています。
「私にはまだ書きたいことがあります。今回の受賞で、小説への思いは一層強くなりました」
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■あなたはどう読み解く? 28日に東京・六本木で「読書会」も
選考委員の間でも読み方がわかれた受賞作。28日には、『むらさきのスカートの女』の読書会「むらさきの夕べ」が文喫 六本木(東京都港区)で開催予定です。ドレスコードは「むらさき」色という、一風変わった読書会です。詳細・申し込みはhttp://ptix.at/NMC7YO。
[画像4: https://prtimes.jp/i/4702/773/resize/d4702-773-867641-1.jpg ]
■書誌情報
むらさきのスカートの女
著者:今村夏子
近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女のことが、気になって仕方のない〈わたし〉は、彼女と「ともだち」になるために、彼女を観察しつづけ、〈わたし〉の職場で彼女が働きだすように誘導する。
〈わたし〉が「むらさきのスカートの女」を観察し続ける視点から照射されるものは、一体、何なのか。主人公の繰り広げる狂気と紙一重の滑稽な振る舞い、変わりえぬ日常と、そこに漂う不穏な空気、〈わたし〉の底知れぬ孤独がふいに露わになる瞬間……。今村夏子さんだからこその、読後感と余韻が残る作品です。
ISBN:9784022516121
定価:1404円(税込)
発行:朝日新聞出版
https://www.amazon.co.jp/dp/4022516127
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