早稲田大学柴田重信研究室・ベネッセ教育総合研究所 共同調査 「子どもの生活リズムと健康・学習習慣に関する調査」結果 学年が上がるにつれて生活リズムが乱れている子どもの割合が増加
PR TIMES / 2022年5月11日 19時40分
~規則正しい生活と精神的な健康状態・成績の間に正の関連~
株式会社ベネッセコーポレーション(本社:岡山県岡山市、代表取締役社長:小林 仁)の社内シンクタンクであるベネッセ教育総合研究所は、早稲田大学 理工学術院 柴田重信研究室と共同で、2021年6月、小学4年生から高校3年生までを対象として、「子どもの生活リズムと健康・学習習慣に関する調査」を実施し、このたび分析結果を取りまとめましたのでお知らせします。
【調査にあたっての課題意識】
コロナ禍による外出自粛や休校の期間では、生活リズムが急に変化したことや在宅時間が急増したことにより、コロナ禍前と比べて、子どもたちの起床時刻が遅くなる(遅起き)、テレビ・DVD、テレビゲーム、携帯電話・スマートフォンの利用時間が増加するなど、生活習慣に変化が生じました(東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所「子どもの生活と学び」共同研究プロジェクト 調査報告書『コロナ禍における学びの実態 ―中学生・高校生の調査にみる休校の影響―』, 2022)。子どもにとって、学習は生活の中の重要な要素であり、生活習慣の乱れは学習習慣にも悪影響を与えるおそれがあります。
子どもの学習に関する研究を行っているベネッセ教育総合研究所は、学習習慣の確立には、健康的な生活習慣(睡眠、運動、食事、適切なメディア利用など)が身につけられていることが重要と考え、健康と体内時計に関する研究(特に時間栄養学研究)を行っている早稲田大学 理工学術院 柴田重信研究室と、小学4年生から高校3年生までを対象に、児童・生徒の生活習慣・学習習慣の現状を明らかにすることを目的に共同調査を実施しました。
【調査結果サマリー】
小学4年生から高校3年生までを対象とした調査の結果、学年が上がるにつれて生活リズムの乱れが増加する傾向にありました。また、精神的な健康状態・成績が良い子どもは、普段から規則正しい生活をしている傾向がみられました。
1. 学年が上がるにつれて、平日・休日の睡眠時間が減少し、生活リズムの夜型化や平日と休日の生活時間のズレ(「社会的時差ボケ*」の発生)が大きくなる傾向がみられました。
2. 学年が上がるにつれて、寝る前のスマートフォン・携帯電話、パソコン、タブレット、テレビ、ゲームの画面を見る時間(スクリーンタイム)が増えており、疲れ・翌日の眠気にも影響する傾向がみられました。
3. 学年が上がるにつれて、朝食の欠食頻度が増加する傾向がみられました。
4. 成績を層別に分けたとき、成績が上位の子どもほど、成績が下位の子どもに比べて、睡眠、食事、学習が規則正しく、寝る前のスクリーンタイムが無いと回答する傾向がみられました。
*社会的時差ボケ…平日と休日の間での生活リズムのズレ(社会的時差)により、体に不都合が生じること。今回の調査では、社会的時差も統一的に社会的時差ボケと呼ぶ。
【調査結果詳細】
1. 学年が上がるにつれて、平日・休日の睡眠時間が減少し、生活リズムの夜型化や平日と休日の生活時間のズレ(「社会的時差ボケ」の発生)が大きくなる傾向がみられました。
[画像1: https://prtimes.jp/i/120/1029/resize/d120-1029-dd69a5395910fa47fbd0-0.png ]
※社会的時差ボケは、平日・休日の起床時刻、就寝時刻から、平日・休日の睡眠時間と睡眠時間の中央時刻を計算し、平日と休日の睡眠時間の中央時刻のズレを絶対値として算出。睡眠時間・社会的時差ボケの数値は、 「7時間」を「7.0」 、「8時間30分」 を「8.5」のように10進法に置き換えて表現している(例:8時 間12分を8.2)。
平日・休日とも睡眠時間は、学年が上がるにつれ減少しています。特に高校3年生の平日の睡眠時間は平均6時間36分となっていました。一方で、休日は8時間以上寝ていることからも、平日にたまった睡眠不足(睡眠負債)を休日に寝だめして解消していることが分かります。その結果、平日と休日の生活リズムの時刻差(「社会的時差ボ ケ」と呼ばれる)が平均で1時間を超えていました。
OECD(経済協力開発機構)が発表した世界各国の睡眠時間は、日本が世界で最も短く、15~65歳の 平均睡眠時間は7時間22分 でした。今回の調査では、高校生の睡眠時間は1週間平均で7時間程度(7時間9分)であり、睡眠時間が短い傾向は高校生のうちからすでに始まっていると考えられます。
2. 学年が上がるにつれて、寝る前のスマートフォン・携帯電話、パソコン、タブレット、テレビ、ゲームの画面を見る時間(スクリーンタイム)が増えており、疲れ・翌日の眠気にも影響する傾向がみられました。
今回の調査から、寝る前のスクリーンタイムは、学年が上がるごとに増える傾向があることが明らかとなりました。テレビやパソコン、スマートフォンのディスプレイから発せられる光には、青色の波長帯が多く含まれており、寝る前の青色光暴露は、メラトニン(睡眠誘発ホルモン)の分泌を抑制し、体内時計の夜型化をもたらすと言われています。また、夜寝る前にスクリーンタイムがあると答えた子どもは、無いと答えた子どもに比べて、「つかれやすい」「昼間に眠くなる」と答えた割合が高く、夜寝る前のスクリーンタイムは睡眠の妨げになるだけでなく、日中の活動にも影響していると考えられます。
[画像2: https://prtimes.jp/i/120/1029/resize/d120-1029-283df9a50277ea736105-1.png ]
[画像3: https://prtimes.jp/i/120/1029/resize/d120-1029-41d91e57d03bcd90d2ce-2.png ]
※グラフ内では、スクリーンタイムをSTと表現しています。「寝るすぐ前まで、スマートフォン・携帯電話、パソコン、タブレット、テレビ、ゲームなどの画面を見る」という質問に、「1.よくあった」「2.ときどきあった」と回答した場合に「夜のST有り」、「3.あまりなかった」「4.まったくなかった」と回答した場合に「夜のST無し」と分類しています。
※図表で使用している百分率(%)は、小数第2位を四捨五入して算出しています。四捨五入の結果、数値の和が100.0にならない場合があります。
デジタル機器の使用に際して、注意した方がよいこととして、例えば、パソコンやスマートフォンは、ナイトモードを使用することで、ブルーライトをカットすることができます。一部のスマートフォンでは日の出、日の入りに合わせて自動で色が変わり、ブルーライトのカットが簡単にできます。また、輝度そのものを下げることも有効です。寝る前のスクリーンタイムを減らすとともに、パソコンやスマートフォンの設定や室内照明を工夫することで、体内時計や生活リズムの改善につながることが期待されます。
3. 学年が上がるにつれて、朝食の欠食割合が増加する傾向がみられました。
今回の調査では、毎日朝食を食べない子どもは、学年が上がるごとに増加する傾向がみられ、高校3年生では毎日食べる子どもは全体の74.7%まで低下していることが分かりました。
なお、私たちの体内時計は24時間よりも少し長く、毎日調整する必要があります。朝食や朝の光は体内時計を早める効果を持つため、日々の体内時計の調整に欠かせません。朝食を食べることで午前中から身体に栄養が補給され、交感神経が優位になり、脳が活発に働きます。また、夜型の人は、体内時計がより遅れやすく、朝食を抜くとさらに遅寝・遅起きになることが時間栄養学の研究から分かっています。
[画像4: https://prtimes.jp/i/120/1029/resize/d120-1029-5cec7b9c1ec7dadcf792-3.png ]
※図表で使用している百分率(%)は、小数第2位を四捨五入して算出しています。四捨五入の結果、数値の和が100.0にならない場合があります。
4. 成績を層別に分けたとき、成績が上位の子どもほど、成績が下位の子どもに比べて、睡眠、食事、学習が規則正しく、寝る前のスクリーンタイムが無いと回答する傾向がみられました。
それぞれの学校段階において、成績が上位の子どもは、成績が下位の子どもに比べて、普段から規則正しい睡眠、食事、学習習慣があると回答し、生活リズムの規則正しさと成績とに正の関連がみられました。また、成績が上位の子どもは、成績が下位の子どもに比べて、寝る前のスクリーンタイムが無いと回答する傾向もみられました。普段からなるべく規則正しい生活リズムを心掛けることが重要だと考えられます。
[画像5: https://prtimes.jp/i/120/1029/resize/d120-1029-eb05f7c2b0533a8d35b2-4.png ]
[画像6: https://prtimes.jp/i/120/1029/resize/d120-1029-6ecc68f40a46aab40dcf-5.png ]
※成績は、国語、算数・数学、理科、社会、英語(中高生のみ)の各教科の自己評価を合計し、下位層、中位層、上位層がそれぞれおおよそ三分の一になるようにグループ化しました。上記のグラフは、下位層、中位層、上位層それぞれの属性内での「とてもあてはまる」+「まああてはまる」の割合 (%)を示しています。
【今後の調査について】
規則正しい生活習慣の獲得には、より低学年での習慣化が重要な要素の一つだと考えられます。また、そのためには子ども自身の生活習慣とともに、保護者自身の生活習慣や保護者と子どもの関わりが重要です。今後の研究では、今回の調査結果を踏まえ、小学3年生以下の学年の子どもや保護者に調査対象を拡大することを予定しています。
【早稲田大学 理工学術院 柴田重信教授からのコメント】
体内時計は適切な時刻情報を生体に与えることにより、効率よく、生体機能を発揮するのに役立つことが知られています。今回の調査では、小学生の高学年から高校生までを対象に、食事、学習、睡眠の1日の中での不規則性や、平日と休日という1週間の中での不規則性に着目して、睡眠、成績や精神衛生との関連性を研究する上で非常に重要なデータを得ることができました。成績や学習習慣と、普段の生活習慣が関連していることは以前から知られていましたが、今回の調査で現状を細かく把握することができたと考えています。一方で、規則正しい生活リズムの重要性は、子どもや保護者にしっかりと伝わっておらず、今回のような研究結果を今後もっと社会にアウトリーチしていく必要があります。ベネッセ教育総合研究所とともに、さらに日本の未来を明るくするような教育活動、研究活動を展開していきたいと考えています。
【調査概要】
[表: https://prtimes.jp/data/corp/120/table/1029_1_4a67e0eb666bffe51eb641454b8d5862.jpg ]
【詳しいデータのご紹介】
●ベネッセ教育総合研究所のホームページから、調査結果をまとめた「報告書ダイジェスト版(レポート)」をダウンロードできます。本リリースで紹介したもの以外のデータ詳細はこちらをご覧ください。
https://berd.benesse.jp/shotouchutou/research/detail1.php?id=5743
(関連調査)
●中学生と高校生に実施した調査結果も公開しています。
『コロナ禍における学びの実態─中学生・高校生の調査にみる休校の影響─』
※コロナ禍の影響についての分析結果。格差についても言及。
https://berd.benesse.jp/shotouchutou/research/detail1.php?id=5738
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