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里崎智也、独自の“ドラフト改革論”を提言!「選手の立場から言わせてもらうと…」

REAL SPORTS / 2021年10月9日 8時16分

10月11日、運命の一日が始まる。これまでに多くのドラマを生み出してきたプロ野球ドラフト会議は、長い歴史の中で紆余曲折を経て今の形にたどり着いた。今や地上波やCS放送で多くのファンが固唾(かたず)をのんで見守る国民的イベントだが、現行の形が必ずしもベストとはいえないだろう。現役時代に千葉ロッテマリーンズで2度の日本一に貢献した里崎智也氏が、独自のドラフト改革論を提唱する――。

(インタビュー・文=花田雪、写真提供=スカイA)

里崎智也氏が提言する、ドラフト改革案とは?

NPB(日本プロ野球)におけるドラフト会議は1965年11月17日に第1回が開催され、今年で57回目を迎える。長い歴史の中では多くのルール改正も行われてきた。

1993年には「逆指名制度」が導入され、後に「自由獲得枠制度」「希望入団枠制度」と名称を変更したものの、2006年を最後に廃止。

2005年からは現在も続く育成選手ドラフトがスタートしている。

それ以外にも、高校生ドラフトと大学・社会人ドラフトの分離開催や指名人数の上限設定など、いくつものマイナーチェンジを繰り返し、現在は「1位指名のみ入札制で行い、重複した場合は抽選。2位指名以下はウェーバー・逆ウェーバーを交互に行う」形に落ち着いている。

紆余曲折を経て現在の形にたどり着いたドラフトは、これが一つの完成形といえるだろう。

とはいえ、改革の余地がないかといえば、そんなことはないだろう。現行制度がベストではないとすれば、一体どんな改革案が考えられるのか――。

解説や自身のYou Tubeチャンネルなどで歯に衣(きぬ)着せぬ発言・提言が話題に上ることも多い里崎智也氏は、現状ドラフトの改革案をこう語る。

そもそも、なぜドラフトが行われるのか? その意義から考える

「ドラフト改革を語る上でまず考えなければいけないのは、そもそも『なぜ、ドラフトが行われるのか』ということです。現在、日本のプロスポーツでドラフト制度を採用しているのはNPB、独立リーグをはじめとしたプロ野球だけ(※日本では競技麻雀のMリーグもドラフト制度を採用)。その他のスポーツはいわゆる自由競争で選手を獲得しています。ドラフト採用の理由は『戦力の均衡化』。高い人気、資金力を誇る球団に有望選手が集中しないようにする。その意義を徹底するのであれば、私は1位指名から『完全ウェーバー制』を採用するのが一番シンプルだと思います」

完全ウェーバー制でのドラフトはMLBでも採用されている、いわば「ワールドスタンダード」。逆をいえば、「1位指名のみ入札制で行い、競合した場合は抽選で交渉権を決定する」システムは、日本独自のものだ。

「1位指名が入札制で行われる理由は大きく分けて2つあると思います。一つは、『不平等さ』の解消。各球団、当然ながら毎年『一番欲しい選手』がいる。しかし完全ウェーバーだと、特に指名順が後ろの球団が『一番欲しい選手』を獲得できる可能性は限りなく低くなる。これを『不平等』と考える人がいる。

 ただ、よく考えてほしいのは、そもそもドラフト会議自体が先ほど言ったように『戦力の均衡化』を図るために生まれたものだということです。不均衡なものを均衡化しようとするのだから、そこに不平等が生まれるのは当たり前の話です。その意味で、1位入札制の正当性を『平等さ』に求めるのは、本末転倒ですよね」

確かに里崎氏の言うように、戦力の均衡化を目的とするドラフトの意義と、「1位指名のみ、各球団に平等に獲得チャンスを与える」現行制度は矛盾しているようにも思える。だからこそ、MLBをはじめとする北米スポーツの多くはドラフトに完全ウェーバー制度を採用しているのだ。

完全ウェーバー制にすると「抽選のドラマ」は生まれなくなるが…

「もう一つの理由が、ドラフトのエンターテインメント化です。今やNPBのドラフトは地上波で全国中継されるほどのモンスターコンテンツ。視聴者、ファンの注目は『あの選手をいくつの球団が指名するのか』『あの球団はどの選手を指名するのか』に注がれる。これは、日本のドラフトがこれまで培ってきた歴史でもあるので、簡単に『はい、やめましょう』というわけにはいかない。完全ウェーバーになれば、いわゆる『抽選のドラマ』も生まれなくなります。

 ただ、完全ウェーバーにしてもエンタメ化はできると思うんですよね。複数球団による競合はなくなりますが、その代わり『全体1位指名は誰だ?』という新しい注目ポイントが生まれる。MLBのドラフトでも『全体1位指名』の選手は大きな話題になります。これはあくまでも見せ方の問題なので、やりようはいくらでもある」

ドラフトは「職業選択の自由」に違反している?

ドラフトの意義そのものに立ち返れば、里崎氏が提言する完全ウェーバー化は実に理にかなったものに思える。

その一方で、ドラフトを語る上で常について回る問題もある。

それが、日本国憲法が定める「職業選択の自由」に関する議論だ。選手が自ら所属球団を選択できない現行のドラフト制度が、その権利を奪っている――。以前からこうした議論がなされてきたが、完全ウェーバー制へ移行するとなれば、さらに拍車がかかることは容易に想像できる。

「それは、考え方の問題ですよね。『職業選択の自由』における『職業』とは何か。多くのアマチュア選手は『プロ野球選手』になりたいわけです。もちろん中には特定の球団に入りたいという希望を持つ選手もいるでしょう。ただ、NPBという組織を1つの『会社』だと考えたらどうでしょうか。一般社会でも就職活動の末に第1志望の会社に入社して、さらに『東京支店で働きたい』という希望が必ずしもかなうわけではない。ドラフトも同じです。“株式会社NPB”に入社して、そこから“北海道支店”の配属になるのか、“大阪支店”の配属になるのか、“東京支店”の配属になるのか――。その意味では『職業選択の自由』はドラフトでも保障されているといえるのではないでしょうか」

完全ウェーバー制にするなら、FA権のルール変更をセットで考えるべき

里崎氏は、さらにこう続ける。

「ただし、完全ウェーバー制を実現するためには、間違いなく必要になることがあります。それが『フリーエージェント(FA)権利取得年数の短縮』です。ドラフトのウェーバー制とFA権の取得年数短縮は、セットで考えないといけない」

NPBのFA制度は、現行ルールにのっとれば高卒入団選手が1軍登録8年、大学・社会人卒での入団選手が同7年で取得できる(※登録145日間を1年として換算。2007年以降のドラフトで入団した選手が該当)。また、これらの年数で獲得できるのは国内移籍が可能な「国内FA権」であり、MLB移籍が可能になる「海外FA権」取得には高卒、大卒問わず累計9年の1軍登録が必要になる。

「これまでも多くの議論がされてきましたが、選手の立場から言わせていただくと、この取得期間はやはり長い。高卒選手でも最短で26歳、大卒選手に至っては29歳での権利取得ですからね。平均すると権利取得が30歳を超えてしまう。海外FA権の話は別として、少なくとも国内FA権は5年程度が望ましい。であれば、大卒選手でも最短27歳でFA権を取得できます。

 先ほどNPBを1つの会社として考えるという話をしましたが、一般社会でも会社に入社して、ある程度実績を残したら自ら転属願を出して希望の部署に異動できるケースがあるわけじゃないですか。入社時には無かった権利も、会社でしっかりと結果を残すことで得ることができる。プロ野球も、ドラフトで完全ウェーバーを採用する代わりに、『実績を残したら早い段階で好きな球団に行けるよ』というシステムを導入した方がいい。入り口を狭める代わりに、出口は広く開放してあげる。

 また、FA権取得年数の短縮は『2度目以降の権利取得』にも大きな影響を与えます。現行ルールでは一度権利を行使した選手は4年後に再びFA権を得ることができますが、特に大卒選手の場合はほぼ意味をなしていないのが現状です。だって、最短でも2度目の権利取得が33歳ですよ? これが、31歳になればかなり大きい。高卒選手であれば、現役生活の中で3度、FA権を取得できるケースも増えてくる」

選手会はFA権の取得年数短縮を希望も、実現しない理由

FA権の取得年数をめぐっては、現在も日本プロ野球選手会とNPBの間で議論が行われている。しかし、なかなか選手会側の希望が通らないのが現状だ。その理由を、里崎氏はこう分析する。

「一番は、初期投資の回収問題です。例えばドラフト1位の場合、多くの選手が契約金で1億円+出来高5000万円、年俸1600万円という新人選手上限いっぱいの条件でプロ入りします。球団からすれば、何の実績も上げていない選手にいきなり1億円以上を投資するわけですから、ある程度回収しなければならない。数年間所属しただけで他球団に移籍されたら、それができなくなる。当然、『なるべく長い期間、選手を自チームに所属させたい』となります。

 ただ、この問題の解決策も実はシンプルです。契約金と年俸の上限を下げればいい。初期投資を減らすことができれば、回収もしやすくなる。もしくは契約金の一部をFA行使の際の『再契約金』という形にして、チームに残留するのであれば満額支払う、他球団へ移籍するのであれば再契約金分は支払わないようにすればいい。そうすれば、選手、球団にとってウィンウィンの関係が築きやすくなる。NPBのドラフト制度は、紆余曲折を経て現状のルールにたどり着きました。その意味では素晴らしいルールではありますが、選手、球団双方がより納得できる、落としどころはまだあるはずです」

半世紀以上をかけて形成されてきたNPB独自のドラフトルールだが、選手、球団、そしてファンにとっての「ベストな形」にはまだたどり着けていないのかもしれない。

大きな注目を集めるビッグイベントとなったドラフト会議が、今後どんな変化を見せていくのか。果たして、大改革は行われるのか――。

今年のドラフトは10月11日(月) 17時に始まる。いったいどんなドラマが生まれるのだろうか。これからのドラフトの行く末とともに、見守っていきたい。


<了>






PROFILE
里崎智也(さとざき・ともや)
1976年5月20日生まれ、徳島県出身。鳴門工高、帝京大を卒業後、1998年プロ野球ドラフト会議で千葉ロッテマリーンズに逆指名で2位入団。2年目の2000年に1軍初出場を果たし、不動の正捕手として長く活躍した。2005年、2010年には日本一に貢献。2014年に現役引退。現在は解説者や自身のYouTubeチャンネル(Satozaki Channel)などで野球の魅力を発信。スカイA「プロ野球仮想ドラフト会議」に出演、ドラフトの見どころを徹底分析している。

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