日中韓の「桜の起源」論争に終止符?=中国専門家「奪うな、桜は日本のものだ」

Record China / 2019年3月26日 17時50分

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関東でもまもなく桜が満開となる25日、中国版ツイッター・微博(ウェイボー)に「奪うな、桜は本当に日本のものだ」と題する文章が掲載された。

関東でもまもなく桜が満開となる25日、中国版ツイッター・微博(ウェイボー)に「奪うな、桜は本当に日本のものだ」と題する文章が掲載された。

文章の著者は、現在、上海辰山植物園に勤める劉夙(リウ・スー)氏。毎年、桜が開花する時期になると、日中韓で「桜の起源論争」が起こるが、劉氏は2015年に「桜の起源は日本である」と主張する文章を掲載し注目を集めた。劉氏が今回、自身の微博アカウントに掲載したものは、当時の文章に加筆した「2019年版」となっている。以下はその概要。

毎年、春になると、東アジアで桜が開花する。そして、それと共に日中韓3カ国のメディアをにぎわすのが桜の原産地論争である。

私は、中国のいわゆる専門家やメディアが桜の起源についておかしな言論を発表するのをもう何年も見続けてきた。2015年の「両会(※全国人民代表大会と中国人民政治協商会議)」の期間中、委員から桜産業を発展させる提案が出た。あるメディアは「桜の起源は中国のヒマラヤ山脈だ」「秦漢の時代にはすでにあり、後に日本に伝わった」などと報じた。同年3月には韓国メディアが「ソメイヨシノの起源は韓国である」と主張した。そして、中国桜花産業協会の代表は「桜の起源は日本でも韓国でもなく、中国である」という驚くべき発言をした。

2016年春には、武漢市のネット金融サービス会社が東京渋谷の大型モニターに「世界の桜のふるさと」と銘打って武漢大学の桜をPRした。2017年には、山東省棗荘市山亭区の役人が、農業科学院の専門家の結論として「世界の桜の原産地は山亭だ」と発言した。そして、2019年春、武漢大学で和服のような服装をした人物が警備員と衝突する事件が発生し、桜だけでなく「和服の起源は中国だ」などと主張する声まで上がった。

実は、「桜」の定義をはっきりさせれば、科学的にはそれほど起源が論争になることはないのである。



■人工的な桜の核は日本固有、栽培も日本が主

桜は学術的にはバラ科モモ亜科スモモ属であり、多くの品種の総称である。しかし、一般に言われる「桜」は人工的に作り出され、広く栽培されている品種のことを指す。そのため、まず「野生の桜」と「人工の桜」は分けて考える必要がある。両者の起源に関する論争は、科学上まったくの別問題だ。

人工的に栽培された桜は、品種が非常に多いため、いくつかの種類に分けられる。カワヅザクラに代表される早咲き種、ソメイヨシノに代表される中咲き種、カンザンザクラに代表される遅咲き種など、開花の時期によって分類する方法もあれば、花の直径などによる分け方もある。

現在では、さまざまな品種があるが、その祖先である野生種の数は多くない。すべての人工栽培の桜は、野生種をかけあわせて生まれたものだ。そのため、人工の桜の起源を論じる時は、その祖先に当たる野生の桜の種類を調べなければならない。

以前は技術が追い付かず、判断が難しかったが、分子生物学の技術発展によって多くの問題に割とはっきりした答えが出ている。現在、自信を持って言えることは、人工栽培の桜のほとんどが、オオシマザクラ、カスミザクラ、ヤマザクラ、エドヒガンザクラ、カンヒザクラの5つの野生種から生まれているということである。この5種のうち、カンヒザクラを除く4種は日本の野生に分布しているもので、オオシマザクラは伊豆や房総半島が原産の日本の固有種だ。

オオシマザクラは人工栽培の桜の「核」と言っていいもので、多くの有名な品種がこの血統を有している。たとえば、カンヒザクラ、ヤマザクラ、エドヒガンザクラを、それぞれオオシマザクラとかけあわせて生まれたのが、カワヅザクラ、カンザンザクラ、ソメイヨシノである。つまり、現代の人工栽培された桜の品種は、明らかに日本の特色を有している。これらの種類は、その核となるオオシマザクラさえ分布していない中国では、誕生することはほぼあり得ないのである。



上述の5種類の祖先に当たる桜のうち、カンヒザクラは沖縄県の石垣島に分布していたが、これはおそらく中国華南から伝わったもので、日本原産ではない。しかしながら、カンヒザクラは長きにわたって中国で開発されてこなかった。日本に伝わり、日本人の手によって初めて、人工栽培の桜のシステムの中に組み込まれた。カンヒザクラの血統を持つ品種であっても、その起源は中国ではなく日本であると言うことができる。

■野生の桜の起源は数千万年前のヒマラヤ

野生の桜の起源はまったく別の問題である。確かに、現生する100余りの野生種の原産はヒマラヤ山脈地域の可能性が高く、それが広まっていったルートの一つとして、現在の中国東部、朝鮮半島、日本列島がある。しかし、これらは国も人間も存在しない数百から数千万年前のことである。

桜の起源が中国にあると主張する人の多くは、日本の「桜大鑑」の「桜の起源は日本よりもむしろヒマラヤであると称してもよいのでは」という記述を論拠としている。しかし、それは野生の桜の起源であり、人工栽培された桜の起源ではない。つまり、一般の人が理解している「桜」の起源ではない。

一部の専門家は、故意あるいは意図せずにこの2つを混同して論じ、野生の桜の起源を用いて人々をミスリードしている。ひどい場合は、「桜は唐代に日本に伝わった」などという誤った説を散布しているのだ。



■韓国の「桜の起源」主張はかつて仮説が存在

人工栽培の桜の起源をめぐる日韓の争いについては、日中のそれとは異なる。まず、韓国人が主張しているのはソメイヨシノの起源だけであり、中国の一部の専門家のように「食欲旺盛」で、すべての桜の起源を主張しているわけではない。そして、韓国人のこの主張は確かに科学的な仮説として存在したのだ。

韓国の済州島と全羅南道南部には野生の「王桜」があり、形はソメイヨシノと非常によく似ている。そのため、1932年に日本の植物学者・小泉源一氏が「ソメイヨシノの起源は王桜」との仮説を立てた。しかし、その後、ソメイヨシノがオオシマザクラとエドヒガンザクラをかけあわせたものであるという証拠が次々と見つかった。2007年には分子研究の結果、王桜とソメイヨシノは別の種であると証明されている。この時点で、小泉氏の仮説は完全に歴史の遺物となり、これを再び持ち出すことはまったくもって科学の精神に反する。

桜の起源を簡単に説明せよと言われれば、「桜の起源は日本であり、他国は口出しするな」としか言いようがないのである。



■中国はどんな花見文化をつくるべきか

人工栽培の桜の起源は日本だが、現代の「花見文化」の起源が日本にあることはさらに疑いようがない。日本は奈良時代、中国文化の影響を色濃く受けており、中国から伝わった梅の花をめでる習慣があった。しかし、平安時代から日本は自国文化を徐々に発展させ、桜が梅に代わり日本人が最も好む春の花になっていった。戦国時代、日本人は、短時間に咲き、あっという間に散っていく桜に、短命な武士の姿を重ねた。そして、桜は日本の実質的な「国花」のような位置づけになっていく。

私たちは、桜の文化を世界に広めたのは日本人であり、中国人ではない(韓国人ではもちろんない)ということを認めなければならない。日本文化なくしては、中国が独力で数兆元にも上ると言われる桜産業をここまで育てることはできなかっただろう。しかしながら、今日の中華民族は一定程度、抗日という共通の記憶を基につくられた共同体であり、日本の武士道精神の象徴とされる桜文化は中国の人々に広く受け入れられにくい側面もある。

中国には32種の野生の桜があり、そのうち25種が中国固有種とされる。その数は日本の野生種よりも多く、開発すれば優れた品種が生まれるだろう。だが、新たに開発した品種であれ、日本から引き入れた品種であれ、最も良い宣伝はわざわざ伝統や文化と結び付けないことだ。桜はもともと自然から生まれ、自然の美しさがある。浮世の情に浸る中国人はそうした重荷を下ろし、純粋に大自然のきらめきを楽しんではどうだろうか。(翻訳・編集/北田)

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