日中共同運営の宇宙観測装置で日本チームが歴史的大発見=かに星雲からのガンマ線、過去最高エネルギー

Record China / 2019年7月4日 15時50分

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東京大学宇宙線研究所の教授などによるチームが、日本と中国が建設・運営する空気シャワー観測装置(写真)を利用して、「かに星雲」から、これまでの観測例の5倍のエネルギーを持つガンマ線が飛来していることを確認した。

東京大学宇宙線研究所の教授などによるチームが、日本と中国が建設・運営する空気シャワー観測装置を利用して、「かに星雲」から、これまでの観測例の5倍のエネルギーを持つガンマ線が飛来していることを確認した。2019年7月3日付で発表した。新しいエネルギー領域での天文学の幕開けを告げる発見という。

装置が設置されているのは、チベット自治区のヤンパーチン(羊八井)高原。自治区政府所在地のラサ市から北西に約90キロメートルの場所で、海抜は4300メートル。これまで「かに星雲」から飛来するガンマ線の最高エネルギーとして確認されたのは、ドイツで観測され2004年に発表された、75TeV(1 TeV=1兆電子ボルト)で、その他の天体から飛来したガンマ線でも100TeV以上の観測例はなかった。今回の研究では、かに星雲から最大で450TeVのガンマ線が放出されていることが分かった。

歴史的発見につながったのは、研究者らによるさまざまな工夫だった。天体からのガンマ線は高エネルギーであるほど飛来する頻度が少なく、従来は観測しても確認できない問題があった。

研究チームが利用したのは、高エネルギーの宇宙線(ガンマ線など)が地球に飛来した場合、大気上層の窒素原子核などと衝突して多数の粒子を発生させ、さらに衝突を繰り返して降り注ぐ「空気シャワー」と呼ばれる現象だ。しかしそのままでは、100TeVのエネルギーを持つガンマ線は少ないため、信号をキャッチしたとしても、その他の宇宙線雑音の数百分の1以下しかなく、埋もれてしまい確認できない。

研究チームは、ガンマ線由来と宇宙線雑音に由来する空気シャワーに含まれる、ミューオンと呼ばれる素粒子の量の違いに注目し、観測精度を高めるために地下2.4メートルにチェフレンコ型ミューオン検出装置を新たに建造した。同装置は水深1.5メートルのプールに、ミューオンが水中を超高速で移動する際に生じる発光現象(チェフレンコ光)を検出するための光電子管を取り付けた構造だ。面積は世界最大の3400平方メートルという。

2014年から約2年間分のデータを解析した結果、100TeV以上のエネルギー領域で宇宙雑音を1000分の1以下にすることに成功し、かに星雲方向からの、最高で450TeVのエネルギーを持つガンマ線約20個の観測に成功した。人類が歴史上で観測できた、最も大きなエネルギーを持つガンマ線だ。

かに星雲は、1054年の出現が中国や日本で記録に残る、超新星爆発の名残と考えられている。超新星そのものからの可視光線は急速に弱まるが、中国の文献によると20日間以上、昼間でも見えるほど明るかったという。

研究チームは、450TeVに達するガンマ線が発生した理由を、宇宙が始まった際のビッグバンの名残として宇宙全体を一様に満たす宇宙マイクロ波背景放射が、かに星雲を作った超新星爆発で作り出された超高エネルギーの電子からエネルギーを受け取ったためと見ており、かに星雲は人類の知る限り「“銀河系内最強の電子の天然加速器”と考えてよい」と説明した。

現在はボリビアでも類似の観測装置の建設が計画されており、新たなエネルギー領域の観測が進めば、「銀河系内の宇宙線のエネルギー限界や発生原理、発生源を特定することができ、1912年の宇宙線発見以来、100年以上謎だった宇宙線起源の解明の研究が飛躍的に進む」ことが期待できるという。

同研究の発表者は以下の通り。瀧田正人(東京大学宇宙線研究所 高エネルギー宇宙線研究部門 教授) / 川田和正(東京大学宇宙線研究所 高エネルギー宇宙線研究部門 助教) / 大西宗博(東京大学宇宙線研究所 高エネルギー宇宙線研究部門 助教) / 片寄祐作(横浜国立大学 大学院工学研究院 准教授) / 塩見昌司(日本大学 生産工学部教養・基礎科学系 准教授) / 日比野欣也(神奈川大学 工学部物理学教室 教授)(翻訳・編集/如月隼人)

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