「村上春樹の裏方」林少華氏、30年で43作品を翻訳―中国

Record China / 2019年7月28日 20時30分

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林少華氏は村上春樹作品の主な翻訳者だ。30年間で、今も売れ続けている「ノルウェイの森」を含め、村上春樹の著作43作品を翻訳した。冗談めかして、林氏を「村上春樹の裏方を務める男」と呼ぶ人もいるほどだ。

丸顔で、身なりはシンプル、話す時によく笑うというのが、林少華(リン・シャオホア)氏に会った時に多くの人が感じる第一印象だろう。いかにも教師という学問的な上品さを漂わせてはいるが、それよりも近所に住んでいる温和でやさしいおじさんといった雰囲気のほうがよりピッタリくるかもしれない。中国新聞網が伝えた。

林氏は大学教授であり、中国で有名な翻訳家でもある。これまでに夏目漱石や川端康成などの作品を翻訳しており、その影響力は小さくない。また、林氏は村上春樹作品の主な翻訳者でもある。30年間で、今も売れ続けている「ノルウェイの森」を含め、村上春樹の著作43作品を翻訳した。冗談めかして、林氏を「村上春樹の裏方を務める男」と呼ぶ人もいるほどだ。

■30年前に「ノルウェイの森」を翻訳

一連の村上作品のうち、林氏が最初に翻訳したのは「ノルウェイの森」だ。

この作品を訳したのはちょうど1989年の冬休みで、そのころ林氏は●南大学(●は既の下に旦)の教員をしていた。広州の冬は比較的寒く、林氏は大学の教員宿舍5階にある小さな部屋に閉じこもり、古びたVネックのセーターを着て、少しずつ原稿用紙のマス目を埋めていった。

「窓の外で『ノルウェイの森』の主人公であるミドリのようにしゃべったり笑ったりする娘に目をやったり、凍えた指を揉んだりしながら訳した。翻訳環境的には、村上が『ノルウェイの森』を書いた時に泊まっていた安宿と少し似ていた」と林氏は語る。ただ、林氏は村上のようにジャズが好きだったわけではなく、彼のBGMになったのは「高山流水」や「漁舟唱晩」、「平沙落雁」といった中国の古琴の楽曲だった。

同書は出版後たちまちベストセラーとなり、作中の多くのフレーズは読者から名言と称えられた。当時、「ノルウェイの森」を手に持っていることは、間違いなく「文学青年」や「プチブル」の象徴だった。

「30年の間に、無数の読者が訳者である私に手紙を送ってきたが、3通のうち2通は『ノルウェイの森』について書かれていた。物語のストーリーに引き込まれたという人もいれば、主人公の個性に心を動かされたという人もいた」と林氏は感慨深げに語った。

■43作品を翻訳、村上春樹の文章は自分に合っていたから

林氏が数えてみたところ、「ノルウェイの森」翻訳から最近の「みみずくは黄昏に飛びたつ」まで含めると、林氏は長編小説、中編小説、短編小説、インタビュー集などを含め43冊の村上春樹作品を翻訳してきた。

林氏は村上春樹が中国で次第に流行していく全過程も見つめてきた。2001年、上海訳文出版社は村上春樹の17作品の版権を一括で購入したが、その翻訳をすべて林氏に依頼した。これらの作品は出版後非常に人気となり、清新で優美な文体の「林訳」版は読者の間での影響力を確立した。

「翻訳とはすなわち他人の魂の情報を監視し盗み取る作業だ」。林氏は村上春樹の表現習慣と叙述の口調をよく理解しており、翻訳はスムーズだ。そのため冗談めかして、林氏を「村上春樹の裏方を務める男」だと言う人もいる。

こうしたからかいの言葉を林氏はほぼ一笑に付し、「翻訳者の役割について言えば、確かに裏方だ。クレジット形式で言えば、作者の後ろで、しかも字のサイズも小さい。訳者の立場としては何も意見はない」と語った。

彼は自分と村上春樹は「似た者同士が意気投合」したようなものだと形容し、「村上春樹の文章は私の気性に合っていた。文学翻訳は語彙や文法、文体の橋渡しをするだけでなく、審美体験や心のあり方の橋渡しをすることでもある。そうして初めて作品の精髄を伝えることができる」と語った。

林氏は作家の全体的なスタイルを再現することも重視している。「ある語句を誤訳しても本質には影響しないが、全体のスタイル、すなわち文章スタイルを誤訳したら、救いようのない事態になる。文学翻訳の価値は、極端に言うと『正しいか正しくないか』よりも、『らしいからしくないか』によって決まる。だから最後に問いかける内容は、『村上らしく訳せているか?』とか『夏目漱石らしいか?』になるはずだ。」

しかし、30年間で林氏は村上春樹に2回しか会っていない。1回目は2003年、2回目は08年だ。比較すると、最初に会った時のほうがより収穫が大きかったという。彼らは多くの翻訳や創作に関する話題について話し、さらに念願をかなえて記念撮影もした。

「私の職業は大学の教員で、授業のかたわら翻訳をしている。創作となるとさらに専門外だ」。言葉ではこう言っているものの、林氏はやはり自分の目標を設定しており、「自分の限界を打ち破りたい。そこそこ悪くない小説が書けたらと思っている」と語った。(提供/人民網日本語版・編集/AK)

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