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「ゾンビランドサガ リベンジ」の音楽はなぜユニークなのか? 制作者が裏側を語る

Rolling Stone Japan / 2021年5月20日 22時30分

「ゾンビランドサガ リベンジ」EDより(©ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会)

現在放送中のTVアニメ「ゾンビランドサガ リベンジ」の音楽面にフォーカスした短期集中連載インタビューの二回目。

今回は、エイベックス・ピクチャーズ株式会社のプロデューサー今福太郎、音楽プロデューサーの佐藤宏次(株式会社スコップ・ミュージック)、作曲家の山下洋介に話を聞いた。前回同様、楽曲に関するエピソードだけでなく、制作陣ならではの熱いトークが繰り広げられた。

ー山下さんが作曲・編曲を手がけたエンディング曲「夢を手に、戻れる場所もない日々を」は、2月に開催された「ゾンビランドサガLIVE~フランシュシュ LIVE OF THE DEAD ”R”~」で初披露した曲ですよね。

今福:実はこの曲、アニメの毎エピソードで必ず流れるわけではないということが予め想定されていて、とても良い曲だからこそ勿体ないと思っておりました。なのでこの曲に何か特別な意味合いを持たせたくて、4月に始まる放送へのバトンパスという意味を込めて、一足早くライブでの初披露となりました。

山下:なるほど。嬉しい。

【動画を見る】「ゾンビランドサガ リベンジ」EDテーマ「夢を手に、戻れる場所もない日々を」

ーライブが終わった後に楽屋でキャストの方々に感想を聞いたら、懐かしい感じがするって皆さんおっしゃっていて、その点は作曲時も意識しましたか?

山下:そうですね。オーダー自体もそうでしたし。ちょうど自分が小学生ぐらいの頃に、8つ上と7つ上の兄と姉が山ほどCDを持っていて、よく家で聴いていた曲のサウンド感でもあるので。自分の頭の中のサウンドライブラリーにおいては、比較的初期の頃にインプットされたテイストのサウンドなんですよね。だから無理やり掘り起こしてつくったというよりは、ストレートなアプローチでつくった印象でしたね。

佐藤:制作陣は基本的にみんな世代が近いので、エンディングの曲どうしようかねなんて打ち合わせをしてた時に、誰かがこういう感じいいんじゃないって提案すると、みんなで盛り上がる。世代が近いから共通言語も近いんですよね。そして今回ギターを演奏していただいている増崎孝司さんが、初期のイメージから更に盛る、みたいな(笑)。

山下:あと僕がたまたま2010年前後ぐらいに、宇徳敬子さんのサポートバンドをやってたので、ああいうテイストの曲を自分でもよく演奏してたなってところも、ひとつヒントとしてあったかもしれないですね。


海の匂いを感じながら作った一曲

ー自分の中にあるものを自然に出せたと。

山下:そうですね。僕と佐藤の間では、二往復ぐらいでできたかなって。これは余談ですけど、この曲はちょうど去年の夏頃に作った曲で、自分の引っ越しの時期と制作の時期が被ってたんです。引っ越した先のまだ何もないダンボールだらけの部屋で、パソコンとちっちゃいミニ鍵盤とアコースティック・ギターっていうコンパクトなセットで一気に作ったんですよ。

佐藤:前住んでたところより海に近づいたので、海の匂いを感じながら(笑)。

山下:劇中で巽 幸太郎があの屋敷でやってる作曲スタイルではないけど、ただなんかちょっと幸太郎の気分かもな、とか思いながら。

佐藤:どういうこと?全然よくわからない(笑)。

一同:(笑)。

ー山下さんは曲を作る時はギターからですか?

山下:いや、決まってはないですね。鍵盤の場合もあるし、鼻歌からの時もあるしで。この曲の場合は、どうだったのかな。鼻歌だったかもしれないです。多分、小学校時代を思い出しながら作ったと思いますね。

ー作品の制作サイドからのオーダーを、佐藤さんは山下さんにどのように伝えるんですか?

佐藤:オーダーにもよるんですけど、今回のエンディング曲に関しては、製作陣と話した「こういう曲だったら面白いな」って内容をそのままドン!と伝える感じでした。

山下:前回の記事を読んだ限りだと、多分オープニングの曲(「大河よ共に泣いてくれ」)とは相反する形だったんじゃないかなと想像しますね。



佐藤:そういう意味では僕からのオーダーは雑だったかもしれないですね(笑)。エンディングに関しては、細かく噛み砕いて話すようなことはせず、もうそのままそのものをズバリ、こういう曲を作りたいって。

山下:一個、今思い出したのは、フルサイズの曲の時、ラストのサビに向かうところでもうちょっと盛り上がりたいって、ブレイクが一小節ずつ増えていったところがそういえばあったなって(笑)。

佐藤:あったね。忘れてた(笑)。デフォルメされた90年代感なんですけど、あの頃の感じだったらブレイクはもうひと回し行くよね、って(笑)。

山下:あと付け加えるなら、スネアのことに触れていただけると。昨今なかなか使わないゲートリバーブというエフェクトの効果をふんだんに取り入れているので。吉田太郎さんという方に演奏していただいたんですけど、現場でも懐かしいね!って(笑)。

佐藤:ドラムのセットも、昔流行ったタムのシングルヘッド(裏面のヘッドを外した状態)にして頂いていて。ただこちらからはそうしてくださいとは言ってないんです(笑)。この方がいいんですよね?みたいな感じで、吉田氏が持ってきてくれて。

山下:自分もキャリアの中で、あそこまで極端にゲートリバーブをかけたことはなかったので、すごい楽しかったですね。エンジニアさんはもうずーっと「ゾンビランドサガ」をやってくださってる田中雄司さんなんですけど、こういうことでしょ?って、ギュン!バァァン!みたいな(笑)。

佐藤:(笑)そうね、昨今聞かない音だよね。


生楽器で録る・録らないの基準

ーさっき言ってた90年代デフォルメ感みたいなアプローチのひとつでもありますよね。

佐藤:そうですね。僕はそこまで考えてなかったんですけど、なんかここゲートリバーブかけたらいいんじゃない?って誰かが言い出して。その時何曲か同時にレコーディングしてたんですが、みんな盛り上がり始めたし、楽しそうだし「ま、いっか」と思いながら。

山下:(笑)

佐藤:音楽家たちのノリで進んでいくところはありましたよね。さっきも言った増崎さんのギターに関しても、別にそこまで盛らなくても、と思っていたんですけど、面白いから「ま、いっか」って(笑)。

ー基本、生楽器で録る感じなんですか?

佐藤:必要であれば録るし、必要なければ録らないしって感じですね。オープニング曲はドラムは録ってないですし。生のグルーヴの方が曲としていいかなと思うものに関しては生で録っていく感じですね。とりあえず録っとくかみたいなことはやってないので、必要なものを必要なだけ。だから全体的な話でいうと、昨今のアニメーション系の音楽事情から比べると、もしかしたら生の比率は少ないかもしれない。

ーそれは前作からですか?

佐藤:そうですね。前作も含めて、必要ないものは(生楽器で)録りたくないなという思いがあったので。予算的な話というよりは、楽曲的に。ベースとかも、生よりシンベ(シンセベース)の方がカッコいいなと思えばシンベのままだし、ドラムも、たとえば生っぽいグルーヴだったとしても、音像的に打ち込みの方がカッコいいなと思えば、打ち込みでいこうかって話もしますし。

ーそう考えるとこのエンディング曲は、曲がこういうアプローチを求めていからこそ、この空気感になったわけですね。

佐藤:エンディングとか挿入歌の「風の強い日は嫌いか?」とか、生で録らないとこういうことにはならないな、みたいなものに関しては、ドラムもベースもちゃんと生で録って、なんだったら管楽器とかも録りました。

山下:冒頭の歌い出しのリリィ(CV.田中美海)がハマったなって。

今福:そういう意味だと、第5話が特に印象的になっており、ちょうど本編がリリィのソロカットで終わって、そのまま歌入りでリリィソロのボーカルに繋がるので、エモさが倍増して聴ける構成になっていると思います。あと、田中(美海)さん演じるリリィの声質はある種の切なさを伴う時があるので、毎話の締め曲であるEDの歌い出しにはすごくマッチしていますよね。

佐藤:そうですね。

山下:確かに。なぜか懐かしく聴こえるっていう。

ー懐かしさっていう意味では、山下さんの原体験が反映されている曲でもあるわけだから、そこはうまくシンクロしてよかったですね。

山下:そうですね。

佐藤:やっぱこの曲は、海の近くで生きてきた人じゃないと書けないかなみたいな。

山下:そうだったの?(笑)。

佐藤:自分は海のない県で生まれ育ったので(笑)。








「ゾンビランドサガ リベンジ」EDより(©ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会)



「50と4つの忘れ物」について

ー「夢を手に、戻れる場所もない日々を」ともう一曲、山下さんが携わってる曲では、第3話の挿入歌の「50と4つの忘れ物」があります。これもまたすごくいい曲ですよね。

佐藤:オーダーでこういうことがやりたいんですというものがあって、多分他の人にその話をしたら想定内のものになってしまう気がして。でも多分山下は、そうは言ってもそのままにはしてこないだろうなって思ったので、そういう部分でのチョイスはあったかなと思います。これをどうしたらそのままにならないようにするか、というふうに思った時に、山下に書いて貰おうっていうのが僕の中で出てきますね。



山下:忘れてたけど、デモでお蔵入りした曲が一曲ありましたね。

佐藤:あったね!今、表に出てる曲はデモの2曲目なんですよ。初めに書いた曲は、もう少し暗くしたいということでお蔵になってしまいました。

山下:あーそうか、そういうことだったのか。

今福:その節は…(苦)ただ、いつか何かしらの形で出したい気持ち、あります。

一同:(笑)

ー「50と4つの忘れ物」は、河瀬さん(河瀬茉希:紺野純子役)の声が強力なアクセントになってると思いますけど、河瀬さんが歌うことを想定して書かれたんですか?

山下:もちろんそうなんですけど、ただ、ああいう歌になって戻ってくるとは想像してなかったんですよね。歌録りに関しては佐藤がディレクションをやっているので、録ったものを作家さんに送って、それに対して自分が仕上げをしていく形になるんですね。で、この曲はテンポのグリッドに対してすごく後ろの歌が届いたわけですよ。この仕事ってキャリアを積んでくると、送られてきたデータを聴けば、スタジオでこんなやり取りがあったんだろうなとか、こんな雰囲気だったんだろうなということがなんとなく音から伝わってくるものなんですけど、彼女の歌データに関しては、これ、一体何があってこうなったんだ?って。

佐藤:(笑)

山下:去年の最後の仕事納めが、送られてきた「50と4つの忘れ物」の歌データに合わせててアコギを弾く、だったんですよ。順番としては、もともとデモで弾いていたものに対して彼女が歌ってくれて、さらに仕上げで俺がもう一回アコギを弾き直す。で、これってこういうことだよなぁ?って思って弾いたら、佐藤から「違う、もっとねっとりした歌にしたい」と。つまり俺が歌に合わせてしまったので、そこは逆に合わせなくてよかったんですね。それを受けて、仕事納めの日を1日延ばして、翌日弾き直して……。

佐藤:そうね、歌にギターが合わせにいっちゃったからね。演奏に対して後ろめに歌ってるのが良かったから、仮で弾いていたギターと同じぐらいの感じでもう一回弾いて、って言って弾き直してもらいました。

今福:ヴォーカルのキーを調整したことも影響していますかね。

佐藤:レコーディング時に元々用意していた状態からキーが下がったこともあって、よりそういう感じになったのかなと思います。


純子の歌によって時代感がより浮き彫りになった

ー河瀬さんにはこの歌入れのときに何かアドバイスしたんですか?

佐藤:そんなに細かい話してないんですよね。まあこういうことでしょ、ぐらいの感じでまず歌ってもらって、そうそうそうそんな感じ、だったらもっとこうみたいな。説明が難しいですが(笑)

山下:そういう感じだったんだ。

佐藤:あとは声の暗さ明るさみたいなところだけ、どうしようねって現場で調整したぐらいですね。暗くなりすぎると、恨み節な曲になっちゃいそうで。歌詞がその雰囲気漂うけど、別に意味合い的にそこまで振り切ってそういう曲にしたいわけではないので、その辺の声色というか、どう歌うかみたいなところは、何回か河瀬さんとやりとりしながら決めていった感じですね。

ー山下さんは歌詞も書いてるんですよね。

山下:そうですね。

ー歌詞も具体的にオーダーがあったんでしょうか?

山下:確か、浮遊感漂う、すごい漠然としたことを歌いたいとうことで、何かにフォーカスしてとか、何か結論があってとかいうことではなくて、もやもやっと始まってもやもやっと終わるってオーダーでした。自分、曲をつくるとき形を大事にするんですよ(笑)。この曲に関しては武蔵小杉にあるモダンな喫茶店で歌詞を考えて。

ー劇中では屋根の上で弾き語りで歌うシーンでしたけど、歌詞の世界観も含めて昭和な感じがどことなく漂いますよね。

佐藤:ヴォーカル用のマイクやMIX時に使ってる機材とかは80年代でも使っていたであろう古い機材を使ってるんですけれども。多分曲のモチーフ自体は、80年代じゃないよね。

山下:曲のモチーフ?  そこはなんか、時代感というよりも普遍的なものの気がするけどな。

佐藤:トータルの雰囲気で、そういう雰囲気になればいいかな、くらいで。あのアコギであの進行で、ピアノがいてハーモニカがいてっていう形自体は、多分80年代って感じでもないんだよね。80年代だとそれこそ吉田拓郎さんとか、本当にアコギだけのフォークとかになってるんじゃないかな。

ーニューミュージックっぽい感じ?

佐藤:ニューミュージックっぽさはあるかもしれないですね、最終的にはアーティスト曲みたいな雰囲気になりました。あまり厳密に80年代感を出しても、それはそれで良くわかなくなってしまいそうですし、もともと作品がファンタジーだから、アニメーションと楽曲の全体からふわっと80年代感がしたらいいのかなと思っていました。

山下:強いて言うなら、サウンドとしてはさっきも言ったように普遍的なものを目指していて、純子の歌によって時代感がより浮き彫りになったのかなって気がしますね。


「ゾンビランドサガ」チームの現場

ー屋根の上で歌うのは最初から決まってたんですか?

佐藤:屋根でアコギっていうイメージはもともと言われてて、さきほども言ったように制作陣は世代も近いので、ああ、『時間ですよ』の浅田美代子さんですね、みたいな。だからどうしたって話でもないんですけど(笑)、コンテをいただく前からそういう話はしてましたね。

ーでもやっぱりアニメと合わせて聴くと、より感慨深いですね。

佐藤:そうですねえ。

山下:グッときましたよね。

佐藤:普通にいい曲だなって、しみじみと。ゾンビランドサガ関係なくこれを流したら、みんなどういう気持ちになるんだろうなって。こういう歌手がデビューしたんだ、くらいには捉えられるかなと思いますよ。






「ゾンビランドサガ リベンジ」第3話より(©ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会)

ー質問の方向性を変えますが、山下さんが作家としてこのゾンビランドサガに関わって、他の仕事より面白いなって思う部分ってどういうところなんですか?

山下:自分がこのキャリアをスタートした20年ぐらい前と近年とで比べた時に、当然ながらいろんなことが変化してきたなと思うんですけど、その中でも作り手としてすごく大きな変化に感じるのが、リスナーの方々がすごくポジティブにアニメ音楽を聴くようになったなって感じていて。素直にいい曲だ、素敵だって言ってくださるケースが、20年前と比べたら圧倒的に増えたなって印象があって。それは当然我々に限らず日本中の作り手の方たちが、あの手この手でいろんなことを頑張ってきている成果の一つの表れだとも思うんですけど。もしかしたらアニメの音楽っていうのは、いろんな試みがされてきて、一定の成熟期に入ったのかなとも思うんです。っていう大前提でこのゾンビランドサガという作品を見た時に、誤解を恐れず言うと、何をやっても受け入れてくれる感じがすごくある作品だなと。企画段階で、こんなことやっちゃおう、あんなことやっちゃおうぜって振り切った提案から始まって、ゾンビランドサガを見てくださってる方々も、それをすごくポジティブに楽しんでくださってるなって。いつも褒めてもらって嬉しいなって作品ですね(笑)。

今福:なるほど大きい視点ですね。もしかしたら、そういった受容性はゾンビランドサガ固有の要素から来ている部分もあるかもしれないと思ったりすることがあります。この作品においては、一人だけチェキ会に参加しないアイドルや歌わないアイドルがいて、それを周りも受け入れているといったシーンに象徴されるように「多様性を許容する」という要素が確かに描かれていたと思うのです。だからこそ、この作品を応援してくださる方々は、同様のマインドを内包していらっしゃるといったマッチングもあるのかなと。これは余談かつ個人的な意見なのですが、ちょうど前作の放送翌年に、多様性を尊重するような芸風の芸人さん等がブレイクしていたりするのを見て、今振り返ると、放送していた頃くらいから世の中的にそういう空気感が存在していて、それに後押しされた部分もあるかと思ったりすることもあります。

山下:そもそもこの作品自体、幸太郎がいろいろ振り回すっていう(笑)。

今福:あとは、音楽コンテンツにしても、感想やコメントをオープンかつカジュアルに発信できる場が年々増えていて、ネガティブだけではなくポジティブな意見を認知しやすい環境が整ってきているので、第三者のポジティブな意見にシンクロしやすくなってきている部分もある気がします。

山下:もしかしたら10〜20年前の方々はいろんな批判に屈さず、何くそという気持ちで作ってらっしゃったかもしれないし、俺が言ってることが必ずしも正しいわけじゃないんですけど、だからこそ次に大切なのは、何やっても褒めてもらえるってところにあぐらをかかないことかなって。もし仮に第三期があるのなら、あぐらをかかずに更なる挑戦をしなきゃいけないよなって思います。

佐藤:ちょっと話が戻るけど、20年前から比べると昨今は、言葉を選ばずに言うと、音楽レーベルとアニメレーベルの人たちが仲良いなって感じもしますよね。僕もこの業界に20数年いるんですけど、当時はこんなに仲良くなかったよなって印象がある。この業界に入った当初から、アニメーションの仕事もポップスの仕事も、それこそCMの仕事も全部並行してやっていたので、それをすごく感じますね。昔、例えば音楽レーベルの方に、アニメのレーベルからこういう話があるんだけど、このアーティストさんに歌ってもらえないか、って話をしたとき、なんでアニメの歌なんか歌わなきゃいけないんだ、みたいな話もあったみたいだし。それが今は、相互仲良くアニメーションありきのプロモーションをしたり、アーティスト側も、その作品で歌いたい!ってなったり。だから作り手側の環境もすごくいい状況になってるのかなとは思います。


先人たちが切り開いた新境地

ー確かに。今だと海外の人たちも、アニメ作品をきっかけに音楽自体も聴いてくれるようになったりとか。

佐藤:ほんとに一つの音楽コンテンツとして、いわゆるアニメーションファンだけではなくて一般層に、ちゃんとそういうフィールドがあるんだよってことが認知された感じはしますよね。先人たちが頑張ってくださったおかげです。

山下:いやほんとに、そうだと思う。

ーアニメと音楽レーベルとの話ということで、今福さんから見た印象はいかがでしょうか。

今福:僕は佐藤さんたちと比べると業界キャリアが浅いので、10年以上前の環境を経験していないのですが、少なくとも5、6年前あたりの段階ではすでに、現在に近い良好な関係性だった印象はあるんですよね。音楽市場が硬直し始める中で、世界的にも評価の高い日本産のアニメコンテンツに新たな突破口を見出したいという気概をもったレーベル関係者は多かったです。タイアップ一つとっても、付け焼刃でやるとアニメファンの方々の期待に反してしまうので、真摯に作品に寄り添って共に制作が出来ている印象はその時からありました。

山下:ほんとにそこかもね。それより前は、ポーズ的にやっているのを、視聴者の方々に見透かされていたのかもしれないよね。

今福:逆にその部分が甘かった時代というのは、どんな感じだったのだろう、と。

佐藤:いやあ、結構、ボロカス言われてたよ。

今福:佐藤さんは両方またがってるから、より広く見渡せますよね。

佐藤:業界内で言う音プロと言うタイアップを取りにいく仕事もしてたから。ひどいところだと、「アニメの歌なんて歌って、うちになんかメリットあんの?」みたいなに言われたりしてたよ。

山下:作家もそれこそ、アニメに深く関わるともう「アニメ作家」って。

今福:そういう色がつくことを、良しとしづらい時代だったんですね。

佐藤:だからアニメ関係の曲は書きたくない、みたいな人もいた。

山下:そうそう。自分はポップスの人間だ、とか。

佐藤:ありがたいことに社内にはそういう人はいなかったんですけど、やっぱ外にはそういう方もいらっしゃって。アニソンとか別に興味ないし、みたいな。


泥臭いスタンスで楽しむ

ーゾンビランドサガの音楽もある種、アニメの中だとセンセーショナルですよね。

佐藤:単純に、アニメーションの業界でいうところのオルタナティブな感じなのかなって思っていて。他の作品でお仕事していても、やっていること自体は僕的にはそんなに変わっている感じはしないんです。ただ、クオリティという意味ではなくて、メロディの方向性だったり楽曲の方向性みたいなものは、新しいかはさておき、他の音楽アニメと違うことはやってるな、という印象はあります。他の作品だと多分、この曲は通らないだろうな、とか(笑)。でもきっとそういう意味ですごくオルタナティブな作品なのかなって、音楽の面で言うとそこが一番、みんながひっかかってくれた要因なのかな。目新しさという意味ではないですけど、そういうところはあるのかなと思いますね。

今福:スコップミュージックさんはこの作品との相性が非常によいという側面もあると思います。ゾンビランドサガは、シナリオ制作時に議論する際などに実写的なモチーフを例に出したりするケースも多く、しかもそのモチーフもどちらかと言えばスタイリッシュよりは泥臭いものが多かったりして。そういったアニメっぽさとの絶妙な距離感だったり、泥臭さみたいなものは楽曲制作面にも求められるのですが、それがスコップさんが抱えてらっしゃる作家さんのキャリア的な部分や、もっと言えば人柄の部分含めて、見事にハマってる感じがします。この言葉にしづらい感覚は、スコップさんチームが勢ぞろいした、伊豆での楽曲ミックスの際にヒシヒシと感じました。

佐藤:やりましたね(笑)。

今福:あのときにスコップさんチームの精神を垣間見れましたね。

佐藤:最終のミックスの確認をするのに、一曲ずつ人を呼んで出たり入ったりするのが大変なので、地方の合宿できるスタジオにみんなをとりあえず呼んで、順番に確認していくと言うやり方をしたんですよ。で、全ての作業が終わったその場で、作家と僕らだけで打ち上がって。

今福:その時は作家さんたちが大勢いらっしゃって。

佐藤:前作で作品に参加した作曲家・作詞家の9割がそこにいましたね。17、8人集まって。

山下:パーカッション祭りをした時?

佐藤:そうそう。ただの酔っ払いの集まり(笑)。

山下:(その時の動画をスマホで見せながら)この人たちが曲を作ってます(笑)。

今福:クリエイターなので個性バラバラで剥き出しなはずなんですけど、なぜか統一されている感じというか、皆さん揃ってオープンマインドな感じがすごくて。

山下:(笑)

今福:それがスコップさんらしいというか、斜に構えてなくていいなと。

佐藤:うち、泥臭いよね。なんかそんな気がする。ポップスのお仕事をしていても、おしゃれな曲は作れないけど歌謡曲だったら任してください、みたいなスタンスは昔からちょっとあって。その泥臭さが割とゾンビランドサガでは、全体的に色濃く曲にも出てるのかなと思います。

今福:それが作品性にハマったって感じだと思います。

佐藤:ほんとに。土と汗の匂いがする。作家同士も仲良いと思うし。

山下:でそういうマインドが多分に作品にも出てますね。


「激昂サバイブ」について

ー挿入歌の話に戻すと、第4話に出てきた「激昂サバイブ」はこれまでになかったタイプのフランシュシュの曲で。

佐藤:きっと幸太郎が、前作の第2話のときに触発されて作っていた曲なんじゃないかなって勝手に想像してます(笑)。ラップ出来るのか!じゃあちょっと曲用意しとくかみたいな。



ー純子がエレクトリックギターを持つとは思いませんでしたけどね。そしてそれを破壊するっていう。第4話と第5話は音楽ものですよね。

佐藤:そうですね。音楽描写がすごく細かいですよね。それこそ「激昂サバイブ」を歌っている時とか、ステージの上にレクチファイア(アンプの名称:メサ・ブギー  レクチファイア)が1セット置いてあるじゃないですか。これ実際にレコーディングで使っていたものなんですよ。それもちゃんと資料として撮影していただいてますし、さらにサビ前でエフェクターを踏む描写があったり。でもギター叩きつけても、ああいう壊れ方はせんやろとは思いましたけど(笑)。あそこまで粉々になるってどういうことだみたいな(笑)。あんな壊れ方するならたぶん、ステージの床がやばい(笑)。




「ゾンビランドサガ リベンジ」第4話より(©ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会)

今福:借金が増えてしまう可能性がありますね(笑)。第4話の音楽描写への向き合いということでいうと、「激昂サバイブ」のモーションキャプチャーの現場にも垣間見ることができまして。元々、ギターの細かいストロークは画面上に反映されづらいので、歌ってる全体の立ち姿や揺れ方を優先で撮れればよいという前提だったのですが、純子役にはちゃんとギタリストの方をアサインして、しかも見事に演奏を完コピしてきてくれて。それが実際に画面でどこまで表現できるかは置いておいて、やれることは全部やっていこうというゾンビランドサガのチーム感みたいなものを感じる一幕でした。

佐藤:実際レコーディングで演奏していただいた菰口雄矢さんに、レコーディングが終わった後にその場で1曲を通して純子が演奏するであろう部分のギターのトラックを作って、そのギタートラックを実際に演奏している動画を資料用に撮影した後に、さらにモーション用のモデルのギタリストがそれを完コピしながらという2段構えでしたね。なので足の動きを含めて、動きがとても細かいんですよね。


「ゾンビランドサガ リベンジ」第4話より(©ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会)

ー細かいからこそ、リアリティが増しますよね。

佐藤:音楽劇としてここまで細かく描写するのって、あまり体験したことがないので。凄いなと思います。

今福:他にも、例えば「目覚めRETURNER(Electric Returner Type”R”)」のシーンとか、オケが変わってしまうことなど、どうやったらありえるのか?というのを佐藤さんとも相談しながら、壊したギター周りのどこかからPAの方に電気が走って、そっちが故障しているというカットを追加してもらったりして、実はかなりファンタジーに見えるシーンの中でも、音楽劇として一応の辻褄合わせには気を配ったりしています。




「ゾンビランドサガ リベンジ」第4話より(©ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会)

山下:ちょっと話が前後しますけど、「50と4つの忘れ物」で純子が弾き語りしてる時の運指は、俺の運指なんですよ。あらゆる資料をこっちからも出すんですけど、ギターのフォルムを正確に見たいから、実際に使用しているギターのアップの写真をくださいとか、弾いている運指を見たいので手元アップの動画をくださいってことがあって。凄いなと思いますね。

佐藤:第4話と第5話が今までで一番音楽劇してるかもしれませんね。前作の第2話に続いて細かい描写が満載って感じですね(笑)。ただ、一個あるとしたら、第4話のキャビネットのマイク、もう1本くらい追加で立ててもいいかな。

一同:(笑)


リリィのスキャット

ーあと、第5話のリリィのスキャット(「リトルパラッポ」)も素晴らしいですよね。

佐藤:凄いですよね。多分あれ一回聴いただけでは凄いかどうかすらよくわからないと思いますよ。もしかしたら一回見ただけだと、あれ?ってなって終わるかもしれなくて。



今福:今、何が起きたの?みたいな。

佐藤:でも何回か見てると、あれ? これ、凄いんじゃないかみたいな(笑)。あまりにもさらっといくので。で、リリィは笑顔でがっちり踊りながらやるじゃないですか。それも相まって、一回だと凄さは伝わらないかもしれないです。あとライトくん(大空ライト)の歌の感じもよかった。ボーイソプラノができる男の子をブッキングしてほしいって相談をしたら、いわゆる本職系の合唱団に所属してるようタイプじゃない人を見つけてきて。その感じがちょうど生々しくかったんです。あそこで例えばウィーン少年合唱団です、みたいな子が歌っていたら、リアルじゃないというか。なので演者の方みんなに「あれ、これって高山さん(高山みなみ:大空ライト役)が歌ってるんですか?」って聞かれて。それだけ喋ってる感じと歌ってる感じが地続きに聞こえるんですよね。


「ゾンビランドサガ リベンジ」第5話より(©ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会)

ー高山さんじゃないんですね!

佐藤:これが本職のボーイソプラノの子だったら、違う人が歌ってるなってなり過ぎてしまったかもと思う。

今福:計算してたってことにしておいてください。

一同:(笑)

佐藤:そういえば前作と比べて、幸太郎が書いていない曲が増えてる。

今福:第4話の「50と4つの忘れ物」もそうですし、第5話の「命」もなので……。

佐藤:必然的に「リトルパラッポ」もそうだよね。幸太郎ノータッチ。


「ゾンビランドサガ リベンジ」第5話より(©ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会)

ーこれは幸太郎が作ってないなとか、作曲時はなんとなく意識されてるんですか?

佐藤:なんとなくですけどね。それよりも「リトルパラッポ」に関しては、オケも少し生々しくというか、良い意味であんまり洗練されたオケにしていないんです。あまりにもかっこよかったらおかしいじゃんってトラック作ってる木下(智哉)と話して。全国区のテレビかもしれないけど、ミュージシャンたちがオーディション番組のバックバンドとして、いきなりアドリブでせーので弾くので、皆プロだとは思いますが。だから洗練されすぎてはいけないなと思ったので、オケもかっこよすぎず、ちょうどいい塩梅になるように作ったんです。

ーなるほど。まさに音楽制作の「現場」の臨場感が伝わってくるエピソードの数々で、今回も貴重なインタビューありがとうございました。第7話以降も楽しみにしてます!

●「ゾンビランドサガ リベンジ」ED・第3話・第4話・第5話のカットを見る

<INFORMATION>

オリジナルTVアニメ「ゾンビランドサガ リベンジ」

[放送]
TOKYO MX:毎週木曜24:00~
サンテレビ:毎週木曜24:30~
TVQ九州放送:毎週金曜25:58~
サガテレビ:毎週金曜24:55~
BS11:毎週木曜24:30~
AT-X:毎週木曜23:30~
リピート放送:毎週月曜11:30~/毎週水曜17:30~

[配信]
Amazon Prime Video:
毎週木曜23:15~
ABEMA:毎週木曜23:30~
※地上波先行・独占配信

▼Amazon Prime Videoにて第6話まで配信中!
https://www.amazon.co.jp/dp/B091KPNQ6D

▼ABEMAにて第6話まで見逃し配信中!
https://abema.tv/video/episode/481-6_s2_p6

[スタッフ]
原作:広報広聴課ゾンビ係
監督:境 宗久
シリーズ構成:村越 繋
キャラクターデザイン:深川可純
総作画監督:崔 ふみひで・桑原 幹根
美術監督:大西達朗
色彩設計:佐々木 梓
3DCGディレクター:黒岩あい
撮影監督:三舟桃子
編集:後藤正浩
音楽:高梨康治・Funta7
主題歌・挿入歌:SCOOP MUSIC
音楽制作:エイベックス・ピクチャーズ
音響監督:境 宗久
音響制作:dugout
制作:MAPPA
製作:ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会

[キャスト]
巽 幸太郎:宮野真守
源 さくら:本渡 楓
二階堂サキ:田野アサミ
水野 愛:種田梨沙
紺野純子:河瀬茉希 
ゆうぎり:衣川里佳
星川リリィ:田中美海
山田たえ:三石琴乃 
警察官A:吉野裕行
ロメロ:高戸靖広

▼楽曲先行配信中!
【OPテーマ】大河よ共に泣いてくれ(TV size)
https://avex.lnk.to/Taigayotomoninaitekure_TVsize

▼EDテーマ「夢を手に、戻れる場所もない日々を(TV size)」
https://avex.lnk.to/Yumewotenimodorerubashomonaihibiwo_TVsize

【第1話挿入歌】REVENGE(#1 TV size)
https://avex.lnk.to/REVENGE_01TVsize

【第2話挿入歌】風の強い日は嫌いか? FranChouChou cover(TV size)
https://avex.lnk.to/Kazenotsuyoihihakiraika_FranChouChou_cover_TVsize

▼第3話挿入歌「50と4つの忘れ物(TV size)」
https://avex.lnk.to/50to4tsunowasuremono_TVsize

▼第4話挿入歌「激昂サバイブ(TV size)」
https://avex.lnk.to/Gekkou_Survive_TVsize

▼第4話挿入歌「目覚めRETURNER (Electric Returner Type "R") TV size」
https://avex.lnk.to/Mezame_RETURNER_Electric_Returner_Type_R_TVsize



「大河よ共に泣いてくれ/Nope!!!!!」
アーティスト:フランシュシュ/アイアンフリル
発売中
1,320円(税込)
CD

収録内容:
Tr.1 大河よ共に泣いてくれ [歌唱:フランシュシュ]
Tr.2 Nope!!!!! [歌唱:アイアンフリル]
Tr.3 大河よ共に泣いてくれ(Instrumental)
Tr.4 Nope!!!!!(Instrumental)


「夢を手に、戻れる場所もない日々を/風の強い日は嫌いか?」
アーティスト:フランシュシュ/ホワイト竜
発売中
1,320円(税込)
CD

収録内容:
Tr.1 夢を手に、戻れる場所もない日々を [歌唱:フランシュシュ]
Tr.2 風の強い日は嫌いか? [歌唱:ホワイト竜]
Tr.3 夢を手に、戻れる場所もない日々を(Instrumental)
Tr.4 風の強い日は嫌いか?(Instrumental)


『ゾンビランドサガLIVE~フランシュシュ LIVE OF THE DEAD ”R”~』
5月28日(金)発売
8,800円(税込)
Blu-ray

収録内容:
2月27日に開催された「ゾンビランドサガLIVE~フランシュシュ LIVE OF THE DEAD ”R”~」のライブ本編収録(収録時間118分)
特典映像:
THE DAY OF LIVE OF THE DEAD "R"~メイキング&ライブ後コメント~(収録時間32分)
THE ROAD OF LIVE OF THE DEAD "R"~キャストインタビュー~(収録時間48分)
初回仕様:スリーブ


『ゾンビランドサガ リベンジ SAGA.1』
6月25日(金)
15,400円(税込)
 Blu-ray Disc+CD+CD-ROM
本編DISC収録内容:
第1~4話 収録
特典映像:
・第1話ノンクレジットオープニング&エンディング版
・第2話・第4話ノンクレジットエンディング版
・ノンクレジットエンディング
・滾りまくりインタビュー完全版
キャスト陣が「ゾンビランドサガ リベンジ」にかける想いを熱く語る「滾りまくりPV」を完全版として、ロングバージョンで収録。
初回仕様:
キャラクターデザイン深川可純描き下ろし三方背ケース

初回特典(封入):
・特製ブックレット

永続特典(CD):
1.イカの魂無駄にはしない~小島食品工場株式会社社歌~ / 小島食品工場スタッフ
2.REVENGE / フランシュシュ
3.風の強い日は嫌いか? FranChouChou cover / フランシュシュ
4.目覚めRETURNER(3号ソロver.) / フランシュシュ3号
5.50と4つの忘れ物 / 紺野純子
6.激昂サバイブ / フランシュシュ
7.目覚めRETURNER (Electric Returner Type "R" / フランシュシュ
※Tr.6激昂サバイブの歌唱キャラクターは、源さくら、二階堂サキ、紺野純子、ゆうぎり、星川リリィとなります。
永続特典(CD-ROM):
・ラジオ「ホワイト竜の佐賀がサガであるために」
・ラジオ「フランシュシュ2号の佐賀がサガであるために From ゾンビランドサガ リベンジ」
※商品の収録内容、仕様、特典は予告なく変更になる場合がございます。ご了承下さい。
※ジャケットデザイン前のため、実際のジャケットとは異なります。

https://zombielandsaga.com/
https://twitter.com/zombielandsaga



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