テレビ収録で連続殺人を「自白」してしまった米富豪、仮釈放なしの終身刑に
Rolling Stone Japan / 2021年10月19日 6時45分
2021年8月9日、米カリフォルニア州イングルウッドで行われた公判で、証言台に立つロバート・ダースト被告(Photo by Gary Coronado/Los Angeles Times/Pool/AP)
米ニューヨークの著名な不動産王の息子、ロバート・ダースト被告が現地時間14日、20年以上前に親友のスーザン・バーマンさんを殺害した罪で、仮釈放なしの終身刑を言い渡された。
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「十分な証拠、まさに抗しがたい有罪の証拠があります」。ロサンゼルス郡上位裁判所のマーク・ウィンダム判事が午後の審理でこう述べる間、衰弱した様子の78歳のダースト被告は車いすに身をうずめ、背もたれに頭を預けていた。
「スーザン・バーマンさんは非凡な人物でした。個人的にお見知りおきしておきたかったと思うほどです」とウィンダム判事は言い、高層ビル帝国の御曹司の手で彼女が死んだことを「恐ろしく、憂慮すべき罪」と呼んだ。
先月ダースト被告は第1級殺人罪で有罪評決を受けた。検察は1982年、キャシーの愛称で親しまれていた最初の妻キャスリーン・マコーマックさんの謎の失踪にまで遡る壮大な説を展開。結婚生活が上手くいかなくなったためにダースト被告がキャシーさんを殺害し、バーマンさんに証拠隠蔽を手伝わせて容疑をかわした、と主張した。2000年、キャシーさん失踪事件に再び捜査の手が伸びると、追い詰められたと感じたダースト被告は口封じのために、ロサンゼルスにあるバーマンさんのバンガローで至近距離から彼女を射殺した、と検察は述べた。
「ボブは極度の社会病質者でナルシストです」。バーマンさんの義理の息子に当たるサレブ・カウフマンさんは14日の被害者陳述でこう述べ、彼女が殺害された後は「日々魂をさいなまれ、胸が張り裂けそうな体験」だったと言った。
「あなたは、ずっと自分を愛してくれた唯一の人間を殺したんです」と、カウフマンさんはダースト被告に直接語りかけた。「あなたが何らかの贖罪の希望を見出せるとすれば、(マコーマック家に)キャシーさんの居所を教えることです」
同じ日、ロサンゼルス郡検事局のジョン・ルーウィン検事補もカウフマンさんに加勢し、ダースト被告にキャシーさん殺害を自供して、いまだ見つかっていない遺体のありかを白状するよう要請した。ダースト被告は陳述することを拒否した。「我々は控訴する方針です」と、主任弁護士のディック・デグラン氏は法廷で述べた。
審理の後キャシーさんの兄ジム・マコーマックさんに電話で接触したところ、彼はダースト被告が口をつぐんでも驚かない、とローリングストーン誌に語った。「ボブをよく知っています。彼はここぞと言うタイミングを狙ってくるつもりです。今日はそのタイミングではなかったんです」と彼は言った。「ですが今でも、彼に良心が芽生えることを願っています。今も善い行いができるはずです。スーザンや彼女の遺族、友人には正義が果たされました。今回の有罪判決はキャシーにとってもささやかな正義の一歩ですが、ウェストチェスター郡にはひるむことなく、勇気を振り絞っていただきたいですね。この裁判と判決が終わった今、次の焦点はウェストチェスター郡です」。今度はキャシーさん殺害でダースト被告を起訴し、ニューヨーク州で裁きにかけてほしい、と語った。
2001年に隣人男性を殺害しバラバラにして遺棄
ロサンゼルス郡の陪審員は4か月にわたって70人以上の証人から証言を聞き、第1級殺人罪でダースト被告に有罪を言い渡した。また「身を潜めていた」被告が別の犯罪、すなわちキャシーさん失踪事件での目撃者を消すためにバーマンさんを殺害したという容疑でも有罪とした。
「私も、私のかわいい息子も、非凡で聡明で忘れがたい人を奪われました。彼女は55歳で無残にも命を奪われました」。バーマンさんの従姉妹デニ・マーカスさんは14日に法廷でこう語り、バーマンさんは「まぎれもなく人々の記憶に残る」「かけがえのない人」だと言った。
バーマンさん殺害で何年も起訴を逃れていたダースト被告だったが、2015年に彼の半生を描いたHBOのドキュメンタリー『The Jinx: The Life and Deaths of Robert Durst』がきっかけで逮捕された。番組の最終回で衝撃の「自白」が流された。自身が犯人であるという疑惑を否定していたダースト被告だが、トイレで「俺が何をしたかって? 全員殺したんだよ」と独り言をつぶやいたのだ。その後、ともすればお蔵入りになっていた事件をロサンゼルス当局が再捜査することになった。ダースト被告は逃亡したが、ルイジアナ州でバーマンさん殺害容疑により逮捕された。警察は所持品の中から拳銃1丁と現金4万5000ドル、そして散切り頭の白髪のカツラがついたゴム製マスクを発見した。
2001年、ダースト被告はガルベストンで隣人のモーリス・ブラックさんを射殺し、死体をバラバラにした。彼は銃をめぐってブラックさんともみ合いになり、自己防衛で射殺したと主張し、無罪を言い渡された。ダースト被告の供述によれば、酒でパニック状態になったため、ブラックさんの遺体を切断して遺体の一部をガルベストン湾に捨てたという。バーマンさん殺害の公判では、証拠から排除するよう求める被告弁護士の訴えもむなしく、陪審員は切断された遺体のおぞましい写真を目にした。ルーウィン検事補によれば、バーマンさん殺害後逃亡していた被告の正体をブラックさんが突き止めたため、ダースト被告は彼を殺害したという。
弁護側の証人としてダースト被告は延々とおかしな証言を展開し、遺書を書いたことは認めたが、バーマンさんの遺体は偶然発見しただけで真犯人はわからない、と主張した。陪審はこの話を取り合わず、わずか7時間ほどで全員一致の有罪評決に達した。
ウィンダム判事はダースト被告の証言を「きわめて信じがたく、有罪を示すもの」と一蹴した。キャシーさんの親族は陳述を要請されていなかったが、判事は遺族の「心痛」が理解できると述べ、遺族に「平穏」を祈願して量刑審理を終えた。
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