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清春が語る、ライブエンタメの当事者として感じた違和感

Rolling Stone Japan / 2021年10月24日 18時0分

清春

五里霧中のコロナ禍で、新しいパフォーマンス表現の方法を開拓、継続してきた清春。ライブハウス支援のためのトークイベントに積極的に出演したり、配信ライブシリーズ「A NEW MY TERRITORY」では徹底してライブハウスでの収録にこだわり、自身のためだけでなく、音楽業界全体のための活動も目立つ。そんな清春がデジタルシングル3曲を連続リリースする。

【画像】清春がライブハウスのフロアまでを全面使用したライブを敢行(写真6点)

―今回はデジタルシングル3曲を定期的にリリースされるんですね。

そうですね。本当はまだ僕らのファンの世代的にはCDのほうがいいと思うんだけど。アルバムは今のところデジタルリリースする気はないんですが、去年3月にアルバム『JAPANESE MENU/DISTORTION 10』を出して以来、音源を出してないんですね。「A NEW MY TERRITORY」(毎月開催しているライブ音源ダウンロード付きの配信ライブ。以下「ANMT」 )では新曲を少しずつやっているけど、コロナ禍にたくさん曲が出来たので、まずはまだ披露していない「ガイア」という曲を1曲目に出しました。で、第2弾、第3弾とリリースしていく感じですね。2、3弾で出すのは、配信ライブすでに披露した曲です。

―10月16日に配信された「ガイア」は昨年出した前作『JAPANESE MENU』以降、初の音源になりますが、コロナ禍でライブが一時期止まっていた影響で『JAPANESE MENU』の曲はバンドでのライブ演奏はほとんどされていないですよね?

2~3回やったくらいですね。10月29日に恵比寿ガーデンホールでやる誕生日ライブでは久しぶりにDURANとKastuma(coldrain)で『JAPANESE MENU』の曲を演奏します。『JAPANESE MENU』のレコーディングでこだわった”ベースレス”でやります。やっと音源の形をなぞった演奏ができる感じですね。

―コロナ禍になってから清春さんは、現在も行っている「ANMT」の原型にあたる「TEST」というのを始めましたね。バンドではなくアコースティックの演奏でした。

世で言うところのアコースティック形態、演奏はもともと2008年くらいからやっていたんです。ただ、ウチが提示してるのはアコースティックではなく、ドラムなしの”リズムレス”。十分激しいけど、ドラムがいないことによって極論マイク無しでも歌がよく聴こえる状態に持っていける。この「TEST」をはじめた時期は、コロナ禍の初期で、ライブをやってもモッシュがダメとか、暴れるのはダメとかそういう情報が入ってきた時だったんですよね。

―ええ。

その頃に配信ライブの提案があって、ストリーミングで無観客でライブするって何だろう?って考えて生まれたのが「TEST」であり、それを進化させた現在の「ANMT」です。まずは配信ライブをどうやるかってことを一番考えましたね。配信で、歌うこと/プレイすることをどうやって進化させられるかを考えました。で、その時に『JAPANEASE MENU』がいい意味でヒントになったんです。このアルバムのアートワークは、アートディレクターの笠谷圭見さんにディレクションしてもらって、やまなみ工房というアウトサイダーアートを描いてる方々の作品を使ったんです。で、その段階でライブのヴィジョンがあったんですよ。コロナ禍になる前からすでに、僕らの中では『JAPANESE MENU』のファイナルはアートを全面に出した”魅せる・見せる”ライブを考えてたんです。演劇のような世界観で、笠谷さんに協力してもらって、演劇ホールのようなところでやるっていうヴィジョンがあって。それは有観客ではできない感じのもので、逆にお客さんがそこにいちゃまずいかな? どうしよう? くらいの気持ちでいたんです。

―「TEST」から始まり現在「ANMT」で繰り広げられているシアトリカルなステージはコロナ禍前から構想としてあったんですね。

そうです。ステージ上に楽器のメンバーさえ存在しないっていう。そんな構想がぼんやりとありました。楽器は楽屋でオンラインで弾いてもらって、やまなみ工房のアートワークがメインにあって、僕もやまなみ工房の作品の中のオブジェの一部になるみたいな感じ。そういうライブ……ライブというか出し物をやりたいなぁなんて話をしていたんです。その時はお客さん入れていいのかな?って感じでした。観客席の方にまでアートワークがあるようなイメージだったので。だから、その考えも「ANMT」に少し生きたのかもしれない。そんな考えがある中で最初の配信をやったら割と配信が良くて。だから、ライブDVDのお客さんいないバージョンみたいな配信ではなくて、”出し物””見せ物”としての配信をやって、それを同時にレコーディングするアイデアはもともとあったんです。『JAPANESE MENU』のツアーっていうよりも、そっちの方を考えてましたね。


「お金を払って観に来ている人達が、あとから責任を背負わされる」

―そうして誕生した「ANMT」の詳細は過去のインタビューとライブレポートで書いているのでここでは割愛します。でも『JAPANEASE MENU』のライブでやろうとしていたことが、コロナ禍の配信の予兆になっていたとうのは驚きです。今回のシングルも何かの予兆になったりする感じはありますか?

いや、そこまでのものはない。テーマは今回もベースレスってことぐらいで、あまりないんですよ。歌詞も『JAPANESE MENU』にしても3発のシングルにしても、世の中のことを思って歌ってる曲もあるし、自分の人生について歌ってる曲もあるし、誰かに対して歌う曲もある。でもそんなに大きなテーマはなくて。ほぼほぼデモテープの段階で歌詞の世界観は決まっているので。シンプルだけど、刹那感プラス切ない感じ。歌詞はすごく自信がある部分なんですけど、いつもあまりそこに重点を置いてません。やっぱヴォーカルダビングに一番重点を置いていますかね。

ー「ガイア」はプロデュースとギターをソロの初期に一緒にやっていた佐藤タイジさんが担当してますね。久しぶりのタイジさんとのコラボレーションはどうでした? 確かソロの1stアルバム以来ですか?

いや、タイジ君は2ndアルバムまでやってくれて、レコーディングはそれ以来でした。当時は当時でそこそこやっていましたけど、僕的には今の方が圧倒的に自分に自信がある。もちろんタイジ君は昔からギターすごくて、年々もっともっとすごくなっているんだけど、成長の度合いで言えば僕のほうがすごい変われたと思ってたので、ぜひタイジ君に今の僕の歌を聴いてほしいっていう感じもあって。”よし、頑張るぞ!”というよりは、”どうかな? 前はこんな風に歌えなかった気がします”みたいな感じですね。

―「ガイア」をライブでタイジさんと一緒にやるチャンスはありますかね?

今のところ考えてないですけど、コロナが明けたら。観客を100%入れられるようになって、大声も出してOKになってからの方がいいと思います。せっかくゲストが来たのにシーンとしているのも嫌なので。

―さて、そのポストコロナにおける音楽活動について聞かせてください。先日、清春さんがやっているニコニコ生放送『BABYLON CHANNEL』で「『ANMT』の次のことを考えている」と言っていましたが、次のステップはどんなことを構想しているのでしょうか?

コロナに関して日本も日々様子は変わっていくけど、諸外国のように簡単にはいろいろなことが戻っていかないという話を耳にします。規制が緩和されて、これからライブもやっていくんでしょうけど、この1年半の反省点として、僕はまずファンの人たちの中での状況の差をなくしたいと考えています。まずはそこから修正していきたい。そもそも論から考え直さないと、と思っています。つまり、僕らアーティストはファンの人達にとってどういう存在なのか、逆にファンの人はどういう存在なのかとか、ライブに来る人への世の中の人たちの心情からまずは戻していかないとダメだと思うんです。中には、「規制が緩和されたんだから、また早くライブやってよ」って言う人もいるとは思います。けど逆にこれからリセットしたいと思ってるんです。これがたぶん僕がやってきた1年半と、なんとか早くライブを元に戻したいって気持ちをメインにやってきた人との違いかなと思います。

―具体的に言うと?

この一年半、いったんすべてのライブが止まった後に規制ライブが再開しているじゃないですか。実際に来て「生の音が聴けてよかった」って言う人もいると思う。でも、東京だけに人がいるわけじゃなくて、地方の人はもっとコロナに対して恐れていたりもあるし、ワクチンが普及しても心情としてはなかなか戻りづらいと思うんですよ。なぜそうなったかというと、政府のやり方が分かりづらいというのもあるんですけど、まぁ僕も含めてですが、アーティストの皆さんが無理やりフェスやライブを続けてやったことへのデメリットだと僕は思っているんですよね。今「このフェスはいいけど、このフェスはダメだった」とかっていう意見がある。だけど営利目的のフェスに関して言えば、僕はやったこと自体が全部悪いでしょって思っています。フェスが好きなのはわかるけど、コロナの初期に言っていたライブハウスの救済の話なんか、もうどこかに行ってしまいましたよね。個人経営のライブハウスはまだ毎月毎月苦しいままです。そう考えると、これ絶対に間違ってるなと思ってて。もし救う気持ちがあるならボトムから救い続けないとダメだと思うんです。日本の音楽団体のガイドラインのあり方もどうかなって思います。見落とされてる人達が沢山いる。僕は「ANMT」の配信をライブハウスからやっていますけど、僕のやっている規模だと一握りのライブハウスの数日分しか救えてないじゃないですか。

―ええ。

確かにフェスやり続けるのも大事ですけど、今にも崩壊してしまう人がたくさんいるわけなので。ファンの方々の側も「去年はフェスに行けなかったので、今年は行きたいです」みたいな考え方ってどうかなって思います。例えばライブに関しても、来てくれるのはファンの皆さんではあるけど、”お客さん”なんですよ。いつも言ってるんですけど、お金を払って観に来てる。けど、今ってお金を払って観に来ている人達が、あとから責任を背負わされるんですよね。本来、チケット代以上のものをお見せできれば、そこで関係性は終わっていたんですけど、余計な責任が観客に背負わされるというか。

TVとかでも、ライブの帰り道に観客がコンビニの前に溜まって飲んでいます、みたいな報道が多かったですよね。ああいうのもなぜ起こるかっていうと、ライブをやるからじゃないですか。もちろん、家で配信を観てもダイナミズムがないというのはわかります。けど、それはアーティストサイドが違う方向で解決する方法を考えないといけない。「ライブはやっているけど、外出はしていない」っていう状況を作らないといけなかったのかなっていう気がしているんです。僕もライブを何回かやりましたけど、感染した人が絶対いるはずなんですよ。でも、来た人はアーティストサイドに気を遣って感染したとは言わない。で、そういうのがアーティストを守るみたいにSNSで言われているけど、僕はチケットを買うことでそれは終わってると思う。その対価として僕らがいい演奏、いいプレイをして、いつもとは違う、また普段の生活を頑張れるような別世界を見せるっていうのが本来の役割でしたよね。

―はい。本来それでチャラなんですよね。

だけど、この2年近くってチケットを買った人にだけそれ以降の役割があるんです。で、アーティストサイドには大してないんです。だから変だなってずっと思ってて。


「イベントをやるのは主催者の勝手、被害者は観客」

―確かに。お金を払う方に責任が回ってくる……その違和感はわかります。

そして、「ライブに行きたい」「あの場をなくしたくない」ってファンの人達も思うだろうから、今度はファン同士が会場で色々注意し合うじゃないですか。例えば、声を出す人がいると、その人に向かって「それやると清春さんのライブの場所を守れないよ」って。それって、本来はお金払ってるお客さんがやらなくていいことなんです。考えなくていいと。それはすごく思ったかな。

―確かに。

洋服とか車とか、何かに置き換えるとすごくわかりやすいですよ。車を買った人が、買った以降にサービスを受けられないのは変です。普通は、「買った車が壊れました」ってディーラーに持って行ったら直してくれるじゃないですか。でも今のライブってアフターケアがないどころか、感染の審査をされるんです。そういう変さになぜ気づかないのかな。もちろん僕もライブは全力を尽くすんですよ。けど、これまではそれで”幸せになれた”ってだけで済んでたものが、済まなくなったのが日本のコロナですよね。僕にとってのコロナ問題はそこですかね。

―なるほど。実際、ライブをやれた、ライブが良かった以降の問題は誰もケアしていないですね。

現場ではその論争も起きてる。SNS上で「あの時、騒いだ子達、誰よ?」って書く人もいる一方で、言われた人はなんのこっちゃ?ってわざわざ書かないじゃないですか。で、どっちも間違っていないわけです。なぜならどっちもお金を払っているわけだから。よく言うんですけど、スニーカーを買って、勝手にリメイクして履くのもOKだし、そのまま履く人、どっちも正解なんです。買ってるから。だから僕は、音楽を消すなっていう以前に、チケットを買ってくれる、配信ライブを買ってくれる、グッズを買ってくれる人達がいてこその僕らであるということに立ち帰らないといけないと思っているんです。

―ええ。

今年のフェスでもそうでしたけど、感染対策を完璧にやっていること、国に対してこうなんですよってアピールしているけど、被害にあってるのは観客です。「(客数を)50%にしてやってるから儲からない」って言って、国に「補助金出してください」ってなってるけど、やるのは主催者の勝手なんですよ。フェスじゃなくても、僕のライブでも。そんな中でも来てくれてる人達や、今年は諦めた人達、もしくは50%だからチケット買いたかったけど買えなかった人達もいて、そこはどの会場でも境というか溝ができるんです。

―それがさっきもおっしゃっていた「ファンの人たちの中の差」ですね。確かに、いろんな意味で差とか、溝ができている。

だから、来た人達が楽しかっただけじゃダメじゃんって思うし。しかも、来た人達の中に気分悪い人もいたと思うんですよね。あれをやれ、これはやっちゃダメだって言われたら”チケット買って来てるんだけど”って思うのが普通です。どういうファンであれ、チケットを買ってるお客さんなんですよ。さすがに、ステージに上がり込んできて抱きつくみたいなマナー違反はダメですけど、それぞれみんなモラルがあって、それなりに守っているのに、そこで色々言われちゃうと”チケット買ってるのにな”ってなるんじゃないかな。

―その溝、違和感をどうやって埋めていけばいいんでしょうね。清春さんが一人で考えることじゃないとは思いますが。

それはみんなが気付かなきゃいけなくて。サプライヤーがもっと考えないといけないですよね。”音楽を無くしてはいけない”みたいなことだけが先行しちゃっていると、この国ではあまり力がないと思いますね。

―確かに音楽を止めるなっていうのは、やっている側のある意味エゴだと言えなくもないですもんね。

うん、自己満足です。もちろんそのアーティストのファンの人達には申し訳ないけど。僕は今アーティストとして言ってるんじゃなくて、普通に大人として言うと、関係性としておかしいです。コロナ禍でも全員が来れたらいいですよ。来れない人達がいるし、来れてた人も、やっとの思いで来た人達なんですよね。そこまでまたライブが終わった後も「じゃあ何番から何番の人、帰ってください」とか言われるわけじゃないですか。なんかお客さんに失礼じゃない?って思います。別に終電の時間を見て、混雑をずらしてそれぞれ帰ればいいわけなんで。


「国に対してどうこう言う前に、現場に意見を言うべき」

―そこは自分の首を絞めるから、アーティストは思っていても言わないようにしてのかもしれないです。

僕はイベンターにも言ってたんですよね。なぜ大きな会場から先に目を向けるわけ?って。気づく人がいても、言える人がいないんでしょ。僕の場合、活動の形態上、言える立場にあるので言っちゃうけど。でも、アーティストが思ってても言わない。当然、事務所の人達も言わせない。そういう図式なんでしょうね。

―それは正直あると思います。

国に対してどうこうなんていうのは、ミュージシャンじゃなくてもみんな意見あるわけだけど、もうひとつ言うべきは現場のことなんじゃないんじゃないかな。

―ミュージシャンが歌い続けてこられたのは、ファンがいるからであって……。

あと、自分達はCDやグッズとかを売ればいいけど、ライブをやらないとご存じの通り、楽器スタッフや機材の輸送業者や各地のイベンターとかが困る。この人達が食っていけなくなるって主張する人達がいっぱいいるんですけど、だったら配信でもいいんですよ。イベンターは他の興行もあるし、そもそもお金を持ってる会社なら今すぐ助けなくていいし。誰を助けるか、先に大変な人を助けるってことを考えれば、ライブはリアルじゃない方がいいんです。そんなの当たり前のことなんですよ。お客さんが入って、お客さんのチケット代から数パーセント僕ら収益があって、その中から楽器スタッフや輸送業者のギャラを払ってるわけなので。お客さんをまともに入れられないなら、その人たちに払えないのは想像できるでしょ? だったら無観客の方がいい。お客さんには配信チケット代を払ってもらう。会場に来ないから危険を犯さない、クラスターも出ない。スタッフのギャラも会場にも満額払えるっていうことを、なんでもっとでかいアーティスト達がやらないのかっていう感じはありますね。

―確かに。実際、清春さんは、ライブハウスで行う配信のみのライブを何度もやっていますが、そういう理由だったんですね。お客さんの差をなくす、苦しんでいる小さいところから助けるっていう。

ツアーとかは、本当は最後に戻って来なきゃいけないものなんじゃないかって思いますね。僕らがやっているのは音楽を一番大事に思ってくれる人がたくさんいてくれるからこそできる仕事なんですけど、僕らだけが”プレイしたい”じゃダメなんですよ。全部が復旧されて、どこに行くにも不自由がなくなって初めて、衣食住の後に音楽がくるんじゃない? そう言うと、美空ひばりさんが戦時中に歌を歌って、心が癒されたって言うのが出てきますけど、それってほぼお金を取ってないわけです。震災の時みたいに、被災地に行って歌を歌って癒すのとは、今回は違うわけですよ。ボランティアとも違ってちゃんとお金を取ってるわけなので。

―そうですね。音楽ビジネスの話ですもんね。

中には座席数を半分にした分、チケット代を倍取るのもいる。それ全然おかしいんじゃない?って俺は思います。”今回はしょうがない””今回っていつまでなの?”って思うし。僕の配信ライブの値段は、その価値があると思って設定しています。リアルタイムで視聴した後にダウンロードもできるし。でも、価値がないものに倍の値段を払うとか、来ていないお客さんの分まで払うっていう発想はあんま正しくはないですよ。ビジネスマンとしては正しい……というか損得勘定としては正しいですけど。

―音楽が果たしてそれでやり続けていいのか?ってことですよね。

逆にチケット代を安くするとかそういう問題でもないんですよ。高くしようが安くしようが別にいいんです。プレイに価値のないものに倍払うのはおかしいし、価値があるものだったら払ってもいい。その価値はファンの人が決めるので、世の中は関係ない。だから僕は配信に関しては精度をあげていきたいんですね。いつ見てもおかしくないものにしたいし、以前に見てくれた人のために、次もより良いものにしたいと思う。それを忘れないでいようと思います。自分達が楽になりたいからライブしたいだけなのは良くない。

―厳しいけど鋭い指摘だと思います。

ライブをやることで幸せになる人はいますよ。けど、ウチの場合はそこでできてしまっている差や溝をまず正したい。別にライブをやりたくないわけじゃない。本当は普通にライブをやりたいんです。だけど、まずはその差や溝をなくさなきゃダメだとは思う。シンプルにライブに来たい人は全員が来れるようにしないと。ライブ配信とリアルライブを比べたら、そりゃリアルの方がリアルに決まってますよ。でも別種類の表現を追求し続けていくのは楽しくもある。これを昇華させないと、なんのためにこれまでコロナ禍で表現活動していしていたのか分からない。

―なるほど。

たぶん僕が言ってること理解できない人がいっぱいいると思う。やってない人には全く分からない。もちろん僕が間違ってるかもしれないし、この期間にリアルなライブに行って感動した人は”そうじゃない”って思うでしょうね。でも僕は自分がファンの側だったら、コロナにかからないように対策してほしいというより、”お金を払ったのになんでこんな思いをするんだ?”っていう方に気が行きますけどね。

―買ってくれている側に負担を押しつけてしまうような関係性って、確かにいびつですよね。なぜそのいびつが成立しちゃうんでしょうか?

それは、音楽に形がないからだと思います。物だったらそれは不良品で成立しない。別に反論を繰り出すわけじゃないけど、僕はこうだっていうだけであって。ライブをやっている人はやっている人で、ライブに行って幸せな気持ちになった人もたくさんいると思うから、いいと思うんです。僕も去年の頭ぐらいは「絶対に100%で普通にやる」って言い張ってたんですよ。それに対してマネージャーは「大丈夫ですかね?」みたいな感じだったんですが、僕は「やれるでしょ」と思っていました。で、元気な人だけ来てくださいって言ってたんです。でも、この1年半でそれじゃダメになった。体が元気でも、みんな色んな障壁を乗り越えて来るんです。完全に突破できる人と、できない人がいるんですよね。そこを突破できた人が会場に来てる感覚もあるけど、突破したかったのに50%に制限しているチケットが当たらなかった人も多くて。それは完全にこの国のコロナのせいじゃないですか。そうした問題を結局一番クリアにできるのは、現状はストリーミングしかないんですよ。そこでライブとは違う芸術作品を作ってやるしかなくて。そうしていく上で、セッションになってくるんですよね。その人しかできないものを最高の状態で提供したいって気持ちになっていく。音は同じ空間で聴いていないけど、生きている姿を見せるっていうことで言うと、毎回リアルライブで同じ演奏を聴かされるよりも、毎回、何かうごめいていることが伝わる。そこに懸けたいんですよね。音量とか音圧がない分、より別のうごめきを。リアルをやりたい気持ちは分かりますし、行きたい気持ちも分かるんですけど、配信では伝わらないとか言って逃げてちゃダメですよ。演奏する事には変わりないんですから。

<INFORMATION>


「ガイア」
清春
デジタル配信中
https://linkco.re/xmEgGg4Z?lang=en

THE BIRTHDAY
2021年10月29日:東京・恵比寿ガーデンホール

エレジー イン ヨコハマ
2021年10月30日:神奈川・ビルボードライブ横浜

残響
2021年11月27日:東京・紀尾井ホール

NEW YEAR COUNTDOWN
2021年12月31日 - 2022年1月1日:東京・ZEPP CIVER CITY

A NEW MY TERRITORY 2021
2021年11月11日、12日:東京・新宿LOFT
2021年12月24日:神奈川・Yokohama Bay Hall

清春 公式Twitter
https://twitter.com/ki_spring

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