地獄絵図の大渋滞、救世主はトラック運転手 米
Rolling Stone Japan / 2022年1月6日 6時45分
米東部を襲った3日から4日にかけての大雪で、各地の交通機関が混乱。バージニア州の高速道路では積雪・路面凍結の影響で大渋滞が発生した。半日以上もその場で立ち往生することになったドライバーに救いの手を差し伸べたのは、トラック運転手たちだった。
【動画を見る】我慢の限界「10時間で16キロしか進まない」車内から見た光景
トラック運転手のエミリー・スローターさんとミシェル・ラッシャーさんは職業柄、悪天候や道路閉鎖にアンテナを張っている。だが4日未明、運送会社New Prime社に勤務する2人が州間高速道路95号線(I-95)を南へ走らせていた時、ラジオでの道路交通情報も電子案内板も稼働していないことから、想像を絶する最悪の交通渋滞が待ち構えていると察知した。
その日の深夜1~2時、ラッシャーさんとスローターさんはバージニア州北部で、雪に覆われて凍結した高速道路で大渋滞に巻き込まれた。前日に突如発生した冬の嵐によりワシントンD.C.郊外を走る高速道路は真っ白に覆われ、大勢のドライバーが(その中にはティム・ケイン上院議員もいた)一晩中立ち往生し、凍てつく気温の中で水も食料もなく、ガソリンを節約しながら暖を取っていた。
「これまでにも、毎日のように交通渋滞に巻き込まれました」。ラッシャーさんとともになんとか国道1号線までたどり着いたスローターさんは(もっとも、代替ルートのほうもひどい状態だったが)ローリングストーン誌にこう語った。「でも、今回のは今まで経験した中でも最悪です。天候や事故で足止めを食ったことは前にもありますが、事故で足止めを食った場合でも、どんなに長くても1時間、あるいは1時間半ぐらいでしたからね」
「私もアリゾナ州のフラッグスタッフやワイオミング州で足止めを食らったことがあります」とラッシャーさんも言う。「ワイオミングでは案内が出ていましたし、フラッグスタッフでは州警察を派遣して、その場にとどまるよう指示するか、次の出口まで案内してくれました。今回はまったく見当もつきませんでした」
大混乱の原因について、スローターさんは単刀直入に「十分に除雪しなかったか、路面に塩をまいていなかったんですよ。それが実情です」
26歳の学生テラ・ハルスさんは、東海岸時間の3日午後4時頃に渋滞に巻き込まれた。恋人と2匹の犬とともに、ノースカロライナ州からワシントンD.C.の家へ戻る途中だった。フレデリックスバーグ観光センターの看板のあたりで、車の流れが止まった(よりによって、この時車内では雪山で遭難したドナー隊についてのPodcastが流れていた)。彼らもまた前方の状況が全く分からない状態だった。ハルスさんがマップに目をやると予想所要時間は30分のまま動かず、ラジオから流れてくるのは学校閉鎖のニュースばかりだった。その後10時間、凍結した路面をジープがスリップしないよう苦労しながらノロノロ運転したが、たった10マイル(約16キロ)しか進まなかった。
「バージニア州運輸局は『救助隊員があなたのもとに向かっています、非常用品をお渡しします』というようなツイートを発信していました」と彼女は言う。「でも誰の姿も見かけませんでした」
愛車のジープでなんとか生還
4日の深夜2時頃、ガソリンも残り半分になり、食糧はクッキー1袋だけという状態で、ハルスさんは愛車のジープがどれだけ頼りになるか試してみることにした。彼女はハンドルを切って路肩を越え、後方に車の列を従えて、なんとか道なき道を進んでいった。一行はバージニア州ウッドブリッジの出口付近にある丘の頂上までたどり着いた。目の前に開けた車線がまっすぐに伸びていたが、そこから先は警察に封鎖されていた。それから数時間、再び足止めを食らった。塩を運搬するトラックがやって来て、続いて警察が道路を閉鎖し続けたためだ。渋滞の中から軽トラックが強行突破を試みたが、その後も渋滞は続いた。
「後方では車が大渋滞を起こしていて、警察は交通整備や救助をするでもなく、二車線を封鎖してパトカーに座っていました。まるで『自分たちでどうにかしろ』と言わんばかりでした」とハルスさん。「幸運にも、なんとか塩をまいた路面に戻ることができました。真っ先にガソリンスタンドに立ち寄って、トイレを借りました。この時点で朝6時だったんです。D.C.に戻ったのはその日の朝7時30分で、まさにベッドに倒れこみました」
ノースカロライナ出身海兵隊員アイザック・アルコスさん(23歳)も、3日の夜遅くに渋滞に巻き込まれた。クアンティコの海兵隊基地に向かって北に車を走らせていた時だった。やはり前方の惨状を知らせる警告はなく、彼もまた車内で一晩過ごす羽目になったそうだ。
「外はおよそ18℉(-7.8℃)でした。車体の断熱性がよくなかったので、エンジンを切って、携帯のアラームを30~40分おきにセットして、目が覚めたら再びエンジンをかけて暖房をつけていました」と言って、さらにこう付け加えた。「軽食は何もありませんでした。パンはありましたが、それだけです。でもどのみち食べたい気分じゃありませんでした――疲労困憊して、空腹どころじゃなかったんです」
ハルスさん同様、アルコスさんもなんとか渋滞を逃れようとし、気づけば通り過ぎたトラックのわだちの上を走っていた。なんとか半マイルほど進んだものの、雪の中で車が立ち往生してしまった。「当然、いささかパニックになりました。どうやってここから出よう、恥をさらすわけにはいかない、と車内で大慌てでした。でもその時どこからともなく2人のトラック運転手が現れて、路上に戻るのを手伝ってくれました」
トラック運転手たちがソーシャルメディア上でメッセージを発信
壊滅的な交通渋に公的機関がほとんど対応できない中、惨状の中から現れた真のヒーローはアメリカの道路事情を誰よりも知り尽くした人々、すなわちトラック運転手だった。スローターさんを始めとする複数の運転手がソーシャルメディアにメッセージを投稿し、水や食料や毛布が必要な人々に近くのトラック運転手を探すよう呼びかけた。トラックの運転手なら、ほぼ確実に予備を持っている。ハルスさんとアルコスさんも、ソーシャルメディアで最新状況をチェックした際にこうしたメッセージを目にした。自身もトラック運転手に助けてもらったアルコスさんは、トラックの運転手が予備の非常用品を困っている人に手渡す姿も目にしたという。
スローターさんとラッシャーさんは助けを求められはしなかったものの、こう語る。「皆さんにぜひともお伝えしたいことは、トラックの運転手にひるまないでください。寒さや食料不足で死者を出したくないんです。トラック運転手のところへ行ってください。私たちは水も食料も、必要なら毛布や携帯の充電器も、予備がたっぷりありますから」
ラッシャーさんもこれに賛同し、長距離の達人の知恵をいくつか伝授してくれた。「私が気がかりなのは、食べものや水がない人たちです。ずっと運転席に座りっぱなしなんですから。こういう状況は今回が初めてではないし、きっとこの先もあるでしょう。雪や悪天候でこうした状況に陥った場合は、皆さんもきっとスペアタイヤを車に積んでいると思います――ぜひ水や毛布や軽食も持参してください」
from Rolling Stone US
10:14am - just drove out of a fresh level of Hell where cell and internet dont connect just north of Stafford. Am through it & back up now.
Am at exit 143 on I-95 NB. I got on at exit 130 last night. It has taken me 13 hours to go 13 miles. Still rolling slowly northbound. pic.twitter.com/91LxCr3yCo — Susan Phalen (@SAPOTUS) January 4, 2022
After 20 hours in #Virginia and over 30 hours on the road total I am finally home. I dont want to drive #I95 ever again #WinterStorm pic.twitter.com/T5JHLT4ZxE — Kris (@pixiekriss) January 4, 2022
Stuck on i95 Va for the past 27 hours with no food. And its still moving very slow. Worst way to start 2022! #I95 #Virginia pic.twitter.com/7LVl2mSRym — ace ventura (@acil_625) January 4, 2022
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