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クリープハイプ尾崎世界観が語る、初歌詞集に綴られた「言葉」のバックグラウンド

Rolling Stone Japan / 2022年4月28日 17時0分

クリープハイプの尾崎世界観(Photo by Taichi Nishimaki)

メジャー・デビュー10周年の記念日となる4月18日にクリープハイプがインディーズ時代から歌い続けてきた「ex ダーリン」の再録バンド・バージョンを配信リリースした。同曲は3月20日に開催されたツタロックフェスでトリを務めたクリープハイプが最後に演奏したバラードだが、別れた恋人への未練を歌うビターな味わいは、まさにクリープハイプの真骨頂。観客が息を殺すようにじっと尾崎世界観(Vo, Gt)の歌に聴きいっている光景は、クリープハイプらしい見事なフェスの締めくくり方だったと思うのだが、今回の尾崎のインタビューの話題はその「ex ダーリン」に加え、もう1つある。

【写真を見る】ツタロックフェス2022のステージに立つクリープハイプ

それが「ex ダーリン」の配信と同日に尾崎が上梓する初の歌詞集『私語と』。そこには「ex ダーリン」をはじめ、インディーズ時代から最新曲まで、尾崎がこれまで書いてきた中から選んだ75曲の歌詞が収録されている。尾崎による歌詞のユニークさは自他ともに認めるところだが、歌詞に対する評価は果たして、本当に歌詞だけに対するものなのか。そこを確かめてみたかったという、歌詞集を上梓する理由の1つが、なんとも彼らしい。

歌詞だけについて尋ねることができる、こんな機会は滅多にあるものじゃない。そもそもの質問も含め、歌詞についてあれこれと訊きつつ、「ex ダーリン」への思い入れやメジャー・デビュー10周年を迎えたクリープハイプのこれからについても話してもらった。

―ツタロックフェスのプロデューサーにクリープハイプをトリに選んだ理由を尋ねたところ、「若手がいっぱいいる中でクリープハイプに一番新しいアルバム『夜にしがみついて、朝で溶かして』をひっさげてライブをやってもらうというのが最新型のロック・フェスだと思ったから」という答えが返ってきたのですが、フェスの最後を盛り上げて終わらずに「ex ダーリン」で締めくくったところに「シビれた。トリを任せてよかったと思った」とも言っていたんですよ。

嬉しいです。もしかしたら、ああいう終わり方がこれからのトレンドになるかもしれないですね(笑)。



―プロデューサーはロック・フェスが「わーい!」と、ただ単に楽しいだけで終わることに対して、お客さんに何か残せているんだろうかという疑問を感じていたそうです。だからこそ、クリープハイプがクリープハイプならではと言える世界観を作り上げたところに意味があると感じたそうなのですが、クリープハイプとしてはフェスの最後をああいうふうに静かに締めくくるというのは意識していたんでしょうか?

そんなに意識はしていなかったです。それぐらいコロナ禍のフェスが定着してきているのかもしれないですけど、周りと違うことをやろうと言うか、引き算のほうが得だなというのは、前々からずっと思っていたことでした。だから、周りの出方はずっと窺っていたんですけど、トリだと他のバンドを見る機会が多くなるじゃないですか。トリは数えるほどしかやったことはないんですけど、トリじゃなくても、割と周りを見てそこをイジると言うか、スタンダードなものに対して真逆のことをやることが多かったので、そういったところが出たのかもしれないですね。意識してやったわけではないですけど、一昨年とか、コロナ禍になる1年ぐらい前は、フロアが静まり返るというのを意識していたんですよ。だから、そういうふうに言っていただけたのはうれしいですね。

―そのツタロックの最後を飾った「ex ダーリン」も収録されている歌詞集の『私語と』を読ませていただきました。とてもおもしろかったです。感情に訴えかけてくるという意味でも、言葉を駆使した表現という意味でも読み応えがあって、変な話、クリープハイプのファンではない人が読んでも全然楽しめるんじゃないかと思ったのですが、歌詞集の出版は、どんないきさつから実現したのでしょうか?

元々、出版社の編集の方と歌詞集を出したいという話はしていたんです。ただ、なかなかタイミングが合わないまま先延ばしになっていて、それがこの4月でちょうどメジャー・デビュー10周年なので、そこに合わせるのがいいんじゃないかということになりました。歌詞集なので一から書き始めるわけではない分、いつでもやれるというのが自分の中にあって、逆にそれがなかなか踏み切れない原因だったのかなと、今考えると思いますね。

―つまり、ご自分の歌詞をまとめた本を出したいという気持ちは前々からあったわけですね?

そうですね。この3年ぐらいですね。どのバンドも気軽に出せるわけじゃないじゃないですか。クリープハイプを語る時に歌詞のことを挙げていただくことが多いので、もし出せるならどれだけ通用するのかを確かめてみたかった。音楽以外の文章も書いていますけど、音楽と文章を書く自分を、明確にセパレートして考えていたんです。でも、どこかでそこをくっつけてみてもおもしろいんじゃないかという気持ちもあって、それが歌詞集なのかなと思いました。

―音楽と文章を書く自分をセパレートして考えていたとおっしゃいましたが、バンドの楽曲の歌詞を書く作業は、音楽と結びついているんですか、それとも結びついていないんですか?

歌詞を書くのは、音楽ですね。それ以外の文章を書くのとはやっぱり違うし、音楽をやっている自分に負けないようにと言うか、挑戦する気持ちでやっているので、なるべくそこの力を借りたくないという気持ちがありますね。


メロディと歌詞のバランス

―『私語と』の冒頭に収められている「はじめに」という、いわゆるはしがきと言うよりは、1編の詩としても楽しめる文章を読んで、尾崎さんの中で、歌詞とメロディというのは分かちがたいものなのかなという気がしました。

分けられないものですね。歌詞を書いてはいますけど、100%自分で書いたという気はしない。必ず曲から作るので、まずメロディがあって、言葉がそこに吸い込まれていくと言うか、格納されていくようなイメージがあるので、1から10まで自分で書けたという感覚はないんです。書いて読んでもらうことに比べ、書いて歌ったものを聴いてもらうことのほうが、メロディがある分伝わりやすいと思うんですよね。自分が歌詞以外の文章を書き始めてからそのことに気づいたんですけど、だったら歌詞と音を分けてみたとき、どうなるんだろうという興味が湧いてきたんです。

―今回、歌詞集という形で歌詞と音を分けてみていかがでしたか? 以前、あるインタビューで、「メロディと歌詞の割合は5:5と考えていたけど、実際はメロディが7で歌詞が3ぐらい。だから歌詞を一生懸命書いている」とおっしゃっていましたが、歌詞集を作ってみて、その割合は変わりましたか?

やっぱり届くのは歌詞よりも曲だと思います。歌詞が良いからと言って聴いてもらうことがありますが、実際、それは歌詞と言えないのではないかと思っています。音と一緒になって聴いている言葉なので、純粋に言葉としては受け取っていない。その「歌詞が良いよね」の「良いよね」は、無意識のうちにメロディを受け取っているんじゃないか。そういう意味で、7:3と言ったんだと思います。5:5とか、歌詞が7ぐらいあって、メロディが3ぐらいの曲があってもいいと思うけれど、それだけ音というものに言葉が搦めとられてしまう経験をしているので、悔しさはありますね。

―あぁ、今回、歌詞集を読みながら、音に言葉が搦めとられていると言うか、メロディあるいは曲が歌詞の世界観や景色を限定するところはあるんじゃないかと思いました。曲として、歌詞の言葉を聴いた時と文字だけを読んだ時に浮かぶ風景がけっこう違うなと感じることが何度かありました。

それは聴いた人それぞれなのかもしれません。自分でもその変化は感じるし、言葉だけを見た時に、ほんとにこれだけで大丈夫かなという不安はありましたね。いかに音に依存しているのかがわかったし、だからこそ、そこを伝えたいというのはありますね。歌詞を良いと言ってくれるけど、ほんとに歌詞を良いと思ってくれているのか。食べ物でもあるじゃないですか。それそのものが好きなんじゃなくて、実はそこに付いているタレが好きなんじゃないかということが(笑)。それを、音楽を聴いている人に問いかけたい。それでも「歌詞が良い」と言ってくれるのかと。もう1つ、縦書きにした時に自分の歌詞はそれに耐えられるのか。自分の言葉にそれだけの強度があるのか。そこも試したかったことですね。

―読んだ人がどう受け止めるかが大事だと思うのですが、尾崎さん自身はどうでしたか? とりあえず縦書きにしてみて、それだけの強度があると思えましたか?

そうですね。なんとなくディスコグラフィーを見ながら、歌詞集に収録する歌詞を選んだ時の気持ちと、改めて縦書きになった歌詞をゲラで読んだ時の気持ちは変わらなかったので、そこまでズレがないと思いましたね。

―『私語と』には75編の歌詞が収録されているのですが、どんなふうに選んでいったのですか?

なるべく音に寄っていないものを選びました。歌うために書いている言葉もけっこうあるんですよ。それは別に悪いことではないんですけど、曲の為に犠牲にしている、音を立たせるために使う言葉もあるので、そうではないものを選びました。なるべく言葉として独立しているものを、自分の中で、自分のイメージで、音を抜いても立っていられるものという基準で選んでいきました。だから、ライブでは定番曲なのに入っていないものも多いし、なんであの曲が入っているんだろうと思われるような曲が入っていたりするんですけど。そもそも、シングル曲だから言葉の強い歌詞を書こうという意識ではないので、逆に強いメロディがあればあるほど、意味のない言葉を書くことのほうが多いですね。やっぱり言葉にひっぱられてしまうので、言葉に意味がありすぎると、伝わる速度がちょっと遅れたりするんです。だから、キャッチーに聴かせたい時は、本当に意味をなくして音の先を尖らせる。言葉をしっかり書けば書くほど、先が尖っていくようなイメージがあるんですけど、実際には書きすぎると音がぼやけるので、あえて意味の弱い言葉を選んでいます。そういった曲は歌詞集には入れづらいと思いました。自分自身、歌詞にこだわっているし、クリープハイプは歌詞に特徴があると言ってもらっているというフリがあるからこそ、めちゃくちゃ意味のないバカなこともサビで歌える。


Photo by Taichi Nishimaki



歌詞のインスピレーション源

―そもそもの質問をさせてください。歌詞集を読みながら、尾崎さん個人が浮かび上がる歌詞もあるし、物語としての情景が浮かび上がる歌詞もあるし、言葉遊びで成り立っている歌詞もあるし、改めて尾崎さんが書く歌詞にはいろいろなタイプがあると思ったのですが、歌詞のインスピレーションとか、モチーフとかは、どんなところからひっぱってくるのでしょうか? 

何かにたとえることも多いですが、モチーフは毎回決めています。そこが決まるまではかなり時間がかかるけれど、モチーフが決まれば早いですね。

―その時には、おっしゃったようにすでに曲はあるわけですね?

そうです。メロディがあって、モチーフを決めれば、もう半分ぐらい終わったなという感じです。そこから歌詞が出てこないというのは、そんなに重要なことではないんです。出てこなくても、絶対にいつかは決まるという感覚があります。最近は、レコーディングが迫っているという事実がないと出てこなくなったんですよね。そういうおかしな体になっている(笑)。思いついたモチーフを広げていく時は何もしないですね。基本的にはスマホのメモの画面をじっと見ている。そこに全部、集まってくるので、あの画面の中だけで完結していますね。改行したり、1字空けたりする時も同じだけ動くあの無機質なフォーマットで全部書いています。1回、あの設定が変わったことがあって、たぶんアップデートされた時に変わったのか、その時、書きづらくなったので焦りました。その後、設定を変えたら無事元に戻ったんですけど。よけいなものをネットで見たりすると、予測変換も変わってくるので、その時は困りますね。自分のせいなんですけど(笑)、何かを取り込むということもしないですね。めちゃくちゃ狭めていく。広く物事を見ると言うよりは、スマホの画面だけに向かって、世界を閉じていく書き方をしています。

―ふだん思いついた言葉とか、気になった言葉とかがたくさんメモしてあって、その中からメロディに合った言葉を当てはめていくってことではなくて?

そうではないですね。小説とか、歌詞以外の文章を書く時はありますけど、歌詞に関しては、一切メモはしないですね。レコーディングの直前まで、どっちの言い回しにするか悩んで2つ書いたりすることはありますけど、使わなかったから次に回そうという言葉はないです。時間がない時は、こういう感じのことを、こういう言い回しでうまい感じに言う、という風なメモはしています。でも、感情をそこに込めて、流れで書くよりは、設計図を書くように書いていますね。あんまりそこに気持ちを入れすぎると、伝わりづらくなると思っていて。奥行きは持たせずに、本当に1枚の絵のような感じで書いていて、その奥はないんです。

―クリープハイプの場合、聴いた人が歌詞を深読みすることが多いと思うんですけど、奥行きのない1枚の絵のように書いている歌詞に対してというところがおもしろいですね。

そうなんです。聴いてくれる人が全部やってくれるんです。だから、伝わらなかった時に、なんでだろうと思う気持ちや、本当はこうなのにという悔しさ、もどかさしさが本当に無駄だと思っていて。絶対に聴いた人が想像するほうがいいと思うんです。段々、そういう考え方に変わっていきましたね。だからある程度必要のない部分は省けるようになって、今では1章から10章まであるうちの5章ぐらいから書き始めたりもします。4章までは聴いてくれる人が想像して自分の体験にあてはめてくれるし、絶対にそのほうが感動するんですよ。こっちが最初から組み立てるよりも、絶対に自分が知っていることのほうが感情移入できるんです。そういった書き方は、この2、3年でよくやるようになりましたね。

―ふだん生活しながら、いい意味でも悪い意味でも気持ちが動いたことが歌詞の題材になるんでしょうか?

それもメモをするわけではないので、どこかで繋がっている部分はあるかもしれないけれど、意識はしていないですね。あとは、物にたとえることが多いです。でも、それもやり尽くしたので、あと何があるかと考えても、もう数えるぐらいしかない。そうなってくると、それ以外の仕事がでかいですね。音楽以外の仕事を積極的にやっているので、それが音楽に対するインプットになっているし、音楽をやること自体がその反対側の仕事のインプットになっているので、仕事をしながら仕事のインプットをして、またアウトプットしている感じで、それは自分にとってすごく心地いいですね。


女性の視点からの歌詞が多い理由

―何度も聞かれていることかもしれませんが、女性の視点からの歌詞が多いのは、なぜなのでしょうか?

自分の知らない感覚を歌うということに対して、わかりたくないという思いがあるんですよ。男性の目線で書いてしまうと、表現することに対して、理解できてしまう虚しさがある。男の気持ちを歌うと、実感としてちゃんと手触りが残ってしまう。だから、できるだけ知らない感覚を歌いたいんです。本当に作品として遠くまで飛ばせるなというような気持ちになるのは、女性目線で歌った時ですね。だから、勝負したい時は、女性の目線で書くことが多いですね。

―ツタロックでも、「堂々とセックスの歌で始めたいと思います」とおっしゃっていましたけど、セックスと言うか、性愛は尾崎さんの歌詞の重要なテーマじゃないですか。バンドを始めたばかりの頃はエロは歌っていなかったのですか?

歌っていなかったし、歌詞というものにそこまでこだわりがなかったですね。良い曲を作りたいとか、良い演奏をしたいとは思っていましたが、そもそもそんなに歌詞を聴いていなかったと思います。曲ができると、早く歌いたいからそこに歌詞を付けなきゃ、という感覚でした。とにかく曲にしか興味がなかったけれど、その中で何かしなければと思ったんです。当時、曲を全然聴いてもらえないという焦りがあって、良い歌詞を書きたいとか、意味のある歌を歌いたいと言うよりは、人に聴いてもらいたいからちゃんと歌詞を書かなければと思って、エロというテーマを見つけた時に「これは誰もやっていないんじゃないか。発見した」と思いました。男寄りのエロは割とあったと思うんですけど、そうじゃない女性寄りのエロというのは誰もやっていないと思い、「美人局」を歌ったらしっくり来て、もうちょっとここを突き詰めていきたいと思いましたね。

―じゃあ、もし、その時、人に曲を聴いてもらえていたら、エロには手を出さなかったかもしれない?(笑)

そうかもしれないですね。かと言って、そこからすぐに聴いてもらえたわけではないんですけど、自分の作品をちゃんとピンで留められたような気がしました。それはすごく大きかったですね。それまでは曲を作っても、作品として残らないと思っていたんですよ。当時、自主制作のCD-Rでもいいから、とにかくCDを作ることにこだわっていました。それは、自分がやっていることが物質にならないという悔しさや不安があったからなんです。その後、「イノチミジカシコイセヨオトメ」ができた時は、何か違うなと思いました。自分の中でやっとハマったと思えたんです。ビート感と言うか、速くてエロい曲はあまりないぞと思い、そこでさらにもう1個発見しましたね。その曲をやり始めてから、ちょっとずつ変わり始めました。

―エロという作風がご自身にも合っていたということなのでしょうか?

そうですねと答えるのは、めちゃくちゃ恥ずかしいですね(笑)。 

―ですよね(笑)。

でも、エロを美しく歌いたいというのはありましたね。『私語と』には入っていないのですが、たとえば「エロ」という曲は別にエロいことを言わずに、そう思ってしまう相手の気持ちを使った歌詞なんですよ。《それ》とか、《アレ》というフレーズでわざとぼやかしていて、それを聴いてエロいと思った人がエロいという歌詞なんです。だから、エロは一方的にこっちが投げかけるだけの表現じゃなくて、相手の気持ちも半分ぐらいある。ある意味では共犯関係なんじゃないかと気づいてからは、楽な気持ちで書いていったりもしましたね。

―「東京日和」を読んで、ほのぼのとした世界観の中で、《青い空》と《蒼井そら》を掛けるのかって反応してしまう僕はきっとエロいんだと思います(笑)。今回収録されている75編の中で、特に思い入れや思い出のある歌詞はありますか?

やっぱり最新アルバムの歌詞が一番しっくりきてます。最近書いたから当たり前なんですけど。あとは、もう流通していないCDから選んだ「リン」や「イタイイタイ」は、今読み返してみてもその時の自分の感情の動きがわからない。そういう歌詞も大事だと思っていて、世の中に対して常に怒っていたり、バンドがまったく相手にしてもらえず、とにかく何か汚してやろうという気持ちで書いていた時期の歌詞は面白いです。今はもう、そういう気持ちでは書けないですからね。そんな歌詞がこうして残るとうれしいですね。


「ex ダーリン」をリリースする意味

―そんな歌詞集に『私語と』というタイトルを付けたわけですが、私語と仕事を掛けたタイトルはどんなところから?

自分の言葉で仕事ができるというのは、すごく恵まれていると思うんです。社会人としてやっていく上では、自分の本意ではない言葉を使っていかなければならないことが多い。でも、ミュージシャンや作家は自分の言葉でちゃんと歌え、書けと言われるじゃないですか。それってすごく難しいことなんですけど、同時に恵まれているとも思う。これからもずっとそれを続けていきたいし、私語を使って仕事をしているということを改めて考えて『私語と』と付けました。

―私語を辞書で調べてみたら、黙っているべき状態の中で話をすることという意味や、ささめごとと読むと、小声でひそひそする話という意味があるそうです。黙っているべき状態の中で、敢えてこの歌を歌うみたいな気持ちも多少はあるのではないでしょうか?

それはあるかもしれないですね。言わなくてもいいことを、すごく言っているので。言い回しも含め、まだ人が言っていない言葉をいかに残せるか、その痒いところに手が届く瞬間を1つでも多く残したいと思っています。

―ところで、『私語と』の発売日と同じ4月18日に「ex ダーリン」を、バンド・バージョンとして再録したものを配信シングルとしてリリースしようと思ったきっかけは?

これはインディーズ時代からあった曲で、ライブでもよく歌っていたのですが、なかなかバンド・アレンジができなかったんです。何回か試してみるけれど作品として残すほどのクオリティにはならなくて、そういう曲があってもいいかなと思いつつ、10周年のタイミングで、ちょうど10年前にリリースしたデビュー・アルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』のボーナス・トラックでもあったこの曲をしっかりとした形でリリースすることには意味があるなと思いました。それでヨルシカのn-buna君にアレンジをお願いしたんですけど、自分達ができなかったところをしっかり掬い取ってくれて、とても嬉しかったです。何よりn-buna君が、クリープハイプはこうだという明確なイメージを持ってくれていたのでアレンジの方向性も明確に見えました。それに、学生時代にその曲を聴いてくれていた人に頼むというのは、クリープハイプらしいと思いました。そこにこだわっていたし、下の世代の人たちと何かやっていくということに興味を持っていて、それが今回すごくうまく行ったし、お願いしてよかったと思っています。

―「ex ダーリン」という曲そのものにはどんな思い入れがありますか?

自分としては普通に作った曲なんですけど、昔からファンの方が強く反応をしてくれているという印象ですね。まだインディーズの頃、先にメジャー・デビューしていた親しいバンドをイベントに呼んだときにこの曲をカバーしてくれたんですけど、ライブを観にきたレコード会社の偉い人に「ああいう曲を作れ」と言われたと落ち込んでいて、いい曲として認知されているんだと思ってうれしかったです。

―さて、メジャー・デビュー10周年を迎えるわけですが、どんな心境ですか?

メジャー・デビューはずっと目標にしていたので、そこからさらに10年やれたというのは、すごくうれしいです。もちろん、まだまだという感じもあります。

―10周年を迎え、どんなことが新たな目標になりましたか?

音楽の聴かれ方がどんどん変わっていく中で活動しているので、それを楽しんでいきたいですね。だから、目標と言うよりは、ずっとそこにしがみついていたいという感じです。

―この4月から5月にかけて「今夜は月が綺麗だよ」という「ex ダーリン」の歌詞をタイトルに冠した全国ホールツアーを開催しますが、それ以降、10周年のアニバーサリーにふさわしいイベントの予定はあるのでしょうか?

ないですね、全然(笑)。

―ファンとしては大きなイベントよりもコンスタントに活動を続けてくれたほうがうれしいですよね。

そうですね。とにかくワンマン・ライブを大事にしたいですね。あと、ツタロックも(笑)。


クリープハイプ
尾崎世界観(Vo/Gt)、小川幸慈(Gt)、長谷川カオナシ(Ba)、小泉拓(Dr)からなる4人組ロックバンド。2012年、アルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』でメジャーデビュー。2014年には日本武道館2days 公演を行うなど、シーンを牽引する存在に。2018年の5月11日には約4年ぶりとなる2度目の日本武道館公演「クリープハイプのすべて」を開催。同年、9月に5thオリジナルAL『泣きたくなるほど嬉しい日々に』を発売。2021年12月には約3年3カ月ぶりとなるニューアルバム『夜にしがみついて、朝で溶かして』をリリース。

<INFORMATION>

【楽曲情報】
■楽曲タイトル:ex ダーリン(イーエックスダーリン)
■配信日:2022年4月18日(月)0:00
■配信リンク:https://creephyp.lnk.to/exdarling

■楽曲タイトル:ex ダーリン 弾き語り
■配信日:2022年4月18日(月)0:00
■配信リンク:https://creephyp.lnk.to/exdarling_Acoustic

【書籍情報】
■書 名 :私語と(しごと)
■著 者 :尾崎世界観
■発売日:2022年4月18日(月)
■ISBN :978-4-309-03033-3
■本体:1700円(税込1870円)
■仕 様 :46判変形/上製/280ページ(別丁20P+本⽂260P)
■収録楽曲(全75曲):
ねがいり
リン
イタイイタイ
answer
ヒッカキキズ
NE-TAXI
アンタの日記
イノチミジカシコイセヨオトメ
イエスタデイワンスモア
君の部屋
猫の手
左耳
コンビニララバイ
SHE IS FINE
風にふかれて
欠伸
愛は
グルグル
ウワノソラ
愛の標識
手と手
バイトバイトバイト
ミルクリスピー
身も蓋もない水槽
ABCDC
蜂蜜と風呂場
明日はどっちだ
さっきの話
ラブホテル

おやすみ泣き声、さよなら歌姫
マルコ
社会の窓
傷つける
ハロー
東京日和
喋る
2LDK
ボーイズENDガールズ
大丈夫
百八円の恋
本当
寝癖
二十九、三十
クリープ
カップリング

アイニー
僕は君の答えになりたいな
5%
けだものだもの
テレビサイズ(TV Size 230)
誰かが吐いた唾がキラキラ輝いてる
バンド
ただ
君が猫で僕が犬
今今ここに君とあたし

お引っ越し

禁煙
一生のお願い
燃えるごみの日
ゆっくり行こう
料理
ポリコ
四季
愛す
しょうもな
一生に一度愛してるよ
ナイトオンザプラネット
なんか出てきちゃってる
キケンナアソビ
幽霊失格
ex ダーリン

【全国ホールツアー2022 「今夜は月が綺麗だよ」】
4月16日(土)金沢市文化ホール
4月20日(水)ロームシアター京都
4月24日(日)富士市文化センター ロゼシアター
4月28日(木)東京ガーデンシアター
4月30日(土)北九州ソレイユホール
5月01日(日)岡山市民会館
5月08日(日)栃木県総合文化センター
5月13日(金)名古屋日本特殊陶業市民会館フォレストホール
5月17日(火)中野サンプラザホール
5月18日(水)中野サンプラザホール
5月20日(金)東京エレクトロンホール宮城
5月22日(日)北海道カナモトホール(札幌市民ホール)
5月25日(水)大阪フェスティバルホール
5月26日(木)大阪フェスティバルホール

全席指定 6,800円(税込)

●ツアー詳細ページ
https://www.creephyp.com/feature/cp_tour2022

<クリープハイプ LINK>
■公式サイト:
http://www.creephyp.com/
■YouTubeチャンネル:
https://www.youtube.com/channel/UC9qzBf1wP4tGot4qi__1B_g
■Twitter:
https://twitter.com/creephyp
■Instagram:
https://www.instagram.com/creep_hyp/
■LINE:
https://line.me/R/ti/p/@creephyp

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