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斎藤知事と部下たちの隔たりにみるパワハラ疑惑の現在地 「合理的な指導」と「理不尽な叱責」

産経ニュース / 2024年8月31日 7時0分

東北大・増沢隆太特任教授

職務に関する疑惑を文書で告発された兵庫県の斎藤元彦知事が30日、県議会の調査特別委員会(百条委員会)で初めて証人尋問に臨み、職員に対する一連のパワハラ疑惑について、業務上の指導の範疇(はんちゅう)との認識を改めて示し、正当性を主張した。一方、この日の百条委に斎藤氏に先立って出頭した部下らは「理不尽な叱責を受けた」と証言。自身の言動を巡る知事の認識と職員の受け止めとの乖離(かいり)を、強く印象づける結果となった。

「頭の中が真っ白になった。指導の範囲内とは思えないような言い方だった」

昨年11月、斎藤氏が出張先で公用車を降りてから建物入り口まで約20メートル歩かされ、職員を怒鳴ったとされる件。告発文書に記載されたこのパワハラ疑惑について、現場で斎藤氏を案内した県幹部は30日の百条委でこう証言した。

一方の斎藤氏は「歩かされたことで怒ったわけではない」と説明。重要な会議のスタートが迫っていたのに、職員が知事の動線を確保していなかったため、「対応が不十分」と感じ、「大きな声でその旨を伝えた」。そもそも現場は車の進入が禁止されたエリアだったが、その点も聞かされていなかったため、当時の指導としては「合理的だった」と、パワハラに当たらないとの認識を重ねて述べた。

斎藤氏は自らを「厳しい上司」と認め、部下への言葉遣いやコミュニケーション面で反省すべきところがあったと釈明しつつ、総務官僚だった自身の経験を踏まえ、行政マンに求めるレベルに言及。知事への報告より前に新聞報道が出ると、たびたび担当者を呼びつけて叱責したとされる点について、自らの官僚時代は「新聞の1面に出たときは、すぐに想定問答を作って大臣室に入れておく」のが当たり前だったとし、県職員にも自分の現役当時と同じような対応を求めたところが「正直ある」と語った。

職員アンケートでは約4割が斎藤氏のパワハラを見聞きしたと回答しており、百条委の委員からは「人望がなかったのではないか」と率直な質問も飛んだ。

斎藤氏は「職員に好かれたり、人望があるのは大事だ」としつつ、「必要な指導は県民のためにする」と、職員ではなく「県民ファースト」の対応だったとの認識を強調した。

この日の尋問終了後、会見した百条委のメンバーの一人は「証人の受け止めと知事の認識に差がある印象だ」と感想を述べた。

百条委の奥谷謙一委員長は、これまでの県職員に対する尋問で、斎藤氏の言動について「県庁生活で初めてこういった叱責を受けたという人もいた」と明かし、この日も「頭が真っ白になった」との証言が出たことから「パワハラに極めて近いと思う」と指摘した。

年内に報告書

告発文書には、斎藤元彦知事による職員へのパワハラ疑惑のほかに、県内企業からの贈答品受領や、信用金庫の補助金を増額しプロ野球の阪神・オリックス優勝パレードの募金としてキックバックさせた―など、斎藤氏や元副知事の片山安孝氏ら側近による7項目の疑惑が記されていた。

その真偽を調べる県議会の調査特別委員会(百条委員会)は、県の全職員約9700人を対象に7項目の疑惑についてアンケートを実施。今月23日に公表した中間報告(4568件分)によると、パワハラ疑惑は38・3%(1750件)、贈答品疑惑は20・7%(946件)が見聞きした、と答えた。

百条委ではまずパワハラ疑惑を調査。斎藤氏が初めて出頭した30日の証人尋問もパワハラ関連の質問に限定している。

次回9月5日と翌6日の期日では、贈答品受領疑惑と、告発文書を作成した元県西播磨県民局長の男性(60)=7月7日に死亡=を保護の対象となる公益通報者として扱わず、懲戒処分とした妥当性を調べる。公益通報を巡る県の対応は一連の問題の焦点ともいえ、6日には斎藤氏を再び尋問するほか、片山氏ら側近にも出頭の上で証言を求める。

10月下旬に優勝パレードやその他の疑惑に関する尋問を行い、11~12月に百条委として事実を認定した上で報告書をまとめる方針。

事実積み重ねて判断を

ハラスメント問題に詳しい東北大の増沢隆太特任教授に聞いた。

ハラスメントの中でもパワハラは、定義を厚生労働省が明確に定めており、①優越的な関係を背景とした言動で②業務上必要な範囲を超え③労働者の就業環境が害されている|という3要件すべてを満たす必要があるとされる。

知事という立場を考えれば、舌打ちやため息でも民間人とはインパクトが違うと捉えるべきで、日頃からそのような言動を繰り返していたとすれば、職員への威圧に当たるとも考えられる。

現代では「本人のために怒鳴る」は成立しない。冷静で合理的な指摘であれば問題ないが、物をたたいたり、投げたりといった感情的な行為は悪質なコミュニケーションで不適切だ。

斎藤氏の証人尋問での受け答えはこれまでと同様だったが、偽証ができない中で、文具を投げたり、深夜にチャット連絡をしたりといった事実関係は認めた。

パワハラを「指導」と正当化するのは、よくあるパターンでもある。今後の百条委員会では事実を積み重ねて、パワハラの有無の判断につなげてもらいたい。

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