脆弱な護岸に想定超の雨量 地震でダメージ、被害拡大に拍車 能登半島豪雨
産経ニュース / 2024年9月22日 7時0分
石川県の能登半島で21日に発生した豪雨は、半島各地で河川氾濫や浸水、土砂崩れといった被害をもたらし、死者や行方不明者が相次いだ。元日の地震で甚大な被害を受けたばかりの被災地を襲った新たな災害。専門家は「地震で備えが脆弱(ぜいじゃく)になった被災地に、観測史上最大規模の雨が降って被害拡大に拍車がかかった」と指摘した。
「1月の能登半島地震の揺れで、堤防や護岸が損傷している箇所が多数あった。復旧できていない箇所では低い水位でも氾濫の恐れがある」
21日正午から始まった気象庁と国土交通省の記者会見で、国交省の担当者はこう説明し、河川の氾濫に備えて早めの避難を呼びかけた。だが実際、被災地では午前中から氾濫が相次いでいた。
石川県河川課などによると、県管理の河川では、被災した護岸や堤防を地震後に応急復旧したものの、以降も避難や水防活動を呼びかける5段階の目安「基準水位」を1段階引き下げて運用。今回の大雨でも、例えば避難判断水位(レベル3)のところに氾濫危険水位(レベル4)を適用したという。ただ、県の担当者は「護岸や堤防の機能が低下していることに備えたが、応急的な対応に過ぎない」と話す。
それでも、国交省によると、今回の豪雨で少なくとも県内の12水系16河川で氾濫が確認された。金沢大理工研究域の谷口健司教授(河川工学)も「地震の影響で護岸などが損壊していることで、水害が生じやすい状況だった」と強調する。
加えて、能登半島の地形的な特徴が影響していることも考えられる。谷口氏は「半島は中小河川が多く、大雨が降ると一気に水位が上昇する。氾濫が起こらなくても、市街地で降った雨水が川に流れ込めず、内水氾濫も発生しやすい」と説明。こうした要因で被害が広範囲に及んだ可能性もあるとした。
1月の地震では、沿岸部で地盤が大きく隆起した被害もあった。谷口氏は「大きな地形変化で河川の流下能力に変化が生じているならば、洪水対策の見直しも必要だ」との懸念を示した。
今回の豪雨は時間雨量が観測史上最大を更新し、河川の流下能力を大きく上回る状況にあった。いずれも輪島市内を流れる河原田川は24時間雨量213ミリ、町野川は24時間雨量176ミリまでの想定で対策が計画されていたが、同市では21日午前、3時間でこれらを上回る220ミリの雨量が観測された。
谷口氏は今回の豪雨について「河川整備の基準を上回っていた」と指摘。近年は気候変動もあって豪雨の頻度は増えており、「計画を上回る降雨も念頭に、災害対策を練ることが重要になっている」と強調した。(藤谷茂樹、藤木祥平)
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