渡辺恒雄氏、毀誉褒貶も強い信念に基づいた生き様 阿比留瑠比
産経ニュース / 2024年12月19日 11時52分
平成24年4月、渡辺恒雄・読売新聞グループ本社代表取締役主筆に、リーダー論についてインタビューする機会があった。民主党政権時代であり、前年12月に産経新聞が実施したアンケートでは「リーダーにしたくない人物」の1位が鳩山由紀夫、2位には菅直人の両元首相が選ばれていた。
筆者が「4位は…」と切り出すと、渡辺氏はにやりと笑ってこう答えたのが印象的だった。
「渡辺恒雄。悪名は無名に勝るというが、ネガティブ評価もなきゃおかしいですよ。人間には嫉妬もある。僕も何もしないでいればいい人といわれたかもしれないが、それじゃジャーナリストといえないね」
長年にわたり、政界、メディア界や球界で大きな影響力を保持してきた「ドン」のずぶとさを感じるとともに、記者としての自信と覚悟も伝わってきた。
中曽根康弘元首相をはじめとする数多い政治家と交わり、外部から評論するのではなく、内部に入ってメインプレーヤーとして政治に関わってきた渡辺氏の手法には毀誉褒貶(きよほうへん)がある。
だが、少なくとも強い信念を持って思うさまに振る舞ってきた生き方は、いっそすがすがしくもある。
「ナベツネさんには逆らえない」
多くの政治家から異口同音に、何度こんな言葉を聞いたことか。若い記者など歯牙にもかけぬ政界の長老たちも、渡辺氏には一目も二目も置いていた。
勉強家としても知られ、税財政など政策面でも揺るがぬ持論の持ち主だった。憲法改正論者でもあり、9条はもちろん、前文についても「哀れみを乞うような前文は取り換えた方がいい」と主張していた。
一方で、若いころの軍隊経験から旧日本軍を嫌い、戦没者が祭られた靖国神社にも否定的だった。安倍晋三元首相が第1次内閣を発足させる直前には、渡辺氏に「もし靖国に参拝したら、読売1千万部で内閣をつぶす」と脅かされたこともあった。
酔うとはめを外すところもあったようだ。やはり中曽根氏のブレーンだった元伊藤忠商事特別顧問の瀬島龍三氏に「最近、渡辺氏とけんかしたとの噂がありますが」と話をふったところ、顔をしかめてこう言っていた。
「渡辺さんも、ビールの間はまだいいのだが、コップ酒をやり始めるともういけない」
時代の要請か、サラリーマン化が進んだ記者からは、もう渡辺氏のような存在は生まれてこないのではないか。(論説委員兼政治部編集委員 阿比留瑠比)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
悪名は無名に勝る、悪評もなきゃ 読売新聞グループ本社会長・主筆 渡辺恒雄(下) アーカイブ「話の肖像画」 リーダーに贈る
産経ニュース / 2024年12月19日 16時20分
-
今の政治に「三木武吉」がいない 読売新聞グループ本社会長・主筆 渡辺恒雄(上) アーカイブ「話の肖像画」 リーダーに贈る
産経ニュース / 2024年12月19日 16時0分
-
「終生一記者」貫く…渡辺恒雄主筆死去、提言報道や戦争責任追及を主導
読売新聞 / 2024年12月19日 13時53分
-
渡邉恒雄・読売新聞主筆逝去 98歳 マスコミ・プロ野球に「君臨」
J-CASTニュース / 2024年12月19日 11時8分
-
読売新聞グループ本社代表取締役主筆の渡辺恒雄氏が死去 政界やプロ野球界に強い影響力
産経ニュース / 2024年12月19日 9時59分
ランキング
-
1雪はいつ、どこで? 冬型の気圧配置は次第に緩むも22~23日に再び冬型が強まる見込み 東日本では“警報級大雪”の恐れ【3時間ごとの雪と雨のシミュレーション・19日午前11時半更新】
BSN新潟放送 / 2024年12月19日 11時35分
-
2死亡生徒は塾帰りに来店「勉強しようとした」 北九州の中3殺傷、2人標的の理由は捜査
産経ニュース / 2024年12月19日 13時21分
-
3「茶番劇」か「大人の対応」か…安住淳・衆院予算委員長と自民党の小林鷹之氏のやりとりに賛否両論
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月19日 9時26分
-
4北九州の中学生殺傷事件、43歳の容疑者「確かにその行為をしました」…現場から車で逃走
読売新聞 / 2024年12月19日 12時39分
-
5【速報】地下鉄三宮駅で包丁で刺された70代女性は全治1カ月の重傷 容疑者とは「面識ない」
ABCニュース / 2024年12月19日 13時48分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする

記事ミッション中・・・
記事にリアクションする

エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
