当初から疑われた「隣人」は犯人なのか 被告は無罪主張、27日に判決 羽曳野殺害事件
産経ニュース / 2024年9月25日 18時14分
大阪府羽曳野市の路上で平成30年2月、韓国籍の崔喬可(さい・きょうか)さん=当時(64)=を刺殺したとして殺人罪に問われた山本孝被告(48)の裁判員裁判の判決が27日に大阪地裁(山田裕文裁判長)で言い渡される。直接証拠はなく、凶器すら見つかっていない。検察側が懲役20年を求刑する一方、弁護側は無罪を主張。「犯人性」が最大の争点となっている。
事件は30年2月17日夜に発生。崔さんは被告宅の隣人女性の交際相手。近くの駐車場に車を止め、女性宅に向かう途中の路上で背後から刃物で刺されて死亡した。
わずか1週間後、大阪府警が「怪しい」とみたのが、現場から20メートルほど離れた家に家族4人で暮らしていた被告だった。
一方、府警が逮捕に踏み切ったのは4年後の令和4年2月。その間の捜査でも凶器は見つからず、被告宅の包丁や衣服からも崔さんの血液といった殺害の痕跡は一切出てこなかった。
こうした状況の中で、検察側が立証の核としたのは、現場周辺に止まっていた車2台のドライブレコーダーの映像だ。
写った不審人物は身長180センチ、8頭身ほどの細身で被告の体形と一致。さらに、崔さんが駐車してから現場に向かうまでの約20分間で、不審人物は計3回現れたが、うち2回は被告宅間近の家に設置されたセンサーライトが光っていた。
検察側はこれを踏まえ、犯人は駐車場を見渡せる被告宅前と現場付近との間を行き来しながら殺害のタイミングを計っていたと推定。こうした行動を取れるのは、住人である「被告しかいない」と指摘する。
また、被告と崔さんの交際相手との間には隣人トラブルがあった一方、被告のほかに「崔さんとトラブルを抱えている人はいなかった」と主張。被告は同時間帯に、隣人トラブルを巡る嫌がらせを受けないよう「見張り」目的で玄関前まで出たことは認めており、「たまたま被告と同じ体形の別の人物が、被告の『見張り』をかいくぐって犯行を遂げたとは考えられない」と訴える。
一方で弁護側は、被告による犯行は「不可能」だと反論する。
家族への証人尋問によると、被告が外出したのは、入浴後に酒を飲み、家族とテレビを見ていた最中の短時間。帰宅すると家族の前で上着を脱ぎ、再びだんらんに加わった。この間に殺害と凶器などの証拠隠滅は行えないという主張だ。
また検察側が、現場住宅街を防犯カメラなどを避けて入ることができない「密室のような場所」と位置付け、犯人を住宅街の住民だと絞り込んでいることを疑問視。抜け道の存在を指摘し、「検察側の立証は破綻している」と強調する。被告は最終意見陳述で「私はやっていません」と2度繰り返した。(西山瑞穂、弓場珠希)
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