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いじめ重大事態の現実 摂食障害で体重26キロに、半年入院 それでも教委・学校は認定せず

産経ニュース / 2024年11月29日 20時19分

「娘はずっと苦しみ続けている」と訴える生徒の母親=29日午後、大阪市中央区の大阪府教育庁(沢野貴信撮影)

学校で発生したいじめの中でも、子供の心身に重大な被害が出たり、長期欠席したりする「いじめ重大事態」。文部科学省が10月に公表した昨年度の調査ではいじめ認知件数が過去最多を更新、重大事態の件数も前年度比1・4倍となり、初めて千件を超えた。いじめの定義への理解が進んだためともされるが、学校側の対応の遅れが指摘されたり、保護者らとトラブルになったりするケースが後を絶たない。

半年間入院、続く苦しみ

「娘はずっと苦しみ続けている。まだ終わっていないんです」

29日、大阪府教育庁で開いた記者会見で母親は声を絞り出すように訴えた。

通信制高2年の長女(17)は、大阪府高槻市立中の2年だった令和3年、仲の良かった女子グループ4人から突然無視されるようになり、孤立。3年へ進級後に摂食障害などが悪化、体重は26キロまで落ちた。半年間入院し、欠席日数は237日に及んだ。現在も通院を続ける。

入院中、いじめられたと長女から打ち明けられた母親が4年秋、学校に「いじめ重大事態」として調査を依頼。学校側からは「いじめに気づけず申し訳なかった」と謝罪され、「いじめの重大な事態だと認識している」などと言われたという。

だが昨年、長女の入院や治療にかかる費用補償を求めようと、学校で起きた事故の災害共済給付業務を担う「日本スポーツ振興センター」に問い合わせたところ、支給の対象外で、学校がいじめと認定していなかったことが判明。「調査が続いていると思っていたのに、娘は学校に軽んじられていた」と母親。長女は「あのクラス、あの担任じゃなければ私は病気にならなかった」と悔しさをにじませたという。

今夏に指針改定、調査開始前に保護者に説明

平成25年に施行された「いじめ防止対策推進法」では、子供の生命や財産に重大な被害が生じたり、学校を長期間欠席したりするケースを重大事態と規定。学校は文科省や自治体に報告しなければならず、速やかな調査と被害者側への適切な情報提供が義務付けられている。

しかし、子供や保護者がいじめ被害を訴えたにも関わらず、学校側がいじめと認定せず、深刻な事態に陥る事例は後を絶たない。令和3年に北海道旭川市で中学2年の女子生徒が亡くなった問題では、学校側が当初いじめと認知せず重大事態としての調査を行わなかったことが判明。その後設置された第三者委員会が自殺との因果関係を「不明」とし、遺族の反発を招いた。

こうした事態を防ごうと、文科省は今夏、いじめ重大事態の調査に関する指針を改定。調査開始前に保護者らに説明する手順や内容を記載したほか、被害が発生する前から、適切に対応できる体制を構築しておくことを求めている。

自治体ごとの差も大きく

今回のケースで、高槻市教委は産経新聞の取材に対し、重大事態として認定しなかった理由については回答せず、「学校と教委としては、訴えがあった当時調査を尽くし、生徒への学習支援など、安心して学校生活を送ることができるよう丁寧に取り組んできた」とコメント。一方、生徒側の代理人を務める吉田幸一郎弁護士は「重大事態の条件を満たしているのに、認定しない高槻市は重大な法律違反を犯している。直ちに適切な対応をとってほしい」と訴える。

いじめの問題に詳しい千葉大の藤川大祐教授は「いじめ防止対策推進法を守らない教育委員会が多いことが想定外だった」と説明。高槻市のケースについて「この法律に違反している上、保護者への合理的な説明もなく、行政機関としてあるまじき対応だ」と問題視した。

また、いじめ対応に積極的な自治体とそうでない自治体の差も大きいと指摘し、「対応できない教育委員会がある以上、独立性のある市長部局で対応することなども考える必要がある」とした。(木ノ下めぐみ、格清政典)

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