1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

日本の天文学の歴史を感じて 移転100年の国立天文台三鷹キャンパス 現着しました

産経ニュース / 2024年8月31日 21時15分

天文台歴史館にある口径65センチの屈折望遠鏡。独ツァイス製で、屈折望遠鏡としては日本最大口径という(黒田悠希撮影)=東京都三鷹市大沢

国立天文台の本部がある三鷹キャンパス(東京都三鷹市大沢)が9月1日、移転100周年を迎える。大正13(1924)年、前身の東京天文台がより良い研究環境を求めて現在の港区麻布台からこの地に引っ越した。日本の天文学の1世紀にわたる足跡が刻まれた同キャンパスを訪ねた。

緑豊かな環境

武蔵境駅南口前からバスに乗り、「天文台前」で降りる。正門をくぐってすぐ右手の「門衛所」に立ち寄ると、守衛さんが「ここにはタヌキやフクロウなど、いろいろな野生の動物がいるよ」と教えてくれた。鬱蒼(うっそう)と木々に囲まれた緑豊かな環境で、広さは26万1508平方メートル。東京ドーム約5・6個分だ。ここでは、計10件の建造物が国の有形文化財に登録されている。この門衛所も国登録有形文化財だ。

ここはかつて、「東京天文台」と呼ばれていた。ルーツは、明治11年に本郷に設立された東京大理学部観象台。その後明治21年、当時の海軍省、内務省で行っていた天象観測と内務省が担っていた暦の編纂(へんさん)事業が文部省の所管となり、東京天文台が帝国大理科大の所属として麻布区飯倉町(現・港区麻布台)の崖の上に設置されたという。

明治の終わりごろ、当時の北多摩郡三鷹村大沢への移転が決まったのは、より良い環境を求めてのことだった。近代化に伴い、都市の光により観測環境が悪化していたことなどが理由とされる。郊外にあり、台地で見晴らしもよかった。大正3年に本格的に建設が開始され、約10年かけて移転した。

数々の貴重な施設

三鷹キャンパスの歴史的な観測装置、建物からは、西洋天文学が本格的に日本にもたらされた草創期の雰囲気を感じることができる。

このキャンパスに現存する最古の観測施設は、第一赤道儀室だ。大正10年に完成し、ドームのあるこの建物も国登録有形文化財。

室内にある口径20センチの望遠鏡は独ツァイス製で、昭和13年から61年間、太陽黒点観測に活用された。大変古い施設だが、国立天文台の広報普及員、根本しおみさんが「動態保存されており、研究には使用されていませんが、現在も観測を行うことは可能です」と説明してくれた。見学者向けに6月から9月の夏季を除き、原則土日に太陽観察会の機会が設けられている。

ほか、天文台歴史館(大赤道儀室)にある望遠鏡は屈折型としては現在も日本最大口径(65センチ)を誇るという。大正15年に完成したこの建物も国の有形文化財に登録されており、今は観測には使用されていないが、内部には天文台の歴史を紹介するパネルや貴重資料のレプリカが展示されている。

国立天文台の主な観測の場は現在、ハワイ、南米チリ、長野・野辺山など三鷹キャンパス以外に移っている。ここ三鷹では、それら観測施設の統括や天文学分野の研究、観測装置の開発、大学院生の教育、編暦などが行われている。

キャンパスの一部は常時公開されており、国の重要文化財の観測装置「レプソルド子午儀」なども見学することができる。展示室では、現在活躍しているすばる望遠鏡(ハワイ)、アルマ望遠鏡(チリ)などの説明や観測研究成果などを閲覧することが可能だ。根本さんは「見学ではぜひ、日本の天文学100年の歴史を感じていただきたい」と話している。(黒田悠希)

国立天文台三鷹キャンパス

三鷹キャンパスの見学は無料。自由見学(見学者のみで回る)、小人数の場合は予約不要。年末年始(12月28日から1月4日まで)を除く毎日、午前10時から午後5時まで(入場は午後4時半まで)。設備点検や工事などで中止される場合がある。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください