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英語教員 国費留学制度の復活を 道具も話の中身もどちらも大事 人生の選択肢を広げよう 話の肖像画 元駐米日本大使・藤崎一郎<25>

産経ニュース / 2024年9月26日 10時0分

《英語の重要性についてどう思うか》

インターネットの普及もあり英語が世界語になった。世界の中心では政界でも経済界でも英語でやりとりしている。これが変わることはない。

2つの間違った認識があると思う。1つは英語は道具に過ぎず、中身の方が大事だというものだ。こういうことを言う人は英語が苦手なのだろう。罪作りな話だ。自分がそうだからといって他人を巻き込んではいけない。中身も道具も両方大事だ。種子や苗の方が大事だと言って農機具も持たずに田畑に出る農業者はいまい。本格的に勉強もしないうちから英語への苦手意識を持つのは早過ぎる。これからの時代、英語とコンピューターが使えるかが人生の選択肢を広げるカギになる。理系の人にも、iPS細胞の山中伸弥教授は英語で論文を書いたからこそノーベル賞になったんだと言っている。

もう1つは国際社会で活躍するには英語だけではなく、第2語学が大事だという議論だ。国際機関志望であれば別だが、たいていは英語だけで足りる。第2語学は人脈を広げるためと割りきる方がいい。相手の得意な言葉で交渉したり契約したりすれば相手の思う壺(つぼ)だ。もし友達づくりのためと割り切れば、第2語学は会話中心でいい。教員やその国の専門家になるなら別だが、大学で第2語学を専攻する必要はない。英語を国際社会で通用するレベルに磨いた方がいい。今の時代、ほかにもICT(情報通信技術)、AI(人工知能)など勉強することはいくらでもある。

《国際社会で通用する英語レベルとは》

新聞は30分で目を通し、たいていの本は2、3日で読み、テレビやラジオのニュースは聞いて概(おおむ)ね分かり、前もって用意していなくても議論の中で言いたいことをただちに言い返せるというレベルだ。

英語の発音は妙に英国風や米国風をまねることはない。みっともない。インド人やシンガポール人は独特な英語の発音だが自信を持って話している。私自身は英国にも米国にも住んだが、あえてどちら風でもない、いわば「国際的英語」を話すよう努めてきた。ゆっくり短く切って分かりやすく話せばいい。駐米大使の先輩でもけっして流暢(りゅうちょう)ではないがしっかり話し、説得力ある人たちが何人もいた。横で聞いていて感心した。

《小学校から英語教育が始まった。外国人の補助教員増で対応していくのか》

言葉は早く始めるのがいい。幼いうちは自然と正しい発音を覚えるので、外国人の補助教員を小学校中心に配置するのはいいと思う。

《日本人英語教員の能力向上は》

急務だ。そのためには公立中学の英語担当教員全員を少なくとも1年間英語国に国費で留学させればいい。今のように地方自治体まかせでは地域差がついてしまう。英語力がつき、国際的視野を持った教員が30年間教えるとすれば、教え子の千人以上が受益することになる。投資効果は大きい。外国人補助教員は2、3年間しか教えない。親日家を育てる意味ではいいが、予算を増やせるなら日本人教員のために使った方がいい。かつて私が現役時代に試算を聞いたら、1人1年間留学させるのに必要なのは1千万円。47都道府県で新しく公立中学の英語教員になるのは千人で全員留学に必要な費用総額は約100億円とのことだった。国家百年の計を考えれば大きな金額ではない。留学中の代用教員が足りないなら、外国在住が長かった駐在員やその配偶者に一定の研修、試験をして採用すればいい。

日本人英語教員の留学制度は、10年ほど前に発足した。私は逆JETと呼んでいた。JETプログラムは竹下登内閣で発足し、今も続く外国人英語補助教員制度だ。駐米大使時代、米国のデラウェア大学に日本の教員研修の視察に行き、素晴らしいと思った。政権が変わると縮小し消滅した。ぜひ復活してほしい。(聞き手 内藤泰朗)

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