大災害に備え、調理専門学校の学生と炊き出し訓練 警視庁野方署「食事で一瞬でも笑顔に」
産経ニュース / 2024年9月27日 20時39分
首都直下地震などの大規模災害が発生した際に、警察署で行う炊き出しの手順や連携を確認しようと、警視庁野方署は27日、中野区の織田調理師専門学校の学生らとともに炊き出し訓練を行った。同校と野方署は災害時の連携協定を結んでおり、学生らは署員や教員と協力し、釜で米を炊き、おむすびや冷や汁をふるまった。
訓練は野方署で行われ、同校の学生5人と教員、署員ら計約20人が参加。地面との間に板を挟むなどして釜の高さと火力を調節しながら、バーナーを用いて米を炊いた。
災害時を想定し、長机にラップを敷いたり、アルコール消毒を入念に行ったりするなど、ウイルス感染対策も徹底。学生らが塩むすびや高菜を混ぜたおむすびを作って冷や汁とともに手渡すと、署員らからは「おいしい」との声が上がった。
今年の元日に起きた能登半島地震などの大規模災害の発生を受けて、災害への備えを強化しようと、野方署が同校と連携協定を結んだのは4月。災害時に、救助活動などの対応に当たる警察官や地域住民向けに、学校側の協力を得ながら炊き出しを行うことを想定している。
同校の今井靖人(やすひと)校長(48)は、東日本大震災の際に宮城県石巻市で炊き出しに携わった経験を持つ。食べ物がインスタント食品などに限られる中、手作りの温かい食事に被災者から「おいしかった」と言われたことが記憶に残っているという。食を通じて地域に貢献したいとの思いから、同署の協力要請に二つ返事で応じた。
訓練に参加した1年生の渡辺葵さん(19)は、「災害が起きたときに食べることがエネルギーにつながれば」と参加を決めた。夏休みには能登半島に旅行に行ったといい、災害時に自分にできることは何かと考えたという。炊き出しでは、屋外で器具も普段とは異なるものを使って調理にあたり、衛生管理の大切さを学んだ。
渡辺さんは「苦しい災害のときでも心のこもった料理を顔を合わせて提供することで、『おいしい』と思っていただき、一瞬でも笑顔になれる瞬間を作りたい」。調理師を目指す中で地域に食で貢献していきたいと思いを語った。
同署は今後も訓練を継続し、災害への備えを強化したいとしている。(橋本愛)
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