中央官庁情報 外務省 日本そして世界の平和と安全、繁栄のために 受験ジャーナル
産経ニュース / 2024年12月13日 15時0分
国家公務員総合職試験,一般職試験に合格すると,その主な職場は「国の行政機関」である1府12省庁,つまり,内閣府および11省+国家公安委員会(警察庁)となる。さらに各省の下には外局である庁や委員会が置かれており,地方に出先機関を設けている省庁も多い。国家公務員の職場は実に幅が広いといえるだろう。それぞれの官庁が取り組んでいる仕事内容や課題などを紹介する。
外務省の仕事と聞いて,何を想像するだろうか?
「外交」の目的は,国際社会の中で日本の安全と繁栄を確保し,国民の生命と安全を守ること。それは,「国家」の存在意義そのものと言っても過言ではない。
ロシアによるウクライナ侵略により,国際社会が長きにわたる懸命な努力と多くの犠牲の上に築き上げてきた国際秩序の根幹が脅かされている今,「外交」の役割はかつてなく大きくなっている。世界が歴史の転換期にある中,いかに日本が,自国の利益を増進し,法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜いていくか。さらには経済領域にまで裾野を広げた安全保障上の課題への対処,地球規模課題への対応,自由で公正な経済秩序の拡大に,新たな時代に対応したルールづくりや海外での邦人保護等,尽きることのない困難かつ多様な課題に対応すべく,外務省は世界各地で昼夜を問わず日々業務を行っている。
外務省は,1869年(明治2年)に創設されて以降,名称を変えることなく現在まで日本外交の歴史を紡いできた。古くは,明治の英傑と呼ばれた人々が躍動し,数々の歴史を変えてきた。そして現在に至るまで,国のために尽くす情熱と使命感,それを支える知性,人間としてのタフさと誠実さ,さらには,あくなき向上心を持った外交官たちが立ち止まることなく成長している。われわれと一緒に,国際社会の舞台で「国の代表」として一生をかけて挑戦を続けたいという方は,ぜひ外務省の扉を叩いてほしい。
〈大臣官房〉①各部局の行政事務の総合調整,②人事,③会計経理等を通じて外交活動を支える。
◎儀典官組織…天皇陛下や皇族,総理等日本の要人の外国訪問,国公賓等外国賓客の受入れ,大使等の接受,わが方大使等の派遣,外国人叙勲の推薦等を扱う。
◎外務報道官・広報文化組織…日本の政策・取組み・立場や多様な魅力の発信や文化・人物交流等を通じ,諸外国における日本に対する親近感向上・理解増進を図る。また,国内に対しても,外務省の取組みに関する広報活動を行う。
〈総合外交政策局〉日本が総合的かつ戦略的に外交を展開できるように,日本の安全保障や国連にかかわる問題を含め,全省横断的に取り組むべき重要な外交政策の企画・立案・調整等を行う。
◎軍縮不拡散・科学部…核兵器,生物・化学兵器および通常兵器の軍縮・不拡散への取組み,原子力の平和的利用や科学技術に関する国際協力等を行っている。
〈アジア大洋州局〉アジア地域は今や世界の成長センターといわれ,世界経済の中心に位置する。隣国の韓国・中国やASEANを含むアジア地域,および豪州,ニュージーランドや太平洋島嶼国を担当。二国間関係・地域協力の強化等に取り組んでいる。
◎南部アジア部…南部アジア諸国(東南アジアおよび南西アジア諸国)を担当。「自由で開かれたインド太平洋」の要である南部アジア地域の諸国との間で,地域の平和と繁栄,二国間関係の強化に取り組んでいる。
〈北米局〉米国とカナダを担当。日米同盟は日本外交・安全保障の基軸であり,インド太平洋地域,そして国際社会の平和と繁栄の基盤。日米両国は,政治,経済,安全保障,文化・人的交流等の幅広い分野で緊密に連携している。また,日加両国は,ともにG7に属し,価値を共有する重要なパートナーとして,政治,経済,安全保障,文化・人的交流等幅広い分野で密接に協力している。
〈中南米局〉中南米・カリブ諸国を担当。日本と伝統的に友好関係にある中南米・カリブ諸国の中で,ブラジル,メキシコ等は国際社会での存在感を一層増している。また,資源・エネルギー供給地域としての重要性に加え,中南米・カリブ諸国には民主主義,自由経済および法の支配等基本的価値を共有する国が多く,多面的な関係強化に取り組んでいる。
〈欧州局〉西欧諸国,中・東欧諸国,ロシア,中央アジア・コーカサス諸国およびEU,NATO,OSCE,欧州評議会等の欧州地域国際機関等を担当。自由,民主主義,人権,法の支配といった基本的価値を共有する欧州諸国・機関との関係強化,中央アジア・コーカサス・西バルカン諸国等の自由で開かれた持続可能な発展に向けた協力,ロシアによるウクライナ侵略への対応,日露間の領土問題解決等に取り組んでいる。
〈中東アフリカ局〉中東・北アフリカ地域を担当。この地域は日本のエネルギー安全保障上死活的に重要であり,湾岸諸国,イラン,シリア,イラク,中東和平,アフガニスタン等国際社会の平和と安定に大きな影響を与える重要な地域である。地域諸国との関係強化に取り組むとともに,地域の平和と安定のために 積極的に関与している。
◎アフリカ部…サハラ砂漠以南のアフリカ49か国を担当。アフリカは日本にとり,ビジネス・貿易投資・資源開発,貧困・紛争・感染症等の国際社会の課題克服,持続可能な開発目標(SDGs)推進,外交基盤強化等の観点から重要。アフリカ開発会議(TICAD)プロセス等を通じ,一層の関係強化に取り組んでいる。
〈経済局〉経済外交担当。G7・G20,WTO,APEC,OECD 等における国際的なルールづくりへの参画,多角的貿易体制の維持・強化,CPTPPや日EU・EPA,日英EPA の着実な実施,RCEP協定の透明性のある履行の確保に向けた取組み,その他経済連携協定交渉および投資関連協定交渉の推進,エネルギー・鉱物資源・食料・海洋・漁業(捕鯨を含む)等の経済安全保障の強化,日本産食品等に対する輸入規制の緩和・撤廃,日本企業の海外展開,知的財産の保護等を通じ経済的利益の保護・推進等に努めている。
〈国際協力局〉開発途上国に対する政府開発援助(ODA)を担当。外交政策の最も重要なツールの一つとして,有償資金協力,無償資金協力,技術協力を戦略的に活用した二国間協力や国際機関等を通じた多国間協力からなる開発協力政策の企画・立案,調整等を行っている。
◎地球規模課題審議官組織…国連,その他の国際機関や条約等の多国間の枠組みを通じた地球規模課題に関する外交政策と交渉を担当。持続可能な開発目標(SDGs)達成への取組み,人間の安全保障の推進,教育・保健・環境・気候変動・防災等の分野別の外交政策の策定,国際社会共通のルールづくり等に関する協力を行っている。
〈国際法局〉国際法に関する外交政策,ならびに条約等国際約束の締結,解釈および実施に関する事務(紛争解決を含む)等を担当。国民の安全と繁栄に資する国際法秩序の構築に取り組むとともに,締結した条約等国際約束の誠実な遵守を確保している。
〈領事局〉近年,日本人の海外渡航・居住は増加,活動範囲も多岐にわたる。在外邦人の保護は外務省の最重要責務の一つ。海外で事件・事故等に遭った日本人の援護はもとより,平素から適時適切な安全情報の提供や安全対策の周知に努めている。その他,在外選挙,日本人の身分関係および証明に関する事務や,旅券の発給等の領事サービス,ハーグ条約に関する事務,外国人に対する査証の発給,在日外国人関係施策に関する事務を担当。
〈国際情報統括官組織〉本省や在外公館を通じて収集した情報をもとに,世界各地の地域情勢や国際テロ,大量破壊兵器拡散等の日本に影響を与え得るグローバルな課題について分析を行い,適切な政策立案・決定に資するようその結果を省内の幹部や官邸等に報告している。
在外公館
現在,日本は在外公館として大使館,総領事館,政府代表部を置いている。大使館は相手国政府に対し,日本を代表して交渉や連絡を行うとともに,情報の収集・分析,広報文化活動,領事事務(邦人保護,査証発給等)に当たる。また,総領事館は主に領事事務,経済関係の促進や広報・文化活動を行う。政府代表部は国連等の国際機関において,日本を代表して交渉や情報収集等を行っている。
人事データ
配属・移動
入省後,総合職職員は約2年間,専門職職員は約1年間,研修所で語学や外交に関する研修を受けながら,本省各局で実務に従事する。その後,原則として各国の大学等で2〜3年間の在外研修(留学)を行い,研修終了後は在外公館(大使館,総領事館等)に勤務する。その後は,総合職職員,専門職職員とも,本省勤務と在外公館勤務を繰り返し,能力および勤務成績に応じて昇進する。
採用動向・採用予定
令和5年度の採用は,総合職職員が34人,専門職職員が55人。総合職は国家総合職試験の区分に関係なく,合格者の中から採用されることになる。専門職については,独自の外務省専門職員採用試験が行われる。
(公務員の仕事入門ブック・6年度試験対応・記事内容を一部編集しています)
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