1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. カルチャー

頚椎症 高齢者の約9割で頸椎に変化 加齢が原因  痛み学入門講座

産経ニュース / 2024年8月31日 11時0分

65歳を超える年齢ともなると、約90%の方で首の骨(頚椎(けいつい))に加齢による変化がみられるようになり、「年ですなあ」となる。レントゲン撮影では、脊髄に出入りする神経の通路である椎間孔(ついかんこう)が狭くなり、骨棘(こっきょく)(軟骨が肥大、増殖して骨のように変化)が作られ、椎間関節(おのおのの脊椎の骨を結ぶ関節)に関節症性変化がみられるようになるのだ。もちろん、無症状に経過することだってあるが、これらによる症状が表面化した場合には、「頚部変形性脊椎症」(いわゆる「頚椎症」)と診断することになる。

頚椎症とは「主として頚椎の加齢変化によって神経根や脊髄が圧迫を受けている状態」といえる。特徴として、上を向くことが辛くなり、うがいをしたり、ジュースなどをラッパ飲みしようとすると痛みが誘発されるのだ。「頚椎椎間板ヘルニア」などと同様に、その圧迫を受けている部位別に「神経根症」と「脊髄症」に分けられる。

神経根症では、圧迫を受けた神経が支配する領域に放散する痛み、痺(しび)れ、凝(こ)り、筋力低下などを生じる。痛みは長時間の車の運転後などに急に起こることが多い。この場合、痛い側の手で重い荷物を持ったり、首を後ろ向きに強く曲げることは避けるべきである。

なお、この神経根の圧迫は、掌(てのひら)で頭の後ろを押えるような姿勢をとると軽くなる。

一方、脊髄症では多彩な症状をきたす。腕のみならず脚の痛みや痺れ、巧緻運動(箸の扱い、書字、ボタン掛けなど)の障害、歩行障害のほか、直腸膀胱(ぼうこう)障害(尿意、便意が分からなくなり、自力での排便、排尿ができなくなる)をみることもある。首を曲げたり、回旋する動作を繰り返していると症状が強くなるので注意が必要だ。この巧緻運動障害に関して、先日、私の外来に通院中の患者さんがおもしろい表現をされていた。治療の継続によって、「だんだんようなってます。こないだごっつうれしかったんは鼻毛を抜けるようになったことですねん」と。「ふむふむ、なるほど」と感心した次第である。

診断にあたっては、神経学的検査、レントゲンに続いて圧迫の程度を確認するためにMRI(磁気共鳴撮像)を撮るが、本症と頚椎椎間板ヘルニアが合併していることも多い。また、本症と症状が酷似するものとして「頚椎後縦靭帯骨化症」(OPLL)があるが、この場合には膀胱障害の発生頻度が高い。

ペインクリニックでは、星状神経節ブロック、頚部硬膜外ブロック、腕神経叢(わんしんけいそう)ブロック、神経根ブロックなどを動員して治療にあたっている。加えて、神経障害性疼痛(とうつう)緩和薬(プレガバリンやミロガバリン)、筋弛緩作用を有する抗不安薬(エチゾラム)などを投与している。

森本昌宏(もりもと・まさひろ) 祐斎堂森本クリニック(06・4800・3010)顧問。平成元年、大阪医科大学大学院終了。同大講師などを経て、22年、近畿大学医学部麻酔科教授、31年、大阪なんばクリニック院長。令和6年4月から現職。日本ペインクリニック学会名誉会員。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください