ファッションに夏を捧げた高校生の、もうひとつの「甲子園」 思いや風景、自由にデザイン
産経ニュース / 2024年9月23日 8時0分
全国の高校生デザイナーが競い合い、ファッション業界を担う人材の育成を目指す「第23回全国高等学校ファッションデザイン選手権」(ファッション甲子園2024)=産経新聞社など後援=が先月、青森県弘前市で開かれた。全国1147チーム(1929作品)から選ばれた34チームが出場。自由な発想を衣装という形に昇華させた質の高い作品を披露した。
地球環境、時代の変遷・・・みずみずしい感性で
自分たちでデザインした衣装を着てランウエーを歩くショー形式で開催。「高校生らしい『瑞々(みずみず)しい感性』」をテーマに、社会に訴えたいことや日ごろの思い、印象に残った風景など、さまざまなモチーフをデザインに込めた。
優勝したのは、泉尾(いずお)工業高校(大阪)の作品「地球(生命の誕生)」。
地球が誕生したばかりのころ、何もないところから草や木が生え始めた力強さを、青く透け感のあるチュール生地を重ね、造花などをちりばめて表現。デザインした春名姫樺(ひめか)さん(3年)は、「昨年も出場したが、作品のインパクトに欠け上位入賞できなかったのでうれしい」と話す。
準優勝は、高度成長期に建てられた集合住宅が解体されゆく中、そこで暮らした人々のあらゆる感情を多数の顔で表現した福知山淑徳高校(京都)の「Nostalgia(ノスタルジー)」。
第3位には、花札のさまざまな絵柄を衣装デザインに落とし込んだ松山工業高校(愛媛)の「花鳥風月」が選ばれた。
レシートやバーコードで「欲望」を象徴
特別賞の海外ファッションブランド協会賞は、岡山南高校(岡山)の「欲望インバウンド」に。
インバウンド需要の活況と、円安による影響の不安を、ラミネート加工したレシートやバーコードを素材にした100個以上の立体三角形で象徴し、ドレスに仕立てた。
審査員を務めたファッションディレクター、原由美子さんは「自分の内面にあるものを真剣に考え作品にしていることに感動した」と大会を総括。大会に特別協力する海外ファッションブランド協会の三木均会長(リシュモン ジャパン社長)は「大会を通じて、若い人にファッション業界の楽しさ、やりがいを知ってもらえれば」と述べた。
先輩は、アイドル衣装のデザイナーに
ファッション甲子園からデザインの世界へ-。そんな夢を実現させたのは現在、アイドル衣装のデザイナーとして活躍する成田あやのさん。過去の大会で観客賞を受賞。8月、大会会場内で衣装展を開き、〝凱旋(がいせん)〟を果たした。
弘前市出身の成田さんはファッション甲子園の常連で知られる弘前実業高校の服飾デザイン科に進学。「1、2年生のときは1次審査に通らなかった」が、3年生で観客投票が最多の作品に与えられる「観客賞」を受賞した。
卒業後に上京し、働きながら文化服装学院Ⅱ部(夜間)に通学。「かわいい」服のデザインと、「アイドル」という、自分にとって2つの「好き」に同時に携わる仕事として、アイドル衣装のデザイナーになった。これまで「乃木坂46」や、「りんご娘」などアイドルの衣装を手掛け、現在は年間300以上のデザインを提供。12月公開予定の実写版映画「推しの子」で劇中アイドルの衣装デザインも担当する。
重要なのは、「アイドルの魅力を衣装によってどれだけ引き出せるか」としながらも、「(アイドルに)合わせ過ぎると、私でなくても…となるので、自分のテイストをどのくらい自然に混ぜられるかが難しいところ」と語る。
ファッション甲子園の後輩に向け、「『瑞々しい感性』という自由なテーマ。自分の思いを存分にぶつけて」とエールを送った。
ファッション甲子園
高校生の夢の創造とファッション業界の次世代育成のため、平成12年にスタート。実行委員会(弘前商工会議所、青森県、弘前市)主催で毎年8月に開催。優勝校はパリでの研修、準優勝、第3位のチームは国内研修に招待される。
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