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友綱部屋秘伝の「湯豆腐ちゃんこ」は角界最古か 世界に誇れるアスリート食

産経ニュース / 2023年11月19日 8時57分

友綱部屋は昨年歴史を閉じたが、「相撲ばる魁ちゃん」がちゃんこの味を受け継いでいる(鴨志田拓海撮影)

一年納めの九州場所(福岡市)が開催中の大相撲。平均約160キロある幕内力士がぶつかり合いに根負けしない力の源は「ちゃんこ鍋」にある。肉や野菜など盛りだくさんの具材が入った鍋は栄養を取るのに理想的。寒くなる季節に味わいたい一品だ。

「効率よく栄養を取るには、ちゃんこ鍋が理にかなっています」

こう語るのはかつて友綱部屋の力士だった西野邦昭さん(44)だ。現役時代は魁将龍(かいしょうりゅう、元幕下)のしこ名で土俵を務め、約15年間、部屋の食事を担う「ちゃんこ番」だった。

引退後、その経験を生かし、東京都江東区で「相撲ばる魁(かい)ちゃん」を営んでいる。一押しのメニューは部屋伝統の「湯豆腐ちゃんこ」だという。

具材は豆腐をメインに、白菜、大根、きのこ類、ニンジンなどの野菜に加え、豚肉と鶏肉が入る。スープは鶏がらがベース。絶品なのが小鉢に取り分けてから上にのせる「たれ」だ。

西野さんの父で元友綱親方、政章さん(71)=元関脇魁輝(かいき)=が、「これが友綱部屋独特で、他の部屋のちゃんことは違う」と太鼓判を押すたれは、しょうゆ、刻みネギ、卵黄、カツオ節などをボウルに入れ、湯煎しながら混ぜ合わせたもの。

見た目はみそに似ているが、絶妙な塩味が具材の味を引き立ててくれる。たれだけでもよし、好みで鍋のスープでのばしてもよし。

友綱部屋に出稽古に来た元横綱曙は、稽古後の食事が「湯豆腐ちゃんこ」と聞くと食べてから帰ったという。元横綱白鵬もそうだったといい、力士をとりこにしてきた味わいの深さが伝わる。

江戸時代がルーツ?

「たれで食べる湯豆腐ちゃんこの起源について気になった」という西野さんが、かつて大手食品メーカーの図書館で調べたところ、「江戸時代初期の大阪に、同じような料理がありました」。

江戸時代から大正と昭和の境あたりまで、関西には「大坂相撲」という興行組織があった。そこから東京に移籍した力士が「(湯豆腐ちゃんこを)持ってきた可能性は高い」と西野さんは見る。

友綱部屋は大坂相撲が起源で、湯豆腐ちゃんこの東京進出に関わった可能性があるという。「江戸初期が発祥ならば約400年の歴史がある料理が相撲界に残っていることになり、食の伝統文化としても面白く、海外へのアピールにもなる」と思いをはせる。

栄養バランスも◎

栄養学的にも、肉や野菜などが豊富に入ったちゃんこ鍋はバランスの取れた料理だという。「現代人に不足しやすい野菜をしっかり取れる点が魅力。世界に誇れるアスリート食だと思っています」と話すのは公認スポーツ栄養士の橋本玲子さん。

体を資本とするスポーツ選手が好むのは、脂っこい肉料理が多く、脂質を取り過ぎてしまう傾向がある。その点、調理に油を使わない鍋だと、脂質を抑えながら必要なタンパク質が取れる。また、豆腐と肉、すなわち植物性と動物性のタンパク質を摂取できる。

橋本さんは以前、海外の栄養士を相撲部屋に招待したことがあり、「こんなにヘルシーなものを食べて、どうしてあんな大きな体になるんだと言われた」という。ちゃんこにはご飯もつきもの。「お米を中心に肉や魚、野菜をバランスよく取る日本の伝統的な食事が辛うじて守られているのが相撲部屋だと思う。そういう情報を日本人だけでなく、海外の人にも伝えていきたい」と話した。

友綱部屋のたれの作り方を聞いて表にまとめた。相撲部屋ならではの大量っぷりだが、分量は家庭に応じて調整しよう。作ったたれは冷蔵庫で保管し、早めに食べ切ろう。

(松本恵司)

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