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農業・IT・インフラ…日本の経験値に高まる期待 ウクライナ復興支援に動き出す関西企業

産経ニュース / 2024年9月24日 10時0分

日・ウクライナ経済復興推進会議

ロシアによる侵略が続くウクライナ。戦後の経済復興を見据え、関西などの日本企業が支援の本格化に向けて動き始めている。クボタはウクライナの主要産業である農業の復興に向け、必要な農業機械などの提供を行う。スタートアップ(新興企業)のセレンディクス(兵庫県西宮市)は住宅再建のため、3Dプリンターを活用して短期間で建設する事業を計画。戦争終結は依然見通せず、現地での本格的な活動は困難だが、停戦後に向けた準備が進められている。

人工衛星とAI活用

世界有数の小麦の生産地として知られるウクライナ。クボタは2月、ウクライナ農業政策・食料省との間で、同国の農業生産力回復のため、農機の提供に向けた覚書を交わした。ウクライナ側が必要とする情報提供も行う。ウクライナで農機を民間にリースする事業を支援する国有財産基金とも、協力について覚書を締結している。

ミサイル攻撃などで破壊された住宅の再建も急務だ。セレンディクスは3Dプリンター住宅の施工を手掛けるトルコ企業と2月に覚書を締結。プリンターの出力を手掛けるウクライナ企業とも覚書を結び、事業開始に向けた準備が整った。

人工衛星と人工知能(AI)を活用して農地の状況を把握するなどの農業支援を手掛けるサグリ(同県丹波市)は、同業のウクライナ企業と共同で、実証プログラムの推進で協力するための覚書を交わした。

政府間で合意

各社の支援は主に、日本とウクライナの両政府間の合意に基づいている。日本政府は2月19日、ウクライナ政府、経団連、日本貿易振興機構(ジェトロ)との共催で、「日・ウクライナ経済復興推進会議」を東京で開催した。

日本側は岸田文雄首相が、ウクライナ側からもシュミハリ首相が来日して出席した。両国の間で56の協力文書が締結されたほか、新たな租税条約の締結やウクライナ国民向けの査証(ビザ)発給要件の緩和、ウクライナの首都キーウにジェトロの事務所を設置することが発表された。

ジェトロは中長期的に、ウクライナに進出する日本企業に情報提供などを行う。日本としてウクライナ支援を継続する姿勢を前面に打ち出す狙いがある。

合意された協力案件からは、今後の日本企業によるウクライナ支援の方向性がうかがえる。それは、インフラ、農業、IT―の3分野への注力だ。

ロシアによる攻撃で、ウクライナでは電力や水道、交通、情報通信など、人々の生活を支える幅広いインフラが破壊されている。日本は震災復興などの経験が豊富で、インフラ復旧で多くの貢献ができると期待されている。

また農業やITはウクライナの主要産業であり、それらの復興は国の経済回復に大きな推進力になりうる。

特に農業分野でウクライナは、ロシアによる侵攻前の2020年には小麦の輸出量が世界5位、ひまわり油が1位、大麦が2位で、世界有数の農業国として知られる。

ウクライナの農業は現在、農地の破壊や占領に加え、農産物が収穫できても、輸出のための主要港湾がロシア軍により妨害されるなど、極めて困難な状況にある。ただ、これらの事態が終戦により解消されれば、ウクライナ経済の回復だけでなく、国際的な農産物価格の安定にもつながると期待されている。

ITもウクライナの得意分野だ。ウクライナのIT産業は、ロシアによる侵攻下でも海外の産業展示会に積極的に出展するなど、活発な活動を続けている。今後のウクライナの復興の主力となりうる分野だ。

米大統領選が焦点

日本企業が戦時下の国に人員を派遣することは、社員の安全上、極めて困難だ。戦争はロシア側がウクライナ東部での占領地を拡大し、ウクライナ側もロシア領内に越境攻撃するなど、終結の見通しは立っていない。

ウクライナへの最大の軍事支援国である米国で11月に選ばれる新大統領が、ウクライナに対し戦争終結に向けた圧力をかける可能性があり、いったんは停戦が実現する見込みは十分にある。

ただ、停戦が破られ、再び戦闘が発生した場合、企業は事業の途中で撤退を余儀なくされる恐れがあり、危険と隣り合わせの状況は続く。

欧州の戦後復興の歴史などに詳しい立命館大学の田中宏名誉教授は「戦時中の国に企業が進出することは困難で、さらにウクライナは各地の経済状況が大きく異なり、例えば日本企業がキーウでビジネスに成功しても、その事業が他の都市でも成功するとは限らない。労働力不足の問題もあり、復興支援やその後の現地での事業展開は、決して容易ではないだろう」と指摘する。

そのうえで田中氏は「ウクライナの戦後復興プロセスは、第二次世界大戦後の日本の経済復興と重なる部分がある。日本の回復は製造業が土台となったが、日本が今後、ウクライナでの製造業の発展を後押しすることができれば、その復興にさらに役立つことができるだろう」と語った。(黒川信雄)

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