甘みたっぷりなウニで「一石三鳥」 廃棄うどんを餌に養殖、藻場再生と漁獲量回復狙う
産経ニュース / 2024年9月27日 8時0分
地球温暖化の影響などで海底の藻場が著しく衰退する「磯焼け」が各地で問題化している。原因の一つとされるのがムラサキウニによる海藻の食害だ。そのウニは食用に向かない〝厄介者〟。香川県ではウニを駆除したうえで、廃棄ゆでうどんやだしガラのいりこなどを餌にそのウニを育て、特産品化を目指す産官学連携プロジェクトが始まった。藻場再生と漁獲量の回復、ウニの特産品化という一挙両得を狙う画期的な試み。プロジェクトのメンバーは「『讃岐うどん雲丹』を商品化し、みんなに食してもらいたい」と話している。
30分でウニ400匹駆除
プロジェクトは、瀬戸内海で人工造成による藻場再生に取り組む香川大のほか、漁師と協力して駆除と食質改善に取り組む県立多度津高校、廃棄うどんの提供とメニュー開発を手掛ける飲食店グループの遊食房屋(本社・宇多津町)などがタッグを組んだ。
9月中旬、高松市庵治町の篠尾海岸で、多度津高の生徒11人と庵治漁業協同組合のサザエ、アワビ漁師、香川大学瀬戸内圏研究センターのメンバーが協力し、ムラサキウニ駆除が行われた。
海岸から約100メートル離れた水深2メートルほどの海域で、ウエットスーツ姿の高校生らが海に潜った。天候は晴れだったがうねりが大きく、ウニ採取に苦戦。それでも30分ほどで岩の下のくぼみなどから約30個、漁師の分と合わせて約400個を採取。試しに割ってみると身入りはやはり少なかった。
3年生の片山空さん(18)は「釣りが趣味だが以前より釣れなくなったと実感している。海中は海藻が全く見当たらず、ウニは思ったより多かった。少しでも海をよくしたい」。漁師は「漁ではウニをどけてその下にいる貝を探す状態。海藻を餌にする貝が生息できる環境ではない。高校生や香川大などが力を貸してくれるのはありがたい」と話した。
ゆでうどんを餌に畜養
ウニは船で多度津町内の同校栽培漁業実習場に運び込まれた。水槽で複数のかごに入れて畜養。餌にはうどん店から提供された廃棄ゆでうどん、だしガラのいりこや昆布を使用している。同校では令和5年8月頃、遊食房屋から讃岐うどんの食品ロス問題を相談され、讃岐うどん雲丹プロジェクトとして再始動を決めた。
系列のうどん店では、ゆでたてを提供するためにゆでてから30分以上経過しためんは廃棄に。同校へは月に1度、約20キロのうどんなどが提供されている。
各地でキャベツやブロッコリーを与えて畜養する実例はあるというが、ウニを駆除し、魚介類のすみかとなる藻場が再生することで漁獲量が回復。さらに、うどん食品ロスの削減と、ウニの特産品化を連動させるのは画期的だ。
ゆでうどんのみで畜養したところ、えぐみはなく通常より甘みが感じられた一方、やや白っぽい色味や身入りに改善の余地があった。いりこでタンパク質、昆布でうま味を補うなど餌の配合などを試し、来年度中盤頃の商品化を目指す。遊食房屋の細川明宏営業本部長は「まずは刺し身などに利用し、瀬戸内海産讃岐名物として広めていきたい」とし、「生徒らが一生懸命考えて取り組んできたことを消費者にしっかりと伝える。新たな特産物が讃岐のPRになり、漁師さんたちの悩みの解決の道にもなると考えている」と話した。
藻場再生で豊かな海に
香川県海域の藻場面積(アマモ・ガラモ)は昭和20年に8940ヘクタール、53年には最小の684ヘクタールまで激減し、平成28年に1078ヘクタールとなっている。
香川大では10年ほど前に今回の海域近くに藻場人工造成構造物25基を沈めて人工で藻場を造成し、海洋生態系復活の取り組みを続けている。今年5月には消波ブロックを土台に藻場造成機能を併せ持つ環境調和型のコンクリート製多孔性の人工魚礁(約3メートル四方、重さ約9トン)7基を深さ約6メートルの海底に沈設した。
創造工学部の末永慶寛学部長は「藻場は海の基礎と言って過言ではなく、産卵場、餌場、保護育成場として大切で、幼魚、成魚ともに欠かせない場所」と強調する。人工魚礁では藻場の回復がみられており、「それ以外の場所でウニを駆除することで磯焼けの原因が食害だけなのかが解明できれば」と期待する。定期的にモニタリングを行い、3カ年計画で藻場再生への手がかりを得るのが目標だ。(和田基宏)
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