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<モーロクらんらん>(83)カバヤ文庫

産経ニュース / 2024年11月22日 18時15分

ボクのものになった最初の本、つまりボクが所有した初めての本らしい本はカバヤ文庫(カバヤ児童文庫)だった。

カバヤ文庫はカバヤキャラメルのおまけ(景品)だった。キャラメルの赤箱の中にカードが入っており、たとえば「カ・バ・ヤ・文・庫」と5文字をそろえると本1冊と交換できた。1枚だけでもらえる「カバの王様」というラッキーなカードもあった。

カバヤ文庫はずらりと菓子屋のガラスケースにならんでいた。学校への行き帰り、そのケースの前で、こんどはあの本をもらおう、とめぼしをつけた。ボクは小学4年生だった。

カバヤ文庫は世界の名作をリライトし、B6判125ページに収めたもの。1952年と翌年にわたって100冊以上が出た。1冊が5万以上、人気のあるものは何十万冊も出たというからすごい。もちろん、キャラメルもよく売れたのだ。この本、針金とじの簡略な製本だが、一応ハードカバーであった。

ボクは後にカバヤ文庫の創案者などに取材し、『おまけの名作―カバヤ文庫物語』(1984年)を書いたが、本とのボクの付き合いはこのおまけの本から始まったのだった。『レ・ミゼラブル』『アンクル・トム』『秘密の花園』などを風呂の焚(た)き口で火の番をしながら何度も読んだ。

『おまけの名作』を書いて分かったのだが、当時、ボクのようにカバヤ文庫に熱中した少年少女が全国にいた。カバヤ文庫は学級文庫などにもなり、当時のこどもたちにとっても愛されたのだった。

思い出話はとめどがなくなるのでもうやめよう。現在、カバヤ文庫は岡山県立図書館の「デジタル岡山大百科」で簡単に読める。アクセスをどうぞ。(俳人、市立伊丹ミュージアム名誉館長)

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