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ノートルダム大聖堂 「次世代に技術つなげられた」 修復参加の大工が回想 7日再開式典

産経ニュース / 2024年12月7日 14時30分

ノートルダム大聖堂の尖塔再建を振り返るブランシュリさん(三井美奈撮影)

2019年に大火災に遭ったパリのノートルダム大聖堂で7日、再開式典が行われる。5年間の修復作業には、建築業者や内装職人ら約2千人が参加した。焼け落ちた尖塔の再建にあたった大工の一人、アントニー・ブランシュリさん(43)が取材に応じ、「若い世代に技術を伝える貴重な機会だった」と振り返った。発言内容は次の通り。

生涯に一度の仕事、師匠の言葉思い出し

尖塔再建は4社の分業で、私は昨年1月に作業に参加しました。指物師だった経験があり、彫刻の作業もできるということで上司に指名されました。12~15人のチームを束ねました。

尖塔は19世紀の建築家ウジェーヌ・ビオレルデュックの作品です。当時の文書や写真を調べて設計士が描いた図面をもとに、私たちのチームが3カ月かけて塔の側壁や土台の模型を作りました。素材はすべてオーク材。主に、仏東部ブルゴーニュ地方で伐採された木です。

生涯に一度の経験で、最初は「本当にできるのか」と不安でした。時間の制約でイライラしたこともあります。そんなとき、「複雑なことは何もない。すべて単純なことの積み重ね」という師匠の言葉を思い出し、目の前の作業だけに集中しました。

私はフランス中西部に住んでいて、ノートルダム大聖堂に行ったことがなかった。以前は「有名な観光地」としか思っていませんでした。19年の火災は出張作業中で、ホテルのテレビでぼんやり見ていました。しかし、今回の仕事を通じてビオレルデュックの才能に驚きました。同じ曲線の木材が四重、三重に組まれ、それをあわせて大きな作品に仕上げていく。見えない細部に工夫がある。真の傑作です。

800年の歴史持つ大聖堂には各時代の技術

会社のアトリエで造った部品を塔に組み上げるため、大聖堂に入ったとき、みんなの作業を見て神聖な場所だと実感しました。800年かけて造られた建築に、各時代の技術が詰まっている。19世紀の尖塔は現代の建築工法とほぼ同じなので、私は普段使っているのこぎりを使えましたが、中世建築の部分を担う職人は、中世と同じように斧を使って作業していました。

学校では歴史的建築物の造り方は学べません。私は16世紀の王宮や12世紀の教会修復で、先輩と仕事しながら現場で経験を積みました。伝承とは技術だけでなく、人から人へ精神をつなぐことです。今回のチームには18歳の見習い工のほか、「私も参加させて」と言って米国からやってきた50~60代の2人のベテラン職人もいました。チームをまとめるのは大変でしたが、みんなが誇りを持ち、やり遂げた仕事に満足しているのが嬉しい。私の16歳の娘や妻も「誇りに思う」と言ってくれました。

作業のため大聖堂の屋根にのぼったとき、パリの全景を見晴らせました。一生の思い出です。昨年12月、尖塔の頂上に黄金の風見鶏が設置されたのをみんなで見上げ、感慨を分かち合いました。大聖堂は火災の経験から、スプリンクラーや防火扉があちこちに設置されています。火災を教訓に各地の古い教会で防火整備が進んでいます。(聞き手 パリ 三井美奈)

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