国連総会に向けて日本に期待すること 陳銘俊の一筆両断
産経ニュース / 2024年9月24日 8時30分
今年の国際連合総会(UNGA)は9月10日から30日まで米国ニューヨークで開催されている。現在の国際状況を見れば、ロシアのウクライナ侵攻は泥沼の状態、イスラエルとハマスの紛争の再発、そして世界各地の自然災害や内戦による難民の発生など、極めて不穏な状況にある。それにもかかわらず国連は、国際紛争や人道支援への対応では、機能不全と言わざるを得ない状況にある。
一方、台湾には活力的な民主主義、先進的な医療制度、世界をリードする半導体産業があり、国連や国際社会に貢献できる能力と強い意思を持ち合わせている。ところが、中国の圧力と国連第2758号決議の歪曲(わいきょく)解釈により、台湾は国連システムから排除され続けてきた。国際的に孤立しながらも、台湾は覇権主義の拡大に対抗するインド太平洋地域の前哨基地となるべく努力を続け、各種災害における人道的な救援活動にも熱心に協力している。
その台湾の姿勢と実績に対し、欧州連合や米国の認識は年々高まり、強く支持されてきている。最近、欧州連合と米国は国連第2758号決議に対する反論を発表した。すなわち同決議では中国が台湾を代表して国連に参加することを認めていないことを明示したのである。民主主義諸国は台湾の国連参加の必要性と国連への貢献の可能性を重視し、期待を高めているのである。
しかしながら、日本は安全保障や国際問題において、山積する課題に直面しながら立ち往生しているように見える。安全保障面では北朝鮮が昨年、大陸間弾道ミサイルの発射能力を強化するため、過去最多のミサイルを発射し、偵察衛星をも打ち上げた。また中国は最近、偵察機を長崎県「男女群島」沖の領空に侵入させ、ほぼ時を同じくして、中国海軍の調査船も鹿児島近海の領海に侵入した。中国によるこのあからさまな主権侵害は単に日本の安全保障上の問題にとどまらず、インド太平洋地域の平和を脅かすものなのである。
また、日本がウクライナを支持したことに対し、ロシアはその見返りとして北朝鮮との軍事的な関係強化を推進し、さらに中国と協力して東シナ海や南シナ海で頻繁に軍事演習を行った。このような核を保有する独裁国家3カ国の武力による現状変更の意図は、日本や台湾を含むインド太平洋地域諸国の安全に対する大きな脅威となっている。
今こそ日本は地域の安全保障と平和のために、同じ価値観を共有する民主主義諸国と手を結び、ともに防衛と抑止を行う必要がある。台湾は日本と地理的に近いだけでなく、長い友好の歴史がある。安倍晋三元首相が喝破された通り、台湾有事は日本有事であり、日本有事は台湾有事であることは明白で、日本と台湾は文字通り運命共同体なのである。
両国の存続がかつてない脅威にさらされている今、日本が台湾の国連システムへの加盟を支持することは、双方にとって大きな利益となるばかりか、国際平和に対する多大な貢献につながることになると考える。日本が欧米の民主主義国家とともに台湾の国連加盟を支援してくれることを大いに期待するものである。
陳銘俊(ちん・めいしゅん) 台北駐福岡経済文化弁事処長。1964年3月、台湾東部、花蓮県生まれ。台北市の中国文化大韓国語学科を卒業後、台湾外交部入り。大阪外国語大(現大阪大)や慶応大への留学経験がある。カリフォルニア大学バークレー校、ハーバード大学客員研究員。許世楷・台湾駐日代表(当時)の補佐官や台北駐ボストン経済文化弁事処の副処長などを歴任し2018年7月から日本の内閣官房にあたる台湾総統府で機要室長を務めた。2021年10月から現職。趣味は語学研究。
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