“風台風”が巻き起こす塩害、各地に爪痕なお 紅葉シーズン控えイチョウにも被害

産経ニュース / 2018年10月13日 0時5分

台風が吹き上げた塩分により海側だけ枯れとみられるイチョウの葉=11日午前、神奈川県鎌倉市

 相次ぐ“風台風”の襲来で、海水から吹き上げられた塩分が陸上に飛散したことによる「塩害」が深刻化している。台風通過後に電柱と電線の接続部分に塩分が付着してショートし停電被害が広がったが、農作物や行楽シーズンを控えた観光地のイチョウが枯れるなど、いまだに尾を引いている。「今後どこまで被害が広がるのか」。関係者は頭を痛めている。

イチョウ枯れる

 JR鎌倉駅(神奈川県鎌倉市)から鶴岡八幡宮に向かう参道を彩るイチョウ。陸側は紅葉前の青々とした葉が残るが、海側の葉は完全に枯れた。「まだ色づいてもいないのに」。11日に観光に訪れた横浜市の本多幸子さん(61)はため息を漏らした。

 鎌倉市などによると、海からの風が直接吹き込み、台風が巻き上げた塩の影響を受けた可能性があるという。市内では他にも被害が確認されたが、見た目では分からない影響を受けている木もあるとみられ、担当者は「11月の紅葉シーズンが来るまで全容は把握できない」と途方に暮れる。

電線火災も発生

 塩害は、9月末に列島を縦断した台風24号がもたらした。太平洋沿岸で海から陸へ南からの暴風が吹き荒れ、海水の塩分を飛散させた上、その後まとまった降雨がなく、塩分が残留したことが原因とされる。

 台風通過直後には、各地で電線から火花が出る被害が確認された。電力中央研究所(東京)の本間宏也上席研究員によると、風で飛散した海水の塩分が電柱に電線を固定する「碍子(がいし)」と呼ばれる電気を通さない部分に付着。その後の湿気で電気を通しやすい塩水がついた状態となり、ショートした可能性が高いという。

 京成線でも送電線から出火、長時間運休するなどし、約50万人に影響が出た。京成電鉄によると火災は海から離れた塩害対策をとっていない場所だけでなく、対策済みの地点でも発生。担当者は「今後調査を踏まえて対策を検討していきたい」としている。

農作物や車も…

 被害は今でも多方面に及ぶ。JA千葉中央会によると、千葉県内では沿岸部のほかに内陸部でも被害を確認。葉が枯れるといった直接被害のほか、土に浸透した塩分による生育への不安もあり、すでにニンジンなどの生育不良も確認。関係者は「植え直しも考えなくてはならないし、被害の全容も見えない」と訴える。

 洗車場でも異変が出ている。台風の通過直後から、週末になると車列が絶えない。東京都江戸川区の男性会社員(45)は新車の納車直後に台風が通過。すぐに車体を洗い流したが、内部への影響も心配だという。「納車日をずらせばよかった」と悔いる。

 洗車の列にいた会社員の関智和さん(42)も「窓や車体がベタベタになっている。さびる可能性があると聞いたので早く洗い流したい」と話す。

 本間上席研究員は「塩に強い碍子をもっと内陸部にも導入するなど、対策が必要だ」と話している。

■塩害から家、車、草花を守るには…

 台風による塩害への対策はあるのか。防災住宅研究所によると住宅の金属部分は塩分に弱く、さびやすい。担当者は「安全を確認してから真水で洗い流すなどの作業が必要になる」と話す。

 一方、乗用車などは塩分を浴びるとさびる可能性が出てくる。オートバックスセブンによると、時間が経過して塩分が完全に金属部分に固着した場合、こすると傷になる恐れがある。

 このため担当者は、無理に落とそうとせず、専用の粘土のクリーナーを車体に押しつけながら丁寧に清掃することを勧める。

 家庭の草花も海水をかぶると枯れる可能性がある。農林水産省園芸作物課の担当者は「事前に動かせるものは屋根の下や屋内に動かしておくのがベストだ」と説明する。

 一方、大きなものなどは「一時的にビニールをかぶせるのも有効。その場合は風で飛ばされない工夫も必要だ」。仮に海水をかぶってしまった場合は、真水で洗い流すしかないという。

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