30回目の「世界文化賞」へ 選考は真剣勝負、白熱の議論

産経ニュース / 2018年5月17日 11時22分

記念撮影に応じる第29回受賞者たち。(左から)ミハイル・バリシニコフ、ユッスー・ンドゥール、シリン・ネシャット、ラファエル・モネオ、エル・アナツイの各氏=平成29年10月17日、東京・虎ノ門のホテルオークラ東京(福島範和撮影)

 今年30回目を迎える「高松宮殿下記念世界文化賞」。優れた芸術の世界的な創造者たちを顕彰するため、公益財団法人日本美術協会(総裁・常陸宮さま)が昭和63年5月19日に東京都内で会合を開き、創設を決めた。芸術分野全般を対象にした日本初の国際顕彰の受賞者はどう選ばれてきたのか。選考に至る1年を振りかえる。(渋沢和彦)

世界から“贈り物”

 毎年新年には、世界から大量の“贈り物”が東京に届く。世界文化賞の候補者リストだ。対象は、絵画▽彫刻▽建築▽音楽▽演劇・映像の5部門。選考は、6カ国6人の国際顧問のもとに設置された各部門の専門家からなる推薦委員会が、候補者リストを作るところから始まる。

 歴代の国際顧問には、フランスのシラク元大統領や、西ドイツのヘルムート・シュミット元首相、統合ドイツ元初代大統領のリヒャルト・フォン・ワイツゼッカー氏らそうそうたる世界のリーダーが携わってきた。

 「芸術は最も広い意味で国際理解への最もやさしい道。この賞は人間の創造力を最も良く発揮して協力する機会を与えてくれる」(昭和63年、シュミット元西独首相)との言葉が世界文化賞の意味を示している。

 過去29回の受賞者総数149人のうち当初は欧米出身者が中心だったが、近年はアジア、アフリカからが増えた。調査は全世界の芸術家や団体を対象に行われ、1月から2月にそれぞれ各部門ごとに3、4人の候補者リストが各国の国際顧問から寄せられる。リストを元に、日本美術協会が設置する日本の選考委員会(5部門計26人)を開催。誰が受賞者に決まるのか、緊張する瞬間だ。

 選考委員のメンバーには、美術評論家で大原美術館の高階秀爾(しゅうじ)館長(絵画・彫刻部門)ら各部門で一流の専門家が名を連ねる。毎回、名実ともに世界的なアーティストを選出。「どんな候補者がリストに入るのかわくわくしています。しかし、選ぶのは真剣勝負です」と高階館長が話すように、白熱した議論は2時間を超えることも珍しくない。

「純粋な賞」に注目

 世界文化賞の選考基準は「顕著な実績を持ち現在活躍し、将来の業績を嘱望される芸術家であること」(同協会事務局)。具体的な選考経過は秘密とされ、最終的に理事会により受賞者が決定される。

 例年は9月(今年は7月)に、国際顧問のいるニューヨーク、ロンドン、パリ、ベルリン、ローマ、東京で同時に受賞者が発表され、多くのメディアが詰めかける。

 昨年は、現代イラン社会を生きる女性たちの抑圧された状況を写真や映画などで表現したイラン出身のシリン・ネシャットさん(絵画部門)が選ばれた。東京やニューヨークでの記者会見では、「受賞には政治的な背景があるのか」といった質問も飛びだしたが、「政治的背景はない」と答えた。同賞が芸術の純粋な賞として、海外メディアから注目されていることを示すエピソードだ。

芸術家へ感謝の意

 秋深まる10月には華やかな授賞式が待っている。同協会総裁の常陸宮さまを迎え、東京・元赤坂の明治記念館で厳かに執り行われる。

 同賞創設時から平成17(2005)年に亡くなるまで国際顧問を務めたエドワード・ヒース元英首相は「この賞はわれわれの精神生活を豊かにし、文化の発展を担う世界の芸術家への感謝の意の表明である」と語っていた。

 カクテルレセプションや祝宴が開かれ、著名な文化人や政財界人、各国大使ら約300人が出席。受賞者を囲み国境を超えて交流の輪が広がる。12年前、スティーブ・ライヒさん(音楽部門)のもとには日本を代表するサックス奏者の渡辺貞夫さんが駆けつけ「おめでとう」と満面の笑みで祝福。ジャズ談議で盛り上がった。芸術に国境、民族、言葉の壁がないことを実感させるひとときだ。

産経ニュース

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