見直される「祈り」や「追悼」 企業・団体が垣根越え意識喚起

産経ニュース / 2019年3月15日 9時47分

「祈りの日」に合わせたイベントで揮毫をすることになっているダウン症の書家、金沢翔子さん

 現代社会のなかで希薄化が指摘されている「祈り」や「供養」「追悼」といった感情について、意識喚起をしようという動きが供養産業や宗教界のなかで広がっている。希薄化に対する強い危機感が、企業や団体などの垣根を越えた連携の背景となっている。

 ◆3月27日、記念日に

 平成27年に立ち上がった供養関連業者などの横断組織「小さな祈りプロジェクト PRAY for (ONE)」では、3月27日を「祈りの日」に制定して、啓蒙(けいもう)活動に取り組んでいる。685年3月27日に、天武天皇が発した詔(みことのり)に「家ごとに仏舎をつくり供養せよ」という趣旨の文言があることにちなんだ。

 プロジェクトは「現代人は『誰かのために祈る』という時間を失いつつあるのではないか」と危機感を持った仏壇業者「保志」(福島県)が中心となった。

 同じような危機感を持つ、墓石、供花、仏具、各宗派の寺院などに広がり、67の企業や団体、宗派が名を連ねるまでの運動体になっている。

 プロジェクトでは、祈りの気持ちを持ちながら鶴を折る活動を広めている。また、今年の祈りの日には日蓮宗の本山・池上本門寺(東京都大田区)で記念法要をするほか、ダウン症の書家として活躍する金沢翔子さんを迎えて「祈りの揮毫(きごう)」を披露してもらう。午後1時半からの記念法要と揮毫は、祈りの大切さを共感してもらいたいとして、一般の参加も受け付けることにしている。

 事務局では「日常生活の中で小さな祈りをすることが、心や生活を豊かにしていくことに気づいてもらえればうれしい」と運動の広がりと、催しへの参加を呼びかけている。

 ◆「供養の日」も登場

 3月27日が祈りの日なら、9月4日はその語呂から「供養の日」だ。墓石葬祭業者の「メモリアルアートの大野屋」(東京都)が呼びかけて平成29年に「供養の日普及推進協会」を設立。法要やシンポジウムなどで、供養の大切さを伝える活動をはじめている。

 同社の調査で「お墓参り」「役割を終えた道具や人形」などに対して「大切だが何をしていいか分からない」という人が多くいたことに危機感を持ったことが活動のきっかけだ。

 例えば、葬儀に関しては27%もの人が、「大切だが何をしていいか分からない」と回答。「お墓参り」に関しても同様の回答が17%にのぼった。

 推進協会には、供養に対する意識の希薄化に危機感を持つ寺院、葬儀、墓石業者を中心に80を超える企業、団体、宗派がパートナーとして協力するまでになっている。

 ◆亡き母の日に手紙を

 5月の第2日曜日、「母の日」に亡くなった母に対して感謝の祈りをささげようという運動も、企業を横断した取り組みとして始まっている。お線香の「日本香堂」が「母の日参り」とネーミングして事務局を立ち上げ21年から提唱したところ、「JAグループ和歌山」「日本石材産業協会」「日本郵便」など12の企業団体がパートナーとして名を連ねるまでに広がりを見せている。

 昨年は「亡き母への思いをつづった手紙」を一般公募してコンクールを企画したところ、小学生から90代まで、1857通もの作品が寄せられたという。

 今年も3月末に締め切りを設けた手紙の募集が始まっている。寄せられた作品は“母を送った世代の代表”として、俳優の草刈正雄さんが審査委員長を務める選考委員会で優秀作が選ばれ、4月末にメディアなどで披露される計画だ。

 草刈さんは取り組みの意義を踏まえて、「ずっとつながっている母との絆がある。それを心の糧として今日を前向きに生きる方たちからのすてきな作品を楽しみにしています」とコメント。事務局では「母の日参り」を供養や感謝の気持ちを喚起する記念日のひとつとして定着させていきたい考えだ。

 それぞれの団体の取り組みは、ホームページなどで紹介されている。(「終活読本ソナエ」編集部)

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