【経済インサイド】エコノミスト「専門家ほど読み間違える」 3万円突破の株価も「新常態」に
産経ニュース / 2021年2月21日 6時1分
新型コロナウイルス禍で株式市場が活況を呈している。下地となっているのは、未曾有の金融緩和で生じた過剰流動性相場だ。これに新型コロナのワクチン普及や企業業績改善への期待が重なった。ただ、多くの投資家はリスク選好に傾きながらも、株高傾向がどこまで続くのか警戒心を抱く。さらに、SNS(会員制交流サイト)でつながった個人投資家集団が一大勢力として台頭するなど、市場は「新常態」の様相もみせ始めた。
米ダウ工業株30種平均は2月に入り、3万1000ドル台をつけ、過去最高値を更新。日経平均株価も3万円を超え、約30年半ぶりの高水準をつけた。上昇ピッチの速さには過熱感も一部で指摘される。
だが、多くの株式ストラテジストは当面はこの株価上昇トレンドが大きく崩れることはないとみている。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が10日の講演で金融緩和の長期化を示唆したのに続き、イエレン米財務長官が12日、先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で「今こそ大胆な財政出動に踏み切るときだ」と訴え、大胆な金融・財政政策を続ける必要性を強調したことが大きい。
日本では、ワクチン接種がいよいよ始まり、経済活動正常化への機運が高まってきた。製造業を中心に企業業績の回復も進む。日経平均について、年内の上値のめどとして3万円台前半を予想する声が目立つ。
日本証券業協会の鈴木茂晴会長は17日の記者会見で「希望的観測だが、今後2、3年は上昇トレンドが続き、平成元年末につけた過去最高値(3万8915円)を上回るのではないか」と語った。
マネーの行き先は株式以外にビットコインや原油、プラチナなどさまざまなリスク資産に及ぶ。ビットコインは今月16日に初めて5万ドルを突破。米電気自動車メーカーのテスラによる投資が判明したことで、一段と投機色を強めている。
こうした中、多くの投資家が気にしているのが、「経済の基礎体温」と呼ばれる長期金利の動向だ。世界の金利に影響する米国10年債利回りは今月に入り一時、約1年ぶりの高水準となる1・3%台に浮上した。昨年夏には0・5%程度まで低下していた。
景気回復への期待から来る「いい金利上昇」であるうちはいいが、市場では、FRBがどこかの時点でインフレへの警戒を伴う「悪い金利上昇」とみなし、金融引き締めに動くのではと警戒する向きがある。
このように、一般的な株式投資家は株価指標や企業業績を分析したり、将来の金融政策変更を予測しながら投資戦略を立てる。
一方、コロナ禍の株式市場では、定石通りに行かない現象が散見されるようになった。個人投資家がSNS上で〝結託〟し、米市場でゲーム販売店など特定銘柄の株価をつり上げ、値下がりを見込んだ取引をしていたヘッジファンドに巨額損失を負わせるまで追い込んだ「ゲームストップ・ショック」はその代表例だ。
通常の考え方では、株価が上昇すれば売り抜ける人が出てきて株価は調整される。ところがゲームストップ・ショックでは、「株式市場の民主化」を振りかざす個人がSNSで「絶対に売るな」と呼びかけ合ったとされ、不自然な価格形成となった可能性がある。
その動きは他の銘柄や銀先物にも飛び火した。米連邦議会が公聴会を開くなど、社会問題に発展している。
個人投資家集団はビットコインを新たな標的にしているとの見方も浮上する。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「ビットコインも通貨を中央銀行の管理から解き放つとのコンセプトで生み出された。権威への抵抗という点で(株式市場の民主化を目指す動きと)共通している」と指摘する。
一見すると説明しづらい株価の急変動はほかにも起きている。昨春のコロナショックでは、相場の変動率が高まると株式の保有比率を減らす「リスクパリティ」と呼ばれるリーマン・ショック後に開発された投資手法が株価を急落させたとされる。
エコノミストの豊島逸夫氏は「株式投資は異次元の新常態に入りつつある。ベテランほど読み間違える相場になった」と話している。(経済本部 米沢文)
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