【WEB編集委員のつぶやき】北ミサイルは米本土を捕らえた 刃を突きつけられ「レッドライン」迫る

産経ニュース / 2017年5月20日 7時35分

 「レッドライン(最後の一線)」にまた一歩近づいた。

 北朝鮮は14日早朝、北西部の亀城付近から弾道ミサイル1発を発射した。高度は2千キロを超え、800キロ近く飛行した後、日本海の公海上の目標水域に正確に着弾させた。

 発射されたのは新型中長距離弾道ミサイル「火星12」。通常の角度で打ち上げれば射程が4千〜6千キロ超に達し、性能は米本土を狙う大陸間弾道ミサイル(ICBM)の「一歩手前まできた(自衛隊幹部)と見られている。

 米国はオバマ前政権による「戦略的忍耐」で北を野放しにし、のど元に刃を突きつけられる結果を招いた。トランプ政権は「レッドライン」をあえてつまびらかにしていないが、間近に迫っていると見て間違いない。

 発射には金正恩朝鮮労働党委員長が立ち会い、米韓などが「正気を取り戻し、正しい選択をするまで」核兵器やミサイルの増産と実験準備を進めるよう命じた。

 朝鮮中央通信によると、今回のミサイルは「周辺国の安全を考慮して最大高角で発射した」とし、日本政府も高角度で飛距離を抑える「ロフテッド軌道」で打ち上げたと分析している。落下速度が速く迎撃が難しいとされる。

 韓国の専門家の間では、米アラスカ州も射程に入る5千〜6千キロ超に達するとの見方もある。射程5500キロを超す弾道ミサイルはICBMに分類される。

 金委員長は、トランプ政権に対し、「軍事的挑発を選ぶなら喜んで相手をする準備が整っている」と豪語した。

 稲田朋美防衛相は16日、北ミサイルの落下地点が北海道の奥尻島から約450キロの日本海上で、日本の防空識別圏(ADIZ)内だったと明らかにした。

 国連安全保障理事会は、北朝鮮による4月29日と5月14日の弾道ミサイル発射について、安保理決議の重大な違反として「強く非難する」との報道声明を発表した。報道声明発表には安保理の全15カ国の賛同が必要だが法的拘束力はない。

 今回の報道声明では、北朝鮮によるミサイル発射に、「最大限の懸念」を表明。また、北朝鮮に影響力を持つ中国やロシアを含む安保理の理事国が、「北朝鮮に対する制裁の履行徹底を誓った」と明記したそうだが、北は痛くもかゆくもなかろう。

 米国のヘイリー国連大使は金正恩氏を「パラノイア(偏執狂)の状態だ」と非難した。「彼は周りの全てのことを信じられないほど懸念している」と論評した。

 しかしながら北朝鮮がミサイルを発射した14日は、習近平国家主席が提唱した現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」に関する初の国際会議の開幕日で、中国が今年最大の外交イベントとして準備してきた会議だった。中国最高指導者は顔に泥を塗られた。

 中国はトランプ米政権からさらなる対北圧力強化を求められると同時に、国内でも対北批判の世論が広がりかねないようだ。

 韓国に対しては、北朝鮮に融和的な文在寅氏が大統領になるのを待って発射に踏み切ったとみられ、周到に準備、計画されたものだ。文大統領はNSCで「北との対話の可能性を開いているが判断を誤らないよう挑発には断固たる対応をすべきだ」と述べ、苦渋をにじませた。

 我が国の民進党は岡田克也・党安全保障調査会長名で「強く非難する」との談話を発表、「今後特に重要なのは、日米はもとより、日中、日韓の首脳レベルでの迅速かつ緊密なコミュニケーションである。政府にはさらなる外交努力を求めたい」とも訴えたそうだ。

 蛇足ながら、この国難に鳩山由紀夫元首相は相変わらずの宇宙人ぶりを発揮している。鳩山氏はツイッターで、一帯一路の国際協力サミットフォーラムについて、「習近平主席の演説は高い評価です。一帯一路の目的は1に平和、2に繁栄です。何か日本が取り残されている感があります」と指摘した上で、ミサイルの発射について、「北朝鮮がミサイルを発射したようですが、誰一人言及しませんでした。日本では騒いでいるようですね」とまったくの他人事で、かつて首相を務めた人物の発言だけに、背筋が寒くなる。

 岸田文雄外相は16日、ティラーソン米国務長官と電話会談を行い、「対話のための対話では意味がなく、今は圧力をかけるべきときだ」との方針で一致した。

 民進党がいう「外交努力」や国連の声明、経済制裁は空虚だ。時間が経つほど状況は悪化しており、悲しいかな「軍事力」以外に方法が見当たらないのが現実だ。

(WEB編集チーム 黒沢通)

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