【古森義久のあめりかノート】米国の微妙な「韓国疲れ」

産経ニュース / 2019年1月12日 16時4分

 ワシントンと東京と、いまの共通項は「韓国疲れ」のようだ。この表現はかつて米国の専門家が日本の「韓国には、もうほとほと」という心情を指して使っていた。だがその後、米国に伝染したようなのだ。ただし米側での韓国へのうんざり感はずっと微妙で屈折している。

 まずトランプ政権からは北朝鮮非核化への文在寅(ムン・ジェイン)政権の態度への不満が表明される。最も明確なのはマイク・ポンペオ国務長官の昨年11月の文政権への警告だった。「米国は韓国に北朝鮮の核兵器の完全破棄が進まないまま経済利益だけを与えないように告げている」と公式に言明したのだ。

 トランプ政権は文政権が北朝鮮との共通の鉄道やパイプラインの開通、さらには韓国企業の北への投資を語り始めたことに難色を示す。文大統領が北の核完全破棄という米国の最大目標を軽視して、北が求める軍事緩和、経済交流ばかりに傾くという不満だった。

 しかしトランプ政権は北への対処には当面、韓国との連帯が不可欠だから、露骨な文政権批判は避けようとする。だが保守主義のトランプ政権と超リベラルの文政権と、世界観にまで及ぶ本音の違いは常にちらついてしまう。トランプ大統領も昨年9月、ツイッターで「韓国政府の宥和的な対話はうまくいくはずがない」と、つい本音の文非難をもらしてしまった。

 もっとも文大統領も米国に向かっては米韓同盟堅持など現状保持策を語ってみせる。韓国内や北朝鮮に向けてとは異なる態度である。このあたりは米韓同盟の否定に等しい言動をみせて、対米関係の危機を生んだ廬武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の轍(てつ)を踏まないという計算だろう。

 米国側でトランプ政権の外となると、文政権批判は激しい。新米国安全保障センターの朝鮮問題専門家クリスティーン・リー氏は「文陣営には北朝鮮にとてつもなく楽観的な人が多く、核廃棄を重視しない点でトランプ政権とは重大な距離がある」と論評した。

 AEI研究所の国際安全保障専門家マイケル・ルービン氏は文政権の教科書改訂策を取り上げて「北朝鮮の残虐や侵略の歴史を消す洗脳教育を目指す文政権とは米国は同盟を保つ意味を失う」と主張した。要するにいまの韓国は米国にとってなんともつきあいにくく疲れる相手なのである。

 いわゆる徴用工問題での日韓対立に対しても米国側は韓国への批判をにじませる。米日韓三国の協調の戦略的必要性から韓国をあからさまに糾弾はしないが、韓国での判決に対して「この判決は北朝鮮の核の脅威と中国の覇権拡大を抑えるための米日韓三国の協力を妨げることとなる」(ABCテレビ)という論評が多かった。

 ニューヨーク・タイムズの徴用工訴訟の判決を報じた記事も、末尾でスタンフォード大学東アジア研究所のダニエル・スナイダー氏の「韓国政府の判断に強い疑問を感じる」という総括を強調していた。同氏は日韓の歴史問題では韓国側を支持することの多い朝鮮研究学者である。

 さて米国のこんな現状は韓国への対処に悩むのは日本だけではないという気休めにはなるだろうか。(ワシントン駐在客員特派員)

産経ニュース

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