北の対韓強硬策、与正氏が前面に 軍への影響力誇示

産経ニュース / 2020年6月24日 23時4分

 【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権に対する軍事的な報復措置を「保留」した背景には、一連の対韓揺さぶり策で一定の効果を収めたとの判断があるようだ。ただ、北朝鮮は、文政権に米国主導の対北制裁路線と決別するよう迫っており、南北の劇的な関係修復は期待しにくい。

 「実質的なナンバー2の権限を行使している」。韓国の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相は22日、国会で、開城(ケソン)の共同連絡事務所の爆破など対韓強硬策を主導してきた正恩氏の妹、金与正(キム・ヨジョン)党第1副部長についてこう指摘した。

 与正氏が「悪役」を引き受け、南北や米朝関係で政策的変化がある際に、正恩氏がようやく前面に出て自らの権威を確固たるものにする狙いとの見方だ。正恩氏は重要会議でも南北問題に言及せず、静観するかのような構えを見せてきた。

 与正氏が対南政策を取り仕切っていることは、メディアを通じ住民にも知らされてきた。北朝鮮で最高指導者以外の指示が詳細に公開されるのはまれだ。兄の補佐役から脱皮し、金日成(キム・イルソン)主席直系の血族として存在感を十二分に印象付けた。

 正恩氏が金正日(キム・ジョンイル)総書記の後継者として公式登場した2010年には韓国哨戒艦撃沈や延坪島(ヨンピョンド)砲撃など軍事的挑発が相次いだ。韓国の専門家は、与正氏が今回、軍に影響力を振るう姿を誇示したのもこれに似た権威付けの過程だと分析する。韓国への敵意をあおってきたことで、新型コロナウイルス対応で鬱積した住民の不満をそらす効果もあったと判断した可能性がある。

 韓国では、与党代表が正恩氏の「決断を歓迎する」と述べ、対話再開への期待も広がる。だが、米国や中国は米中対立や新型コロナに忙殺され、北朝鮮が外交攻勢を仕掛ける先は韓国しかなかった。与正氏は「親米屈従」と韓国を批判し、北朝鮮問題を協議する米韓の作業部会を問題視した。文政権が北朝鮮の要求をのんで対米協調から離脱することは難しく、南北対話の復旧には大きな溝がある。

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