【関空不全~台風21号の爪痕(上)】「連絡橋にタンカー」の衝撃映像、世界に…止まったヒトとモノの動き

産経ニュース / 2018年9月14日 12時7分

関空の惨状、動画やSNSで瞬く間に世界へ

 「大阪に行くのはもう無理でしょうか」

 猛威を振るった台風21号が西日本を抜けた今月5日、マレーシアの首都、クアラルンプールの旅行代理店では、問い合わせの電話が鳴り続けていた。現地の女性社員は「関西国際空港の映像を見て、電話が殺到している」と悲鳴を上げた。

 高潮による浸水で関西国際空港は一時閉鎖。関空と対岸とを結ぶ連絡橋が破損し、観光客ら数千人が施設に取り残された惨状は、ニュース動画やSNS(会員制交流サイト)を通じて、瞬く間に世界に伝わった。

 大波がタンカーを連絡橋に押しつける様子が流れたNHKの海外向け放送動画は13日夜までに60万回再生された。サイトに寄せられたコメントは千件近くにのぼり、「関空は立地が悪いと前から思っていた」「関空は回復できないだろう」と悲観的な感想もつづられた。

 大阪観光局の溝畑宏局長は「人々の脳裏にあるのは、タンカーの連絡橋への衝突と車が吹き飛ばされている映像。風評被害が怖い」と話す。災禍は世界の注目を集め、2025年の国際博覧会(万博)と統合型リゾート施設(IR)の誘致を目指す大阪にとっても、関空の災害対策は新たな課題となった。

「消費24億円減」

 韓国の旅行代理店大手「ハナツアー」の大阪営業所では、関空の被災から1週間、同国からの団体旅行が完全にストップした。

 関空の第2ターミナルビルを使って、格安航空会社(LCC)、ピーチ・アビエーションが順次路線を再開したが、「今月は団体旅行は難しい。10月以降、様子を見るという感じになる」とハナツアーの担当者は話す。

 関空全体での路線再開の計画が不透明では、旅行客を呼び戻せない。SMBC日興証券は関空の国際線閉鎖で、1日あたりの訪日客消費が24億円減ると試算。打撃は大きい。

輸送コスト増加

 物流では関空が復旧しない中、ほかの空港への振り替えが相次いだが、コストの増加という問題が浮上している。

 高級ブランドとしてアジアで人気の岡山産ブドウ。関空からの輸出は中部、成田、福岡空港などに振り分けられた。トラックでの輸送距離が延びており、JA全農岡山は「コストが商品価格に影響する可能性がある」(担当者)と明かす。

 最上級のピオーネは約6500円(5キロ)、シャインマスカットは約1万3千円(同)で大阪の市場に出荷している。「輸送コスト分について、仲卸業者は仕入れ単価を下げて、まかないたい。価格が下がらないと、市場で買い手がつきにくい事態になるのでは。農家にとっては苦しい」と頭をかかえる。市場の取引価格が500~千円ほど下がりかねないとの心配の声もある。

 モノ作りの現場も混乱した。電子部品メーカー、ロームは成田、中部空港などを使った空路の確保を急いだ。同社は半導体などの部品を生産し、それを海外工場に空輸して完成品を作る「グローバル・サプライチェーン(部品供給網)」を形成する。輸出が滞れば、製造工程が寸断する恐れがあったからだ。

 神戸大学大学院の竹林幹雄教授(国土計画)は「閉鎖が長期化すれば、韓国・仁川空港など隣国に貨物のハブ(拠点)が移ることもありえる」と指摘。「大災害が起きたときは、地域全体で対応が必要になるということが教訓。空路が使えなければ、陸路でどう関西に訪日客を呼び込むか。関空だけの問題にせずに、政財界全体で考えていくべきだ」と話す。

◇ 

 台風21号による高潮被害を受けた関空は海上空港としての弱点を露呈。機能不全に陥ったことで、訪日外国人客の入り口は閉ざされ、物流にも大混乱をもたらした。災害の爪痕から見える課題や教訓を探る。

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