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行ってみたらホントはこんなとこだった~人マネが稀有で貴重な存在である理由(ワケ)~

政治山 / 2015年11月26日 11時50分

 私は2014年度に人材マネジメント部会(以下、人マネ)に参加する機会をいただき、2015年度は仙台会場の運営委員として参加した。人マネに初めて参加した2014年度の1年を振り返りながら、人マネから学んだこと、そして部会がほかの研修とは全く違う、稀有(けう)で貴重な存在かを書きたいと思う。

先日開催したオフサイトミーティング(北川先生講演会)。たくさんの職員が参加。
先日開催したオフサイトミーティング(北川先生講演会)。たくさんの職員が参加

人材マネ部会 行ってみたらホントはこんなとこだった

【春】
<4月>

 盛岡市は、2014年度に初めて人マネへの参加を決定した。どのような「研修」かあまりよくわからず「研修という名目(公費)で東京へ行けてラッキー」と思いながら、1回目の部会に参加した結果、この「ラッキー」は2日間で見事に消え失せた……。2日間参加した感想は、「?」「もやもや」。「本当の笑顔?」「腹落ち?」「立ち位置?」「ダイアログ?」といったキーワード……。私の“お役所的公務員脳”は、「正解」を求め、ショートしていた。「答えは何? 結局この1年何をすればいいの?」、この答えがないことを知るのは、まだ先のことである。もやもやしたまま職場に帰り、研修担当に「何を学んできた?」と聞かれて、「……(無言)」となったことは言うまでもない。

<5月>
 とにもかくにも人マネの1年が始まったわけで、課題への取り組みが始まった。最初の課題は「組織の現状を整理する」。「現状?なんの現状だ?うーん、わからない」。が、そこは役所に入って10年超。可もなく不可もないであろう「答弁」を作り上げる。

 2回目の部会に参加してみると、「現状」といっても自治体ごとに違い、参加者の部署・役職ごとにいろいろな立ち位置があり、立ち位置を変えることで無限の切り口や見方があったのだということに気づかされた。自分がいかにドミナントロジック(悪い思い込み)に陥っていたことか……。「いつのまにか、つまらない公務員になっていたんだなぁ」と落ち込んだ。

<6月>
 次の課題は「キーパーソンとダイアログ(対話)」。自分たちがキーパーソン(組織内で影響力のある人)だと思った職員と面と向かい、シラフで話すのは、ありそうでない経験。実は庁内に多くの志のある職員がいて、熱い心をもち、実際に活動もしていることに改めて気づかされた。ダイアログすることで、論点が整理され、納得しながら新しい考えが浮かんでくる「ダイアログの魅力」に取りつかれ始める。

【夏】
 夏期合宿へ向けて施策作り。このころは、「ダイアログ、ダイアログ……」と念仏のように唱える日々。まさに「ダイアログ教」の熱心な信者の誕生である。ダイアログさえすればすべてがうまくいくようなシナリオの完成。もちろんそれではダメで、夏期合宿で幹事団のするどい突っ込みを受ける。

【秋】
 夏期合宿を経て、自分たちの施策を練り直す。が、夏期合宿で他自治体の発表を聞き、その施策を盲目的に取り入れたくなる。「隣の施策は青い」状態である。迷走、停滞状態が続くも、行動してみなくては始まらないと、ダイアログをする場をオフサイトで設定(オフサイトミーティング)。それとともに、人マネ通信を庁内へ発信した。

オフサイトミーティングの様子
オフサイトミーティングの様子

 活動すると決めるまで、「組織で浮いてしまって叩かれるのでは」という勝手な想像をしてしまい、勇気が必要だった。でも、活動に対し、周りは予想外に好意的で協力的で、不安は杞憂(きゆう)に終わった。また、夏期合宿を終えてなお、「ダイアログの場さえ作れば、あとはうまくいく」と思っていたフシがあった。しかし実際に活動すると、ダイアログの場だけで、参加者が勝手に気づき行動するとはならないのだということを身もって感じた。行動したことで、「ダイアログは、あくまでも1つの手法である」ということに、改めて気づくことができた。

【冬】
 職員の現状をもっと客観的に把握するため、職員の意識アンケートを取り、オフサイトミーティングを定期的に開催。活動も板についてきたように感じる。論文に向けまとめに入り、参加者3人でのダイアログでも「本当の笑顔」「腹落ち」「立ち位置」「巻き込み」などすっかり人マネ思考と人マネ用語が飛び交うようになった。

 最終回に当たる1月の第5回部会では、「人マネももう終わりだね~(しみじみ)」という私の気持ちを見透かすように、「人マネに終わりはない」という言葉。さすが人マネ、参加者の心はお見通しである。論文を3月ギリギリに書きあげ、怒涛(とう)の1年が終わった。

人マネが稀有で貴重な存在である理由

 さて、ここまで参加した1年を振り返ってきたが、人マネが稀有な存在であることを端的に表すと、「考え続けることで意識が変わり、行動できるという場を、1年を通してもたらしてくれていること」に尽きると思っている。

(1)研修ではなく研究の場 1年かけて考え続けることで自分事になる。

 春に初めて人マネに参加し、私の頭は「正解」を求めた結果、ショートした。研修担当にも「何を学んできた?」と聞かれていることからも分かる通り、多くの場合、「研修とは、知識を与えられ、蓄える場」であり、講師からの一方通行であり、一面的であると感じる。

 しかし人マネは、自分の組織についてとことん考え続ける。組織について、お酒を飲みながら愚痴を言うことはあっても、ここまで真剣に「よくしたい」「どうしたらよくなるのか」と考えたことはなかった。組織について考えるとき、問題の原因を自分以外の要因にしがちである。でも、深く深く考え、「自分はどうだろうか」と問いかけ続けていると、組織の問題は、実は「自分の問題(自分事)」であることがわかってくる。もし、悪い組織風土があるならば、それは勝手にでき上がるものではなく、「自分たちが創り上げているのだ」と気づく。つまり、組織を変えるというのは、自分が変わることなのだと気づき、腹落ちするのだ。これは、1年という長いスパンで絶えず考え続けることでしか得られないものだと思う。

 まさに、「研修」ではなく、「研究」「修行」の場なのである。

(2)自分事になれば、行動できる

 自分事で考えられるようになれば、行動しなくてはと思うようになる。1年を終えてみると、人マネのプログラムが実にうまくできていることがわかる。現状分析から始まり、キーパーソンとダイアログするという課題を経て、施策を考える。その後、施策の実行の際には周りを巻き込むことが必要になってくるが、一度接触しているのでそこではすでにキーパーソンを巻き込めるようになっているのだ。何度も考え、行動し、また考える……。1年を通し、PDCAサイクルを何度も回しているのである。多くの研修の場ではP(Plan)を学び、あとは職場で各自実施することになるが、実際はできないということが多いはずである。しかし、人マネは行動を求められるため、実際に行動しなければわからないことを体感できる。施策を実行すれば、すぐに組織内でダイアログが定着し、物事が対話で決まっていく……というほど、組織は簡単なものではない。だからこそ、何度も考え、行動し、また考えるというサイクルが必要なのだと思う。

 そして、一歩踏み出すのに(行動するのに)躊躇(ちゅうちょ)していても、同じ参加者や全国のマネ友(修了生)たちが同じように悩み、それでも一歩踏み出している姿を見ると、励まされ、勇気づけられ、自分たちも一歩踏み出すことができるのである。人マネは参加者の背中を優しく、そして力強く押してくれるのだ。

オフサイトミーティングの様子(副市長と)
オフサイトミーティングの様子(副市長と)

これから……人マネ参加者で行動し続けたい

 面白いもので、いったん自分事になり、PDCAサイクルを回し始めると、どんどん回し続けたくなるものである。

 今年度は盛岡市人マネ1期生として、運営委員として、一職員として、昨年度とはまた違う立ち位置で組織を見ることができている。そこで、改めてこれからの自分に何ができるかを考えて、6月に自主研修サークル「モリカフェ」を立ち上げ、庁内報の作成とダイアログの場づくりをすることにした。

庁内報 モリカフェプレス
庁内報 モリカフェプレス

 盛岡市の組織のことは、自分たちが一番よくわかっているし、自分たちにしかできないことがある。そして、自分たちのペースがある。組織風土が一朝一夕にでき上がるものではないように、組織はすぐに変わるものではない。しかし、その組織は、組織風土は、自分たちが創っていくのだ。その未来が、少しでもよいものになるように、行動し続けたいと思う。

 人マネに背中を押してもらい、一歩踏み出せた。一歩目を踏み出すのは怖くても、二歩目、三歩目は一歩目ほど怖くはない。これからも一歩ずつ着実に、楽しみながら活動を続けていきたい!

山田祐子さん
モリカフェを一緒に立ち上げた山崎翔さんと山田祐子さん(右)。モリカフェプレス(庁内報)を手に。

       ◇        ◇

自治体職員のスキルアップ研究会「早稲田大学マニフェスト研究所 人材マネジメント部会」研究生による連載コラムです。研修で学び得たもの、意識改革や組織変化の実例などを綴ります。

<岩手県盛岡市 財政部納税課 山田祐子>

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