議会基本条例制定後の次のステップは?
政治山 / 2015年3月18日 17時2分
攻撃しあう時代から、共感を拡げる時代へ!
2014年5月8日(木)日本創成会議・人口減少問題検討分科会は、人口移動が収束しない場合において、2040年には896(全体の49.8%)の市区町村で20~39歳の女性が5割以上減り、このうちの523市区町村では人口が1万人未満となり、このような自治体は女性が生涯に産む子どもの数が増えても人口を保つことができず「消滅するおそれがある」と発表した。これからの時代は、少子高齢化や人口減少が進み、地方自治体の財政事情も、ますます厳しくなる。
このような時代を迎えるにあたって、「私たちにはどのようなパラダイムシフト(※1)が求められるのであろうか?」。これまでのように、市民と議会と行政が互いに重箱の隅を突くように批判や攻撃を繰り返しても、物事を建設的に前に進めることはできない。
これからは、対話(ダイアローグ ※2)という手法によって相互理解を深め、共感を拡げていくことが大切だと私は考える。
これは、それぞれの立場を尊重し、一緒に課題を発見し、互いに知恵を出し合いながら、解決策を考え、取り組むことである。いよいよ、自治体の経営にもコーポレート・ガバナンス(※3)が、求められる時代になったのではないか? あるいは、民主主義社会における合意形成過程の在りかたとして、社会の課題を主体的に捉えて「他人ゴト」や他人任せではなく「自分ゴト」として、その解決に取り組みながら、市民参加を促進するソーシャル・ガバナンスを仕組み化することが、時代に必要とされているのではないか?
情報公開から、情報開放の時代へ!
これを実現していくヒントは、オープンガバメントにある。2009年1月21日アメリカ合衆国のオバマ大統領は「開かれた政府を進めるための覚書」に署名をした。オープンガバメントとはインターネットを活用し、政府(行政)を国民(市民)に開かれたものにしていく取り組みである。
一方、日本ではオープンガバメントラボのサイトで、オープンガバメントについて分かりやすく解説されている。
これらの取り組みの第一歩は、行政機関が保有する公共データ(地理空間情報、防災情報、統計情報など)は、市民の財産であるというスタンスで二次利用可能な状態で情報を開放することである。
ちなみに、筆者が上記、オバマ大統領の署名時の写真の二次利用にあたり、アメリカ大使館の広報担当者に電話で問い合わせをしたところ、「ホワイトハウスの公式ホームページ」内に掲載されている画像のうち、「クレジット表記がなされているもの以外は、データの二次利用に制限はない」とのことであった。
日本政府の動きとしては、2012年7月4日に、IT戦略本部(当時の野田首相が本部長)が、「電子行政オープンデータ戦略」を発表し、翌2013年6月14日には、安倍政権が閣議決定(2014年6月24日に改定)をした「世界最先端IT国家創造宣言」の中にオープンデータ・ビックデータの活用の推進について記載されている。
地方自治体の動きとしては、2015年3月13日現在、行政のホームページ上にオープンデータを公開している自治体は全国で111自治体となっている(「日本のオープンデータ都市一覧」jig.jp 福野泰介さん)。
この普及のスピードを国内の地方議会における議会基本条例の制定状況と比較してみると面白い。
地域のプロデューサーを育成しよう!
私が所属する流山市では2012年10月1日から福井県鯖江市、福島県会津若松市に次いでオープンデータ(CC BY)をスタートし、平成26年版情報通信白書(総務省)に、その取り組みが紹介された。
行政情報を見える化し、共有し、市民参加を促し、みんなで一緒に課題を発見し、その解決策を、みんなで考える。「言うは易し…」であるが、このことを推進するには、地域のプロデューサー(仕掛けをしてリーダーシップを発揮する人)が必要である。プロデューサーには社会人基礎力に加えて「情熱」と「責任感」と「判断力」をはじめ、周囲を巻き込む力やファシリテーション能力が必要とされる。そして、この役割を担うのに最も適しているのは、地方議員であると私は考えている。
議会基本条例は2006年5月に北海道栗山町が制定し、今年で10年目となる。朝日新聞社が本年1月中旬以降に、都道府県と市区町村の全1788議会を対象に実施した全国自治体議会アンケートによれば、議会基本条例を制定済みの議会は742自治体(全体の41.5%)にも及ぶ(朝日新聞2015年2月26日(2015統一地方選)議員の議案賛否、公開議会は52% 全国自治体議会アンケート)。
議会基本条例が自治体議会の標準装備となった今、次のステップは、オープンデータによる市民参加促進である。議会基本条例の制定にも勝るスピードで自治体のオープンデータへの取り組みが普及するなか、この流れに「拍車をかけるか?」「頭打ちにしてしまうか?」は、読者の皆さんのリーダーシップに委ねられているのではないだろうか。
次回のコラムでは、オープンデータを活用した選挙時におけるポスター貼りの効率化や、議会ホームページの「魅せかた」について、ご紹介したいと思う。コラムへの率直なご感想やご意見なども、引き続き、お待ちしております。
◇※1 パラダイムシフトとは、発想を転換すること。その時代や分野において、当然のことと考えられていた認識や思想、社会全体の価値観などが劇的に変化すること。
※2 ダイアローグとは、話し手と聞き手とが理解を深めながら、互いに共感や意識・行動の変化を引き出し、第三の案を見出す創造的なコミュニケーションの在りかたのこと。
※3 コーポレート・ガバナンスとは、組織や社会に関与するメンバーが、主体的に関わり意思決定や合意形成をする仕組みのこと。
◇ ◇
政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。
<千葉県流山市議会議員 松野豊>
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