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PTA不要論を翻す逆転の発想!くじ引き制から全員立候補に生まれかわるまで

政治山 / 2019年5月10日 12時10分

免除の儀式?

 先日、フジテレビの情報番組「とくダネ!」で、PTA役員を免れるために「免除の儀式」というのがあると放送があった。いわば吊るし上げのような儀式を保護者が行っているのである。免除の条件としては親の介護でもダメ、シングルマザーでもダメ、病気だというと診断書を持ってきてと言われる始末。

 それに対応するように、「PTAは任意だ」とか「退会できる」などの新聞記事も目につくようになった。PTA本部側の保護者も「そもそも強制的に私たちが入会させたのではないし、私たちだって立場としては素人のフツーの保護者だし」と、世論の攻撃の対象になり、嫌な気持ちに襲われている。PTA役員は選ぶ側も選ばれる側も保護者にとって憂鬱な時期であり、不要論まで飛び出している。

PTA

※写真はイメージです

 しかし、本来PTAは学校と保護者が一緒になって子どもたちを見守り、育む環境をつくっていくための組織のはず。自分の子どものためになることを嫌がる親はそんなにいないはずなのに、どうしてこういう状態になってしまったのか?

 きっと、年月が経つにつれて本来の目的にシンプルに協力するのではなく、組織維持のための行事が前例踏襲で続けられたり、学校サイドの面倒な仕事を押し付けるためだったり、予算不足を補うためのボランティア扱いだったりと、当初の小さなズレがいつの間にか大きな溝になり、こうなってしまったのだと思われる。

神戸市の中学校が行ったアンケート調査がPTA改革の入り口に

 そんな悪循環に陥っているPTAを、独自の方法で改革した中学校が神戸市にある。不要な仕事を保護者アンケートによってバッサリ削り、学校側では集めきれない、拾いきれない、埋もれてしまうような情報を、保護者が子どもから拾い集めて学校に伝達することで学校運営に大きく寄与し、同時に学校からそれらの情報に対する考えや対応を聞き、他の保護者や地域に発信する、という意義のある活動に変えていったのだ。

 例えば、「○○部顧問の指導は、一部の生徒からイジメに近いと思われているらしい」「○○部は、学校を出てから先生の知らない別のミーティングがあり、1年生が怖がっている」「あの店はタバコをバラ売りしていて、買いに来ている中学生を見た」等々、このような子どもを通じて親なら誰でも知っている情報を、意外に学校は知らないことが多い。

 また、逆のパターンとしては、「うちの学校はネット配信に力を入れている」「授業の内容を深めるためにタブレットが全教室に配備されている」「警報時の登校パターンを先生方が細かくシュミレーションしてくれているらしい」「子どもたちが自由に使える図書室の開室日を増やしてほしい」「通学地域が拡大し、通学時間が延びたのでボストン型バックは使いにくい」「運動部以外の生徒も通学時は寒いので防寒具がほしい」「エアコン暖房導入で、冬場の教室の乾燥がとても気になる」「みんなの学習クラブは素晴らしいが、自宅でもやりたい」「先生によって明らかに贔屓があると子どもたちは感じている。本当か?」「夏休みの宿題、親が手伝っているのにどう評価してますか?」「冬場の教室でのひざ掛けを許可してほしい」「肌色ストッキングは嫌がるから黒にしてほしい」等々。

役員全員が立候補!

 こうした無邪気かつ真剣な質問を出す保護者と胸襟を開いて話す校長先生のやりとりが楽しみで、パートの昼休みに抜けてくるPTA役員も現れ、PTAを毛嫌いしていた保護者が友だちに広めてくれるようになり、その集大成がくじ引きによる役員選出ではなく、全員が立候補という大転換になったのである。

 この改革事例のように、ほとんどの保護者が、学校という集団の中で、子どもたちがより充実した学校生活を確保するために、教員と保護者の代表が協議したり連携する場が必要なことは認識している。

 もし、学級役員の活動を大幅に削減して、その範囲でできる人が率先して役員になり、代表して学校と協議・連携してくれたら、入会拒否を考える保護者は激減するだろう。会費についても、できるだけ削減し、活動のための保険料など必要最小限にすれば、理解を得ることは可能なはずである。

 また、保護者は子どものことについて、当事者なのだから学校に意見を言って当然である。たとえ、それが個人的なことであろうと全体的なことであろうと、伝えていくことはとても大切。ただし、その手法やシステムに工夫が必要なだけである。

PTAのトリセツ

 学校は、子どもたちが社会で立派に役割を果たすことができるように、学力を含め、さまざまなスキルを学習する場であり、教員はその目的に沿って教育活動に勤しむべき。また、家庭は、そのために必要な基本的な価値観や体力・知力を身につける場であり、この役割分担は明確。

 そもそも、集団性を高めさせたい学校と個性を伸ばしたい家庭とが、互いに責任転嫁をして、教育活動がスムーズに運ぶはずもない。家庭の教育力をうまく活用できず、多くの諸課題が学校に降りかかる現状で、多忙だから丁寧な指導ができずにトラブルや不信をさらに生んでしまう悪循環に陥ることは不幸なこと。

 学校は保護者が役割を果たしてくれないからあきらめるのではなく、PTAを大胆に改革するなどして、現代風なやり方で、保護者が役割を果たしてくれるように工夫するべきだと思われる。その改革の奮闘記が現場の校長先生とPTA会長によってつぶさに書かれているのが書籍『PTAのトリセツ』。ぜひ、教育関係者、PTA経験者、候補者、行政マンにお読みいただきたい一冊である。

樫野孝人

神戸志民党 党首 樫野孝人
(株)リクルートで人事、福岡ドームでイベントプロデュース、2000年に(株)アイ・エム・ジェイ代表取締役社長に就任し、ジャスダック上場。2013年神戸市長選挙に立候補。156214票獲得するも5675票差で惜敗。著書に「無所属新人」「地域再生7つの視点」「おしい!広島県~広島県庁の戦略的広報とは何か?~」「人口減少時代の都市ビジョン」など。

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