マニフェストスイッチは押されるのか?
政治山 / 2015年3月10日 11時5分
早稲田大学において2月4日、マニフェスト運動を主導してきた北川正恭教授の最終講義と統一地方選挙向けのイベント「政策のチカラが選挙を変える~マニフェストスイッチプロジェクト~」(主催:早稲田大学マニフェスト研究所)が行われた。このプロジェクトは、マニフェストの検証や比較を可能にするために、全国の候補者に対して、マニフェストの統一フォーマットの使用などを呼びかけるものとされている。
統一地方選挙向けのイベント「政策のチカラが選挙を変える~マニフェストスイッチプロジェクト~」の模様(2015年2月4日 早稲田大学 井深大記念ホール)写真提供:早稲田大学マニフェスト研究所
ローカル・マニフェストの広がり2003年、当時三重県知事であった北川氏が地方選挙におけるマニフェストとしての「ローカル・マニフェスト」の導入を提唱した。この時、神奈川県知事選において松沢成文候補がマニフェストを掲げて選挙戦を戦い、当選を勝ち取ったことで、ローカル・マニフェストが注目を集めた。その後、地方選挙においてもマニフェストを掲げる動きが全国に広まっていった。
2007年の統一地方選挙に際しては、公職選挙法が改正されて、首長選挙においてマニフェストをビラとして配布することが解禁されている。地方議会議員における選挙でのマニフェストの配布は認められていないが、候補者がWebサイト上にマニフェストを掲載するなど、マニフェストを掲げて選挙を戦うことが一般化していると言っていいだろう。
マニフェストの実効性という課題
国政選挙における政党のマニフェストは政権公約であり、選挙に勝利して政権を握ることができれば、その内容を実行に移すことができる。また、首長選挙において掲げられるマニフェストも、その候補者が当選すれば、その内容が実行に移されることになる。
これに対して、議員になろうとする者が掲げるマニフェストの位置付けは微妙なものであるとされている。というのも、日本の地方自治では二元代表制が採用されており、首長と議会を構成する議員が別々の選挙によって選ばれており、首長と議会の意向が必ずしも一致しないことがあるからだ。また、議会において多数を握らなければ、議会としての意思も示すことができないため、議員個人のマニフェストを実行に移していくことが難しいということも指摘されている。
会派としてのマニフェスト
地方議会の選挙において、マニフェストの実効性を確保するための取り組みとして、会派によるマニフェストの作成という動きがある。
2月4日のイベントでも、自由民主党横浜市支部連合(第9回マニフェスト大賞グランプリ受賞)と民主党京都府総支部連合会(第9回マニフェスト大賞優秀賞受賞)の関係者が取り組みの紹介を行っている。議員個人だけではなく、政策を共有する集団である会派としてのマニフェストを作り、そこに所属する候補者が選挙戦でも会派としてのマニフェストを掲げて戦うというのである。
この2つの事例のように、マニフェスト作成の主体の転換も起きているのであり、「マニフェストスイッチを押すこと」の1つとして、市民側の目覚めを促すということが挙げられるだろう。実際に、マニフェストスイッチプロジェクトのイベント時にも、市民側の取り組みを発表もあり、その後は選挙アイデアソンや選挙ハッカソンがプロジェクトの一環として実施されるなど、市民参加に焦点を当てた動きも既に見られるところである。
マニフェスト作成への市民参加
ここで、市民参加に焦点を当てた取り組みとして、注目したいものを1つ紹介したい。それは、大村市議会議員の村崎浩史氏の取り組みである。
次の選挙に向けて、村崎氏はマニフェスト作成自体に市民参加を取り入れたのである。具体的には、「あなたと共に作るマニフェスト!」と銘打ち、2月14日と15日の18時から深夜まで行われる彼の選挙事務所におけるマニフェスト作成作業を市民に公開し、参加や意見表明を求めたのである。村崎議員によると、当日の参加者が11人、メールなどを介した意見表明を入れると20人以上の参画があったそうである。
候補者1人ではなく、支援者などを集めてマニフェスト作成作業を行うということはどこでも行われているだろうと推測されるが、事前に日時と場所を公開して、誰でもいいからマニフェスト作成に参加してほしいと表明するのは稀有な例だろう。
このように、市民側も候補者のマニフェスト作成に参画するという新たな動きが全国に広まってほしいものである。
<東京大学大学院情報学環交流研究員 本田正美>
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