選挙権は未来を考えるきっかけ
政治山 / 2015年6月24日 16時11分
参議院本会議で17日、選挙権が得られる年齢が18歳以上に引き下げられる改正公職選挙法が可決・成立し、来夏の参議院選挙から施行される見通しです。「18歳選挙権」の実現は、女性参政権を認めて以来の大きな変革でありますが、これによりすぐに若者の低投票率が改善されるわけではありません。そこで、これまで若者の投票率向上や若年層への有権者教育に取り組んできた皆さんに、「18歳選挙権」の意義や課題などについて寄稿いただきました。今回は、若者と社会をつなぐ活動を続け、統一地方選の山梨県議選と甲府市議選では学生が主体となりキャンパス内期日前投票所の開設を実現した「Create Future山梨」のメンバー 陶守敬仁さんです。
◇ ◇
18歳選挙権を実現するための公職選挙法改正案の採決、全会一致の可決から、まだ日が浅い。
去る6月16日、僕の所属する「Create Future山梨」という学生団体は、甲府市内で18歳選挙権について考える機会を設けた。当団体は「若者と社会をつなげる」ことを目的に活動しており、大学内で新聞を囲んで昼食を食べたり、県立の図書館でイベントを打って、社会への関心を共有したりと精力的に活動している。
本イベントもそのような活動の一つで、選挙や政治について興味がなくとも、楽しく考えられるようにさまざまな工夫を凝らしたつもりである。
「18歳投票権を考える」の様子
さて、当団体所属の山梨学院大学法学部2年、小椋がプレゼンターを務めた当イベントだったが、さまざまな年齢や背景をもつ20人ほどが集まり、盛況のうちに終了することができた。ここに改めて感謝の意を表したいと思う。小椋が寝る間も惜しんで作ってくれた素晴らしいプレゼンは素直に面白く、また、イベントに集まってくれた方々の意見はその一つ一つが多様で、深みがあり、世の中の仕組みが変わることを僕に実感させた。
僕は山梨大学生命環境学部3年で、政治や選挙は全く専門でない。そのような学生でも、こうして社会に関心を持つことができているのは、ひとえにこの団体のおかげと言えるかもしれない。
CreateFuture山梨メンバー
社会参加を意識できるきっかけ
ここからは、このイベントを通して得ることができた僕自身の新たな価値観である。一般的な一学生の意見としてお読みいただければ幸いである。
はじめに、僕は、18歳以上が選挙権を持つことに賛成である。
18歳19歳が新たに選挙権を持つということは、単純にその年の子が社会参加を意識できるきっかけになり得ると思う。投票の「質」や、18歳19歳の政治的思考の成熟度を問われることがあるが、僕は概ね良しと考える。そうしたものが実際に存在していて、機能するなら、いまの20代の投票率はこんなに低くはない。
「あなたが18歳だったとき、投票に行こうと思いましたか?」という質問の無意味さよ。なにしろ一般性を欠く問いである。
「政治についてあまり知らない人が投票に行く怖さ」とも言われる。どこまで学べば「知る」なのだろう。自分の生きる社会である。はじめは興味本位だっていい。候補者に親戚がいるから、自分の生活に関わるから、など投票に行く理由はなんでもいい。そこに質は無い、と思うのだ。
「教育が充実してから行うべきだ」と言われることもある。たしかに、18歳19歳が投票できるようになる時代において、現行の教育制度には限界があるかもしれない。けれど、十分な教育制度とはなんだろう。投票に行くべきだと教え込むことだろうか、あるいは、選挙権獲得の歴史を教え、先人たちの築いてきた制度の重みを感じることだろうか。それは、違うと思う(もちろん、教育制度を社会の変化に柔軟に対応させることは教育の重要な使命である)。
「18歳投票権を考える」でのアイディア投票
これから社会を創っていく自分たちへの「投資」
たとえば、あなたはどんな気持ちで投票するだろうか。
いつかの朝日新聞の天声人語で、「『私』は『私たち』となって紐帯を結ぶ」とあった。投票はもちろん自分のためだ。そこに、自分と関わりのある誰かを想い、憂い、政治によって変わる社会を夢見ることも、あっていい。僕はこの引用をそんな意味だと解釈している。
社会は、常に僕「たち」のためにある。そこでは社会を築いてきた人々への想いも、これから社会を創っていく自分たちへの「投資」も、あっていい。投票は、どこまでも手段だろう。選挙権は、きっかけに過ぎないのだろう。だからこそ、今回の改正によって社会が良くなると本気で信じる人がいるなら、そのために「やれるだけやってみよう」「僕も信じてみよう」という、ただそれだけの理由で、僕は未来に「投資」をしてみたいと思ったんだ。
改めて、18歳19歳が選挙権を手にすることは賛成である。僕の知る幾人かの18歳、19歳は、その権利を持て余し、見つめ直し、話し合い、20歳になるだろう。そのときの彼らの意見を待ってみるのも面白いんじゃないか。
「一票を投じる。政治が本来持っているはずの豊かさと潤いを取り戻すための一歩として」
先の天声人語の、末尾の言葉で締めくくろうと思う。
<学生団体CreateFuture山梨 陶守敬仁>
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