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個別的自衛権と集団的自衛権、なぜ解釈が異なるのか

政治山 / 2015年7月28日 18時0分

 16日、衆議院本会議にて安全保障関連法案(以下、安保法制)が可決され、議論の場は参議院へと移りました。この議論に出てくる国家の自衛に関する権利について、なぜこれほどまでに党派や有識者によって見解が異なるのでしょうか。日米関係や安全保障に詳しい早稲田大学招聘研究員の渡瀬裕哉氏に寄稿いただきました。

国家の自衛権は、国連憲章が明確に認めている

 現在、国会では新安保法制が議論されています。議論の中で新安保法制の合憲性を巡って個別的自衛権や集団的自衛権などの言葉を耳にすることでしょう。では、これらの個別的自衛権や集団的自衛権とはそもそもどのようなものなのでしょうか。

 国連憲章では、個別的自衛権と集団的自衛権は下記のように表現されており、個別的自衛権および集団的自衛権は国連加盟国に認められた権利として規定されています。

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Article 51
Nothing in the present Charter shall impair the inherent right of individual or collective self-defence if an armed attack occurs against a Member of the United Nations, until the Security Council has taken measures necessary to maintain international peace and security. Measures taken by Members in the exercise of this right of self-defence shall be immediately reported to the Security Council and shall not in any way affect the authority and responsibility of the Security Council under the present Charter to take at any time such action as it deems necessary in order to maintain or restore international peace and security.

第51条
この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。

*出典:United Nations , 国際連合広報センター
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 本来であれば、国連加盟国への違法な侵害行為があった場合は、安全保障理事会の議決によって国連加盟国による集団的安全保障によって解決されるべきですが、現実には常任理事国が拒否権を持つ状況や議決までに時間を要することから、個別的自衛権や集団的自衛権が明文化される形となっています。

日本国憲法が制限する「自衛権の行使」

 さて、個別的自衛権と集団的自衛権の簡単な分類を行うと、前者は「外国からの違法な侵害に対して、自国を防衛するために緊急の必要がある場合、それに武力をもって反撃する国際法上の権利」で、後者は「他の国家が武力攻撃を受けた場合、これと密接な関係にある国家が被攻撃国を援助し、共同してその防衛にあたる権利」を意味します。

 現在、国会で議論されている合憲性の問題は、国連憲章で認められている個別的自衛権と集団的自衛権について、日本国憲法下の我が国の政治体制の中で自衛権の範囲をどこまで容認するのか、ということです。

 日本国憲法では第9条に下記のように規定しています。

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1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
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 日本国憲法の規定は国連憲章が定めている自衛権の保持の内容について自ら制限しているものであり、日本は国連憲章上は自衛権を保持しているものの、自衛権を行使できる状況及び範囲については常に議論の対象となってきました。

 そのため、各政党の間で自衛権の範囲をどこまで認めるのか、ということについて意見の相違が存在しており、国会における新安保法制に対する賛否の違いとなって表現される形となっています。

 この際、法理上の問題と現実の防衛上の問題などが混在して語られており、国民には極めて分かりにくい議論となっています。与野党ともに審議を尽くし、このような状態を解消することが課題と言えるでしょう。

<早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員 渡瀬裕哉>

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