安保法制、自衛隊法の改正ポイント
政治山 / 2015年9月10日 15時30分
安保法制について法案別の改正ポイントを解説するシリーズ、今回は「自衛隊法」についてです。
■自衛隊法の概要
自衛隊法は、自衛隊の任務、組織・編成、行動・権限、隊員についての取り扱いを定める法律です。自衛隊法はPKO法やテロ特措法などに合わせて改正されてきた経緯があり、今回の安保法制においても幾つか重要な改正が行われています。
■改正法で何が変わるか?
自衛隊法の改正ポイントは、(1)在外邦人等の保護措置(2)米軍等の部隊の武器等の防護(3)平時における米軍に対する物品役務の提供の拡大(4)国外犯処罰規定(5)存立危機事態に対処する自衛隊の任務としての位置づけ、行動、権限等、についての5点になります。
■現行法と改正法のポイント
(1)在外邦人等の保護措置
従来の自衛隊法に規定された邦人の輸送に加えて、新たに加えられた条文になります。
具体的には自衛隊の部隊等が外国における緊急事態に際して、生命または身体の危害が加えられる恐れがある邦人を保護するというものです。邦人以外の外国人も一定の要件で保護することもできます。
これはアルジェリアで発生した邦人人質事件等の海外でテロ等に巻き込まれた邦人の救出活動のようなケースで自衛隊が武器使用を行うことを目的としています。保護を行う場所が外国当局が安全を確保した戦闘が行われていない地域であり、当該外国の同意の下に連携及び協力をして実行し、その際に、任務を遂行するために武器使用が必要な場合は、正当防衛や緊急避難の範囲で実施できるものとされています。
(2)米軍等の部隊の武器等の防護
従来までの自衛隊の武器等を防護するために限定的な武器使用に加えて、自衛隊が米軍等の部隊の武器等を防護するために武器を使用できるようにするものです。
防護の対象は米軍に限らずその他の外国の軍隊などでも可能であり、自衛隊と連携して我が国の防護に資する活動をしているものが範囲に含まれます。そのため、本条文の規定に従って米軍以外の豪州軍などの防護を行う可能性もあります。
(3)平時における米軍に対する物品役務の提供の拡大
米軍に対する自衛隊の協力範囲を拡大するものです。
警護出動として掲げる区域・施設での防護、海賊対処行動、弾道ミサイル破壊措置、機雷その他の爆発性の危険物除去、情報収集活動、米軍施設への滞在時の防護などが規定されています。提供の対象となる物品には、弾薬が含まれます。
日本と米国の幅広い防衛協力を進めていくことを前提にした場合、必要不可欠な協力関係の拡大を進めることになります。
(4)国外犯処罰規定の整備
従来までの防衛出動命令を受けた者に限られた罰則規定を、国外においても適用するよう範囲を拡大するものです。
具体的には、上官の職務上の命令に対する多数共同しての犯行および部隊の不法指揮、防衛出動命令を受けた者による上官命令反抗・不服従等などが規定されています。
(5)存立危機事態に対処する自衛隊の任務としての位置づけ、行動、権限等
存立危機事態との関連による自衛隊法改正のポイントとして、従来までの自衛隊法における任務に関する定義を変更することにあります。具体的には、自衛隊法の一部を改正し、存立危機事態への自衛隊による対処を主たる任務に位置付けています。
既存の自衛隊法第3条に自衛隊の任務に関する定義として、自衛隊は、直接侵略および間接侵略に対し、我が国を防衛すことを主たる任務としてきました。そして、防衛出動時の武力行使は、我が国に対する武力行使が発生するか明白な危険がある場合に限定されてきました。
今回、防衛出動に関する自衛隊法76条の項目に「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」に、第88条の防衛出動に関する武力行使が追加されることととなり、それらの変更に合わせて3条から「直接侵略及び間接侵略に対し」という言葉が削除されています。
この他にも自衛隊法に関連する景観法などの関連法規に関しては、武力攻撃事態にのみ適用されるものと存立危機事態に適用されるものについて区分けされた上で、各法律の適用除外などの規定が整理されています。
<早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員 渡瀬裕哉>
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