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税制を決めるのは政府か党か―配偶者控除見直しで主導権争いも

政治山 / 2016年9月26日 11時50分

 自民党政調会長の茂木敏充氏が9月14日、配偶者控除を見直して夫婦控除に移行すべきと明言したところ、麻生太郎財務相が2日後に「茂木さんは税調(税制調査会)会長になったのかなと思った」と皮肉を述べました。自民党税調は党政務調査会(政調)の下部組織ですが、「越権行為」と映ったようです。なぜでしょうか。

絶大な影響力を誇っていた税調のインナー

 自民党の税調は結党4年後の1959年に設置。当時は単なる調査会の一つで、税制は有識者で構成する政府税調が主導していました。しかし1970年代から「国民の痛みが伴う税制改正には、選挙で選ばれた国会議員が主導すべし」との考え方から党税調の影響力が強まっていきます。

 自民党税調は議員の誰もが参加できる総会と、役員が集まる役員会、役員のうち幹部のみが集まる幹部会(いわゆるインナー)の三層構造になっています。総会や役員会で話し合われたことも最終的にはインナーと呼ばれる税制に精通した5人前後の長老議員が財務省主税局との調整の上で決定してきたため、税調は聖域として総裁や自民党三役すら口出ししにくい存在となりました。

首相さえも頭が上がらなかった「税調のドン」

 とりわけ、「税調のドン」と呼ばれた山中貞則氏(1921-2004年)が会長をしていた時代には、首相も頭が上がらないほど実権を握っていました。中曽根政権時代には、消費税導入を目指す政府側に対し、「政府税調は軽視しない。無視する」と言い放ち、首相をやきもきさせました。

 一方、政府税調は内閣総理大臣の諮問機関として内閣府に設置されており、ここで大枠の方針を決め、税率など具体的な数字は、自民党税調が決定してきました。党税調が次年度の税制改正大綱を策定し、政府税調はそれを翌日、追認する形で決定してきました。「党高政低」ともいわれ、主軸はあくまで党税調であり、政府税調の事務局である財務省(地方税については総務省)がその意向に沿って調整する仕組みになっていました。

配偶者控除についての議論を始めた政府税制調査会
配偶者控除についての議論を始めた政府税制調査会
(9月15日、内閣府ホームページ動画より)

軽減税率の導入で示された「政高党低」

 ところが、官邸主導の安倍政権では税制に限らず、政策全般が「政高党低」といわれ、党税調の威光がなくなりました。かつての長老議員が引退や死去によりいなくなり、インナーの発言力が落ちる一方、国政選挙での連勝がパワーバランス変化の淵源となっています。2015年末、消費増税に伴う軽減税率導入に関して否定的だった党税調に対し、公明党との関係を重視する官邸が主導して対象品目等を決定したことは、象徴的な出来事でした。

 配偶者控除見直しに関して、麻生氏は「奥さんの家庭での労働の価値をどう評価するか。うかつな議論は危ないなという感じがする」とし、「政府税調で話が始まったばかりで、これからいろいろな話がなされる」としています。これらの発言は、見直し論議が政権や党幹部主導で進むのを牽制したものと見られます。

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